14 / 46
第1章. 動き始める時
14. 停滞か後退か前進か
しおりを挟む
「レクロマ、起きて」
シアが不安そうに木の幹に寄りかかった俺をゆすって起こす。もう辺りは明るくなっていた。
「おはよう、シア」
「大丈夫? かなりうなされてるみたいだったけど。それに不安や苦しみの緑色の感情が見えたよ」
シアはレクロマの頭を柔らかく撫でる。
「シア、頭を撫でるのやめて」
シアは急いで手を引いた。行き場を失った右手は、腰の後ろに逃げていった。
「あっ、ごめんね。嫌だったか……」
「俺は幸せになっちゃいけないんだ。早く、みんなの仇を取らないと」
「どうしたの、何かおかしいよ。夢で何か見たの?」
「みんなが……復讐を怠けてる俺を叱責してくれたんだよ」
「それでも、幸せになっちゃいけないなんてあるわけないでしょ。復讐だってする必要なんて無い。私はビレン村で永遠にあのまま幸せに過ごすのだって良いと思ってる」
「それじゃだめだよ。俺だけが生き延びたんだから……俺がやらなきゃいけないんだ」
「落ち着いて、今は混乱してるだけ。焦る必要は無いよ。ゆっくり進めば良いじゃない。その苦しみは私も一緒に背負うから」
「シア! もう俺に関わらないでよ……シアには関係ないことだから」
「もうあなたについて行くって決めたの。あなたが全てを成し遂げるまで、私はあなたについて行く」
なんでシアはそんなに俺に優しくしてくれるんだ……
レクロマは息を大きく吸い込み、息と感情を整えようとする。
「……言いたくなかったけど、俺はシアが大嫌いなんだよ。だから、これ以上関わらないでよ。嫌い……嫌い……大……嫌い……だから……」
泣くな。泣くな、俺……
「嘘つけ、そんな苦しそうな顔で言われても説得力無いよ」
「感情を見たわけじゃないの?」
「見なくたってわかるよ。レクロマは分かりやす過ぎるね、泣き虫坊や」
シアは俺を正面から抱きしめた。
「俺の責任だから……シアを巻き込みたくないよ……」
「もう巻き込まれてるよ。第一、1人じゃ移動すらまともにできないでしょ。あなたが幸せを受け入れなくても、私が幸せにあげるから」
「何で、そこまでしてくれるの。シアには関係ないことなのに」
「私は、自分自身の幸せのために常に行動してるだけ。決してあなたのためじゃない。思い上がるなよ」
シアはふんっと鼻を鳴らしてから顔を綻ばせて笑いかける。
「ありがとう、シア。こんなんじゃ俺、やっぱりシアには釣り合わないや。贅沢が似合う男にはなれない」
「頑張ってみてから言いな」
シアは立ち上がって伸びをした。
「それじゃあ、帰ろうか。みんなも心配してるだろうし」
「……そうだね。それに、そろそろビレン村は離れて宮殿に向かいたい。シアが手伝ってくれるなら、十分に戦えるはずだから」
「そんなに焦らなくたって……」
「だめだよ。俺は今すぐにでもみんなの仇を取らないといけないから」
「……」
シアは少し悲しそうな顔をして、俺を背負った。
====================
ビレン村に着くと、レディンさんが駆け寄って来た。レディンさんは涙で顔をぐちゃぐちゃにして、俺たちに抱きついて来た。
「良かった。殺されちゃったんじゃないかって、君たちに行かせたことをずっと後悔してた」
「大丈夫ですよ。それにちゃんと倒して来ました」
シアは腰に括り付けたアルド・ベリオールの鱗が入った袋を見せた。
「あのアルド・ベリオールをか。さすがだな、ありがとう」
パン屋の扉を開けて、セリオが走って来るのが見えた。
「シアちゃーん、レッくーん」
セリオが俺の後ろ側に回り込んでくると同時に背中を強い衝撃が襲った。
セリオは俺の背中に張り付いて、よじ登って来た。
「村のみんなはね、シアちゃんとレッくんはアルド・ベリオールに殺されちゃったんだって言ってたけど僕は信じてたよ。だってレッくんもシアちゃんも強いから」
さすがにシアの脚もよろついている。
シアが不安そうに木の幹に寄りかかった俺をゆすって起こす。もう辺りは明るくなっていた。
「おはよう、シア」
「大丈夫? かなりうなされてるみたいだったけど。それに不安や苦しみの緑色の感情が見えたよ」
シアはレクロマの頭を柔らかく撫でる。
「シア、頭を撫でるのやめて」
シアは急いで手を引いた。行き場を失った右手は、腰の後ろに逃げていった。
「あっ、ごめんね。嫌だったか……」
「俺は幸せになっちゃいけないんだ。早く、みんなの仇を取らないと」
「どうしたの、何かおかしいよ。夢で何か見たの?」
「みんなが……復讐を怠けてる俺を叱責してくれたんだよ」
「それでも、幸せになっちゃいけないなんてあるわけないでしょ。復讐だってする必要なんて無い。私はビレン村で永遠にあのまま幸せに過ごすのだって良いと思ってる」
「それじゃだめだよ。俺だけが生き延びたんだから……俺がやらなきゃいけないんだ」
「落ち着いて、今は混乱してるだけ。焦る必要は無いよ。ゆっくり進めば良いじゃない。その苦しみは私も一緒に背負うから」
「シア! もう俺に関わらないでよ……シアには関係ないことだから」
「もうあなたについて行くって決めたの。あなたが全てを成し遂げるまで、私はあなたについて行く」
なんでシアはそんなに俺に優しくしてくれるんだ……
レクロマは息を大きく吸い込み、息と感情を整えようとする。
「……言いたくなかったけど、俺はシアが大嫌いなんだよ。だから、これ以上関わらないでよ。嫌い……嫌い……大……嫌い……だから……」
泣くな。泣くな、俺……
「嘘つけ、そんな苦しそうな顔で言われても説得力無いよ」
「感情を見たわけじゃないの?」
「見なくたってわかるよ。レクロマは分かりやす過ぎるね、泣き虫坊や」
シアは俺を正面から抱きしめた。
「俺の責任だから……シアを巻き込みたくないよ……」
「もう巻き込まれてるよ。第一、1人じゃ移動すらまともにできないでしょ。あなたが幸せを受け入れなくても、私が幸せにあげるから」
「何で、そこまでしてくれるの。シアには関係ないことなのに」
「私は、自分自身の幸せのために常に行動してるだけ。決してあなたのためじゃない。思い上がるなよ」
シアはふんっと鼻を鳴らしてから顔を綻ばせて笑いかける。
「ありがとう、シア。こんなんじゃ俺、やっぱりシアには釣り合わないや。贅沢が似合う男にはなれない」
「頑張ってみてから言いな」
シアは立ち上がって伸びをした。
「それじゃあ、帰ろうか。みんなも心配してるだろうし」
「……そうだね。それに、そろそろビレン村は離れて宮殿に向かいたい。シアが手伝ってくれるなら、十分に戦えるはずだから」
「そんなに焦らなくたって……」
「だめだよ。俺は今すぐにでもみんなの仇を取らないといけないから」
「……」
シアは少し悲しそうな顔をして、俺を背負った。
====================
ビレン村に着くと、レディンさんが駆け寄って来た。レディンさんは涙で顔をぐちゃぐちゃにして、俺たちに抱きついて来た。
「良かった。殺されちゃったんじゃないかって、君たちに行かせたことをずっと後悔してた」
「大丈夫ですよ。それにちゃんと倒して来ました」
シアは腰に括り付けたアルド・ベリオールの鱗が入った袋を見せた。
「あのアルド・ベリオールをか。さすがだな、ありがとう」
パン屋の扉を開けて、セリオが走って来るのが見えた。
「シアちゃーん、レッくーん」
セリオが俺の後ろ側に回り込んでくると同時に背中を強い衝撃が襲った。
セリオは俺の背中に張り付いて、よじ登って来た。
「村のみんなはね、シアちゃんとレッくんはアルド・ベリオールに殺されちゃったんだって言ってたけど僕は信じてたよ。だってレッくんもシアちゃんも強いから」
さすがにシアの脚もよろついている。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる