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第1章. 動き始める時
15. 浮気のつもりじゃ……
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すると、村の村長がおもむろにやって来た。
「シアちゃん、レッくん。君たちのおかげでこの村に死者はいない。この村を代表してお礼を言いたい、本当にありがとう」
村長は服の内側から小さな包みを取り出した。村長が包みを開くと、たくさんの金貨が現れた。
「これ、少ないけどこの村の感謝の気持ちです。どうぞ受け取ってください」
「いや、俺たちは住ませてもらったお礼に倒して来ただけなので受け取れませんよ」
「お願いします、受け取ってください。命をかけてくれた恩人に恩返しの一つもできないなんて恥ですから」
「わかりました。ありがとうございます」
シアは村長に差し出された包みを遠慮がちに受け取り、魔法の異空間の中に置いておいた。そして頭を下げてからレディンさんたちの家に向かった。
「シア、鍛冶屋に寄りたいんだけど良いかな」
「良いけど、どういうこと? 浮気?」
「違うよ。そういうことじゃなくって……」
シアにとって鍛冶屋に行くってそういう感覚なのか。
「鍛冶屋はあっちだよ」
セリオは背中に張り付いたまま、鍛冶屋への道を案内する。
「いらっしゃい、英雄」
鍛冶屋の主人は剣の手入れをしていた手を止め、顔を向けてきた。
「やめてくださいよ。それより、アルド・ベリオールの鱗で武器って作れますか?」
シアは嫌そうな顔をしながらも、渋々アルド・ベリオールの鱗と村長にもらった金貨の包みを差し出した。
「俺の腕を舐めてもらっちゃ困るな。そんなこと、簡単だよ。どんな武器が良いんだ?」
「持ち運びがしやすくて、魔法が使いやすそうな武器をお願いします」
鍛冶屋はレクロマとシアをじっと見て、にやりと笑った。
「ふぅん……なるほどな。任せとけ。二日あれば完成するからそれ以降に来てくれ。びっくりするやつ作ってやるからな。楽しみにしとけよ」
「お願いします」
シアはそのままレディンさんの家までセリオを背負ったまま帰った。シアはずっと不機嫌そうにしていた。
====================
「おかえり、シアちゃん、レッくん」
「ただいま、エレナさん」
軽くエレナさんへの挨拶をすまし、シアは部屋に入ってベッドにレクロマを置くなりいきなり捲し立てた。
「ちょっと、どういうこと? 何で武器を注文してるの? 二刀流にするつもりなの?」
「いや、二刀流にするわけじゃないよ……」
「じゃあ何、私で十分でしょ。あなたにとってはただの武器の新調なのかもしれない。でも、私にとっては違う。私に何が足りなかったの? 子供扱いしたから? キスさせなかったから?」
「そういうことじゃないよ。シアが大切だからこそだよ」
「はぁ? 何それ。私がレクロマに釣り合わないってこういうこと? 私もついて行くって言ったのに」
「ごめん……」
「ごめんで済むことじゃないでしょ! この3年間一緒に頑張ったのは何だったの。私の力を使ってこれから戦うって話してたでしょ」
まさかこんなに怒るなんて……。いつもは優しく俺を包み込んでくれていたシアが……
「ごめんね、ちょっと頭冷やしてくる」
シアは大きくため息をしながらも、怒りは全く収まる気配はない。
「待ってよ、シア」
シアは俺の声に耳を傾けることもなく、足早に部屋を出た。しばらくすると、窓の外からシアの咽び泣く声が漏れてくる。
「んぐっ……ずっと私だけが背負って移動して、私だけがレクロマの剣になる。私だけ特別なんだって思って嬉しかった。初めて、ずっと一緒にいたいって思った人間なのに。ようやく唯一の居場所が見つかったと思ったのに。私を巻き込まないようにするために私のことを嫌いだって言ってると思ってた、でも本当に大嫌いだったなんて。私のこんな色、見たくなかった。レクロマと会う前はずっと1人だったのに、もうこれからどうしていけばいいのかわからない。嫌だよ……嫌だ……離れたくない。あぁぁぁ……レクロマ……」
くそっ……。いつも俺を慰めてくれて、俺の道筋を示してくれるシアを悲しませたくなんてなかった。サプライズにしたかったけどしょうがない。
「シアちゃん、レッくん。君たちのおかげでこの村に死者はいない。この村を代表してお礼を言いたい、本当にありがとう」
村長は服の内側から小さな包みを取り出した。村長が包みを開くと、たくさんの金貨が現れた。
「これ、少ないけどこの村の感謝の気持ちです。どうぞ受け取ってください」
「いや、俺たちは住ませてもらったお礼に倒して来ただけなので受け取れませんよ」
「お願いします、受け取ってください。命をかけてくれた恩人に恩返しの一つもできないなんて恥ですから」
「わかりました。ありがとうございます」
シアは村長に差し出された包みを遠慮がちに受け取り、魔法の異空間の中に置いておいた。そして頭を下げてからレディンさんたちの家に向かった。
「シア、鍛冶屋に寄りたいんだけど良いかな」
「良いけど、どういうこと? 浮気?」
「違うよ。そういうことじゃなくって……」
シアにとって鍛冶屋に行くってそういう感覚なのか。
「鍛冶屋はあっちだよ」
セリオは背中に張り付いたまま、鍛冶屋への道を案内する。
「いらっしゃい、英雄」
鍛冶屋の主人は剣の手入れをしていた手を止め、顔を向けてきた。
「やめてくださいよ。それより、アルド・ベリオールの鱗で武器って作れますか?」
シアは嫌そうな顔をしながらも、渋々アルド・ベリオールの鱗と村長にもらった金貨の包みを差し出した。
「俺の腕を舐めてもらっちゃ困るな。そんなこと、簡単だよ。どんな武器が良いんだ?」
「持ち運びがしやすくて、魔法が使いやすそうな武器をお願いします」
鍛冶屋はレクロマとシアをじっと見て、にやりと笑った。
「ふぅん……なるほどな。任せとけ。二日あれば完成するからそれ以降に来てくれ。びっくりするやつ作ってやるからな。楽しみにしとけよ」
「お願いします」
シアはそのままレディンさんの家までセリオを背負ったまま帰った。シアはずっと不機嫌そうにしていた。
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「おかえり、シアちゃん、レッくん」
「ただいま、エレナさん」
軽くエレナさんへの挨拶をすまし、シアは部屋に入ってベッドにレクロマを置くなりいきなり捲し立てた。
「ちょっと、どういうこと? 何で武器を注文してるの? 二刀流にするつもりなの?」
「いや、二刀流にするわけじゃないよ……」
「じゃあ何、私で十分でしょ。あなたにとってはただの武器の新調なのかもしれない。でも、私にとっては違う。私に何が足りなかったの? 子供扱いしたから? キスさせなかったから?」
「そういうことじゃないよ。シアが大切だからこそだよ」
「はぁ? 何それ。私がレクロマに釣り合わないってこういうこと? 私もついて行くって言ったのに」
「ごめん……」
「ごめんで済むことじゃないでしょ! この3年間一緒に頑張ったのは何だったの。私の力を使ってこれから戦うって話してたでしょ」
まさかこんなに怒るなんて……。いつもは優しく俺を包み込んでくれていたシアが……
「ごめんね、ちょっと頭冷やしてくる」
シアは大きくため息をしながらも、怒りは全く収まる気配はない。
「待ってよ、シア」
シアは俺の声に耳を傾けることもなく、足早に部屋を出た。しばらくすると、窓の外からシアの咽び泣く声が漏れてくる。
「んぐっ……ずっと私だけが背負って移動して、私だけがレクロマの剣になる。私だけ特別なんだって思って嬉しかった。初めて、ずっと一緒にいたいって思った人間なのに。ようやく唯一の居場所が見つかったと思ったのに。私を巻き込まないようにするために私のことを嫌いだって言ってると思ってた、でも本当に大嫌いだったなんて。私のこんな色、見たくなかった。レクロマと会う前はずっと1人だったのに、もうこれからどうしていけばいいのかわからない。嫌だよ……嫌だ……離れたくない。あぁぁぁ……レクロマ……」
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