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【39話】宣戦布告
しおりを挟む「あんた、どうしてここにいるのよ。参加しない、ってそう言ってたじゃない」
「そのつもりだったんだけどさ、ステラと出ることになったんだよ。いざ来てみれば意外と良いもんだな」
「私、そんなこと聞いてない! 嘘つき!!」
意味が分からない。
ダンスパーティーに参加しただけで、どうしてこうもキレられないといけないのか。
リリーナが意味不明なことを言ってくるのは、別に珍しいことではない。
普段だったら適当に流すか、適当に謝るかのどちらかだろう。
しかし、今回ばかりは理不尽すぎないだろうか。
パーティーに参加することを言わなかっただけで嘘つき呼ばわりするのは、流石に度が過ぎている。
だからリヒトも、ついつい頭に血が上ってしまった。
「なんでお前にいちいち報告しなきゃならないんだよ。そんな義務はないだろ」
「あるわよ!」
「は? いつからそうなったんだ。勝手に決めんな。お前は俺の保護者か」
「――リヒトさんの言う通りです。リリーナさん。いくらなんでも、それは横暴すぎますよ」
「あんたは無関係でしょ! 事情も知らない癖に、勝手に首を突っ込んでこないでよ!!」
リリーナの矛先が、話に割って入ってきたステラへと向いた。
怒りという感情によって、その矛先は恐ろしいまでに尖っている。
「確かに、細かい事情は分かりません。ですが今の話を聞いているだけで、リリーナさんがメチャクチャなことを言っているのが分かりました」
だがステラは、怯む様子をまったく見せなかった。
「リヒトさんは私にとって、とても大切でかけがえのない友人です。理不尽な目に遭っているのを見過ごすなんて、とてもできません」
「ごちゃごちゃうるさいわね! 私には文句を言う権利があるの!」
「いえ、そんなものはありませんよ」
ステラは顔色一つ変えずに、きっぱりと否定した。
「リリーナさんは以前、私にこう言いましたよね。『リヒトさんとはただのお友達同士』と。でしたら誰と参加しようと、リヒトさんの自由では? 付き合っている訳でもない、ただの友達にしか過ぎないリリーナさんが口出しする権利は、どこにもないはずです。私、間違ったことを言っていますか?」
「……そ、それは」
リリーナがたじろぐ。
恐ろしく尖っていた矛先は、しゅんと引っ込んでいた。
(……びっくりした)
いつも控えめでおどおどしているステラに、こんな一面があるとは思わなかった。
度が過ぎた理不尽に対しての怒りも、大きく驚いたことですっかり消えていた。
(って、驚いている場合じゃないだろ!)
リリーナとステラは、仲が良かったはずだ。
それなのに、なんだか険悪な雰囲気になってしまっている。
友達である二人に、こんな下らない内容で喧嘩して欲しくなかった。
リヒトが今すべきことといえば、二人の喧嘩を止めることだ。
「おい、お前ら――」
「行きましょう、リヒトさん」
リヒトの手を取ったステラは、そのまま足を動かし始めてしまう。
おい、と声をかけるが、ステラは止まる気配を見せない。
リリーナの横を通り抜けようと、足を動かしていく。
リリーナの横で、ステラは一瞬だけ立ち止まった。
「私、負けませんから」
リリーナにだけ聞こえる声で呟くと、首にかけているシルバーのネックレスを手に取ってみせた。
それは、リヒトにプレゼントして貰ったシルバーのネックレスだ。
「それって……!」
リリーナの驚きの声に、ステラは小さく微笑む。
これは宣戦布告。
ステラは戦うことを選んだ。
ライバルは全て打ち倒す。
その相手が例え、恩人であるリリーナだとしても、いっさい容赦するつもりはない。
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