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第1章. 動き始める時
8. 家族のいる朝
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シアは俺を布団に寝かせて掛け布団をかけてくれた。シアも俺の隣に横になった。
「あのカビ臭い物置以外で横になることがあるなんて」
「……明日からは動く練習頑張ろうね」
「うん」
====================
それからしばらくの間、沈黙が流れた。
「シア……俺は今日シアに見つけてもらって良かった。会えてなかったら俺は何もできずに腐っていくだけだった。でも、シアのおかげで俺は動ける、人並みの幸せを見つけ直すことができる、復讐だってできる。俺だけでは何もできないかもしれないけど、俺に何かできることがあったら何でも言って。何をしてでもやってみせるから」
「私も今日は楽しかった。私は、ずっと一人だった。感情も意志もないただの剣だった時の記憶はあるけど、私の心が産まれてから三百年の間、誰も私と一緒に居てくれなかった。私はただの武器で、政治の道具だった。でも、あなたは私自身を頼ってくれて、一緒にいることを望んでくれる。それが嬉しいの」
俺の手の部分の掛け布団が膨らんでいる。シアが俺の手を握った、ようだ。
「俺は手も脚も感覚がないんだよ。だから、手を握られても感じ取れない」
「わかってる。だから手を握ってるんだよ」
「ずるい」
シアは俺の胸の中に顔を埋めて来た。
「人の温もりなんて初めてだよ。すごく安心する。生きてるってすごいね」
====================
朝の眩しい光が顔を照らして、俺は目を覚ました。
「おはよう、エレナさんが朝ごはんを用意してくれてるよ」
「おはよう、シア」
寝起きで目が開かないから、目を瞑ったまま答えた。
「ちょっと待っててね」
シアは走って部屋を出て行き、タオルを濡らして帰ってきた。
「顔、拭くよ」
「ありがとう」
シアは俺の顔を力強く拭っていく。
「身体も拭いちゃおうか、昨日拭いてなかったし」
シアは俺の上体を起こして服を脱がした。もうすでに裸を見られる恥ずかしさなんて消え失せている。
身体の感覚が鈍くなってるから気持ち悪さもタオルの冷たさも感じないけど、スッキリする。気持ちが良い。
「また嫌な夢を見たの?」
「うん……まただよ……でも、ただ何もできずにいた時とは違う。シアのおかげで復讐の目算が立てられる。これから頑張るから、手伝ってくれないかな」
「良いよ。私の時間は無限にあるんだから」
上半身を拭き終わってシアはズボンとパンツを脱がした。
「シアちゃん、レクロマくん、飲み物はコーヒーで良いかしら」
「おはようございます、エレナさん。ありがとうございます、コーヒーいただきます」
エレナさんはシアが裸の俺をタオルで拭いている様子を見て、少しの間固まっていた。
「朝から元気ねぇ、ごゆっくり」
「違いますよ。ただ体を拭いてもらってるだけですから」
流石にこの誤解は恥ずかしい。
「わかってます。そういうことにしておきましょう。服は旦那のお古をあげますよ」
「……ありがとうございます」
シアはその間も無言で体を拭き続けていた。
「パンツをはかせるから脚を上げるね」
「シアは恥ずかしくないの?」
「ただ身体を拭いてただけでしょ。恥ずかしいことなんてない。レクロマは濃いピンク色の恥の感情が見えてたけど」
「そっか……そうだよね」
「他人にどう思われようが関係ないでしょ。人と人は結局どこまで行っても他人なんだから。人の目ばっかり気にしてたら何もできない」
俺は服を着せられ、シアに背負われてリビングへ向かった。
====================
レディンさんとエレナさん、セリオと共に朝食にパンを食べた。メニューはクリームパンとコーヒーで、とても豪華な朝食だった。
「レクロマ、それじゃあ森に練習しに行こうか」
「うん、絶対にしっかり動けるようになるから」
「それならこれ持っていくと良いよ」
レディンさんは紙袋を差し出した。
「ミックスサンドとコーヒーだよ」
「ありがとうございます、レディンさん」
シアは紙袋を肩に掛けたかばんにしまい、俺を背負った。
「あのカビ臭い物置以外で横になることがあるなんて」
「……明日からは動く練習頑張ろうね」
「うん」
====================
それからしばらくの間、沈黙が流れた。
「シア……俺は今日シアに見つけてもらって良かった。会えてなかったら俺は何もできずに腐っていくだけだった。でも、シアのおかげで俺は動ける、人並みの幸せを見つけ直すことができる、復讐だってできる。俺だけでは何もできないかもしれないけど、俺に何かできることがあったら何でも言って。何をしてでもやってみせるから」
「私も今日は楽しかった。私は、ずっと一人だった。感情も意志もないただの剣だった時の記憶はあるけど、私の心が産まれてから三百年の間、誰も私と一緒に居てくれなかった。私はただの武器で、政治の道具だった。でも、あなたは私自身を頼ってくれて、一緒にいることを望んでくれる。それが嬉しいの」
俺の手の部分の掛け布団が膨らんでいる。シアが俺の手を握った、ようだ。
「俺は手も脚も感覚がないんだよ。だから、手を握られても感じ取れない」
「わかってる。だから手を握ってるんだよ」
「ずるい」
シアは俺の胸の中に顔を埋めて来た。
「人の温もりなんて初めてだよ。すごく安心する。生きてるってすごいね」
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朝の眩しい光が顔を照らして、俺は目を覚ました。
「おはよう、エレナさんが朝ごはんを用意してくれてるよ」
「おはよう、シア」
寝起きで目が開かないから、目を瞑ったまま答えた。
「ちょっと待っててね」
シアは走って部屋を出て行き、タオルを濡らして帰ってきた。
「顔、拭くよ」
「ありがとう」
シアは俺の顔を力強く拭っていく。
「身体も拭いちゃおうか、昨日拭いてなかったし」
シアは俺の上体を起こして服を脱がした。もうすでに裸を見られる恥ずかしさなんて消え失せている。
身体の感覚が鈍くなってるから気持ち悪さもタオルの冷たさも感じないけど、スッキリする。気持ちが良い。
「また嫌な夢を見たの?」
「うん……まただよ……でも、ただ何もできずにいた時とは違う。シアのおかげで復讐の目算が立てられる。これから頑張るから、手伝ってくれないかな」
「良いよ。私の時間は無限にあるんだから」
上半身を拭き終わってシアはズボンとパンツを脱がした。
「シアちゃん、レクロマくん、飲み物はコーヒーで良いかしら」
「おはようございます、エレナさん。ありがとうございます、コーヒーいただきます」
エレナさんはシアが裸の俺をタオルで拭いている様子を見て、少しの間固まっていた。
「朝から元気ねぇ、ごゆっくり」
「違いますよ。ただ体を拭いてもらってるだけですから」
流石にこの誤解は恥ずかしい。
「わかってます。そういうことにしておきましょう。服は旦那のお古をあげますよ」
「……ありがとうございます」
シアはその間も無言で体を拭き続けていた。
「パンツをはかせるから脚を上げるね」
「シアは恥ずかしくないの?」
「ただ身体を拭いてただけでしょ。恥ずかしいことなんてない。レクロマは濃いピンク色の恥の感情が見えてたけど」
「そっか……そうだよね」
「他人にどう思われようが関係ないでしょ。人と人は結局どこまで行っても他人なんだから。人の目ばっかり気にしてたら何もできない」
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「ミックスサンドとコーヒーだよ」
「ありがとうございます、レディンさん」
シアは紙袋を肩に掛けたかばんにしまい、俺を背負った。
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