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第2章. 反乱の野心
19. ただの新兵サトゥール
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サトゥールは飛び出して、レイピアの刃に熱気を纏わせて切りかかってきた。ただ、力も魔力も強くない。
小隊長も剣を両手で構えて踏み込んできた。
「終わらせてやる、死ね!」
そんな大振りの剣、当たりはしないが。
「そのバカみたいに真っ直ぐな忠義には、敬意を表するよ」
レクロマが左手を横に振るうと、2人の刃に氷が現れた。
「うぉっ、刃が、凍──」
「じゃあな、勝手に帰ってくれ」
レクロマが左手で拳槌で小隊長のうなじを思い切り叩くと、不自然な呼吸をしてその場に倒れた。
「がっ……がはっ……ゔ……ぁ……」
小隊長の口からは血があふれている。
「小隊長っ!」
サトゥールは刃が凍ったままのレイピアで殴りかかってきた。何もかも捨てたような、ただ感情をぶつけただけの攻撃だ。
これくらいの敵なら素手でもいいな。
レクロマはサトゥールのレイピアの凍った刃を左手で掴み、無理な方向に捻った。サトゥールは抵抗しようとしたが、レイピアは冷却によって脆化しており、刃は簡単に折れてしまう。それでもサトゥールはレイピアを振り回してくる。
「貴様……殺してやる……殺してやる……」
強くはないが、早く終わらせないと面倒だ。殺すか。いや、復讐以外で殺人なんてしたくない。
「一瞬我慢しろよ」
「何っ……!?」
レクロマはシアを軽く振って刃に炎を纏わせた。サトゥールのレイピアをシアで受け、刃を腕で回転させて払う。そして空いた左腕を切り払う。すると、サトゥールの左腕は力なく垂れ下がった。
「ぐあぁ……ぁぁ……」
「このまま死ぬことはないだろうが、さっさと帰って治療を受けてくれ」
「必ず……必ずお前を殺してやるからな、イレギュラー」
サトゥールは血の涙でも流しそうな目でレクロマを睨み、そのまま小隊長を引きずって少し離れたところの木に向かった。木に繋げてあった馬に隊長を乗せ、サトゥールも乗って帰っていった。
「これで終わりか……」
レクロマが膝立ちになってシアを手放すと、シアは人間の姿に戻ってレクロマを抱きしめた。
「お疲れ、レクロマ」
シアはレクロマを背負って反乱軍の人達の方に向かった。
「誰も殺さずに済んだね」
「なるべくなら、殺しはしたくない」
「そう思うなら、私は手伝うよ」
「ありがとう」
反乱軍の5人がレクロマたちの方に向かってきた。
「ありがとう、助かったわ。私たちはセルナスト王の悪政に反旗を翻す者、カミツレ。私はリーダーのレティア・フレスタ」
堂々とした態度の若い女性は軽くお辞儀をして細身の片手剣を腰の鞘に収めた。金色のポニーテールにオレンジ色の眼を持つ美しい女性だった。
「私はアリジス・テーニャ、レティア様の副官です」
アリジスは茶色の短髪に灰色の眼を持つ男。細いながらも筋肉はむきむきだ。
「俺はレクロマ、この子はシア。シアは本当は剣なんだけどね」
レティアの顔には疑問の色が見えた。
「……? それよりもあなた、背負われてるけど、もしかしてさっきの戦闘で怪我でもしたの? 大丈夫?」
レティアは急に近づいてきてレクロマの左手を両手で取った。シアはなんだか嫌そうな顔をして後ろに下がった。
「俺は怪我はしてないよ。でも、体は動かないんだ。だけど、シアが剣になってくれるおかげで動けるようになった。俺はシアと共にセルナスト王を殺しに行くんだよ」
小隊長も剣を両手で構えて踏み込んできた。
「終わらせてやる、死ね!」
そんな大振りの剣、当たりはしないが。
「そのバカみたいに真っ直ぐな忠義には、敬意を表するよ」
レクロマが左手を横に振るうと、2人の刃に氷が現れた。
「うぉっ、刃が、凍──」
「じゃあな、勝手に帰ってくれ」
レクロマが左手で拳槌で小隊長のうなじを思い切り叩くと、不自然な呼吸をしてその場に倒れた。
「がっ……がはっ……ゔ……ぁ……」
小隊長の口からは血があふれている。
「小隊長っ!」
サトゥールは刃が凍ったままのレイピアで殴りかかってきた。何もかも捨てたような、ただ感情をぶつけただけの攻撃だ。
これくらいの敵なら素手でもいいな。
レクロマはサトゥールのレイピアの凍った刃を左手で掴み、無理な方向に捻った。サトゥールは抵抗しようとしたが、レイピアは冷却によって脆化しており、刃は簡単に折れてしまう。それでもサトゥールはレイピアを振り回してくる。
「貴様……殺してやる……殺してやる……」
強くはないが、早く終わらせないと面倒だ。殺すか。いや、復讐以外で殺人なんてしたくない。
「一瞬我慢しろよ」
「何っ……!?」
レクロマはシアを軽く振って刃に炎を纏わせた。サトゥールのレイピアをシアで受け、刃を腕で回転させて払う。そして空いた左腕を切り払う。すると、サトゥールの左腕は力なく垂れ下がった。
「ぐあぁ……ぁぁ……」
「このまま死ぬことはないだろうが、さっさと帰って治療を受けてくれ」
「必ず……必ずお前を殺してやるからな、イレギュラー」
サトゥールは血の涙でも流しそうな目でレクロマを睨み、そのまま小隊長を引きずって少し離れたところの木に向かった。木に繋げてあった馬に隊長を乗せ、サトゥールも乗って帰っていった。
「これで終わりか……」
レクロマが膝立ちになってシアを手放すと、シアは人間の姿に戻ってレクロマを抱きしめた。
「お疲れ、レクロマ」
シアはレクロマを背負って反乱軍の人達の方に向かった。
「誰も殺さずに済んだね」
「なるべくなら、殺しはしたくない」
「そう思うなら、私は手伝うよ」
「ありがとう」
反乱軍の5人がレクロマたちの方に向かってきた。
「ありがとう、助かったわ。私たちはセルナスト王の悪政に反旗を翻す者、カミツレ。私はリーダーのレティア・フレスタ」
堂々とした態度の若い女性は軽くお辞儀をして細身の片手剣を腰の鞘に収めた。金色のポニーテールにオレンジ色の眼を持つ美しい女性だった。
「私はアリジス・テーニャ、レティア様の副官です」
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「俺はレクロマ、この子はシア。シアは本当は剣なんだけどね」
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「……? それよりもあなた、背負われてるけど、もしかしてさっきの戦闘で怪我でもしたの? 大丈夫?」
レティアは急に近づいてきてレクロマの左手を両手で取った。シアはなんだか嫌そうな顔をして後ろに下がった。
「俺は怪我はしてないよ。でも、体は動かないんだ。だけど、シアが剣になってくれるおかげで動けるようになった。俺はシアと共にセルナスト王を殺しに行くんだよ」
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