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【6話】省けた手間
しおりを挟む街中へのお出かけ以降、キールと過ごす時間が大幅に増えた。
昼食は中庭のベンチで毎日一緒に食べるし、週休日になれば時々出かけたりする。
キールは優しくて、とても面白い。
彼と過ごす時間はものすごく楽しくて、あっという間に過ぎてしまう。
友達になれて、本当に良かったと思う。
そんな訳で、私の毎日は充実している。
あとは、あの問題さえ片付けば、もう言うこと無しだ。
私が気にかけているのは一つ。
それは、シャーリーとのことだ。
アマンダが退学処分になってからというもの、シャーリーは何もアクションを起こしてこない。
処罰を恐れるあまり、慎重になっているのかもしれない。
しかしいつまでも、今の状況が続くという保証はない。
彼女の性格を考えれば、このまま卒業までじっとしてるということはありえない。
どこかのタイミングで、何らかのアクションを起こしてくるのは確実。
衝突することは、避けて通れない道だろう。
それならいっそ、私から仕掛けるってのもアリかもしれないわね。面倒事はとっとと片付けたいし。
キールとのランチを終えた私は、そんなことを考えながら教室へと戻ってきた。
「あれ? なにこれ?」
机の中には、一通の封筒が入っていた。
封筒を取り出した私は、裏面に返す。
差出人は……シャーリー・サンフラワー!?
シャーリーを見てみれば、偉そうな顔で顎をクイっとしゃくってきた。
開けてみなさい、そう言わんばかりの挑発的な態度だ。
封筒の封を切る。
中に入っていたのは、決闘申込状――前世の世界で言うところの、果たし状だ。
この王国では、紛争を解決する手段として、決闘が認められている。
双方の当事者が合意することで、決闘は行われる。
今回の場合であれば、この決闘申込状に私がサインすれば、シャーリーとの決闘に合意したとみなされるのだ。
なるほど。今度は正攻法で、私を潰しに来たって訳か。
決闘は、王国が認めている正式な紛争解決の手段だ。
それによって相手に怪我を負わせても、罪に問われることはない。
つまりは、アマンダのように処分されることはないのだ。
それを見越して、シャーリーは決闘を申し込んできたのだろう。
……ふふ、手間が省けたわ。シャーリーに感謝しないとね。
ペンを手に持った私は、いっさい躊躇わずにスラスラとサインをしていく。
決闘の結果は絶対だ。
一切の例外なく、覆すことはできない。
これで、気がかりだったシャーリーの件が片付く。
そう思うと、ニヤニヤが止まらなかった。
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