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【23話】大進歩
しおりを挟む眩しい太陽の降り注ぐ緑の庭園を、リヒトとクロードは隣り合って歩いていく。
「ありがとうな」
クロードが改まってお礼を言ってきた。
いちいち律儀なヤツだ。
「礼を言うのは俺の方だ。急に誘ったのに、来てくれてありがとうな」
「いや、今日誘ってくれたこともそうだが、それだけじゃない。……リリーナのことだ」
どうしてそこでリリーナが出てくるのだろうか。
大きな疑問符が、リヒトの頭の中に浮かぶ。
「リリーナは良い方向に変わった。それも突然にな。彼女を変えたのはリヒトだろ?」
「……さあな」
図星を突かれたリヒトは動揺。
なんとか返事をしてみるも、うまくごまかせた自信はまったくもってなかった。
「リリーナが変わった理由を俺なりに色々と考えてみたのだが、それ以外には考えつかなかった」
その考えは大正解。
普段の察しは悪い癖に、こういうところだけは鋭いらしい。
ピタッ。
クロードがその場に立ち止まる。
「正直に言うと、今のリリーナはかなり魅力的だ。何と言うべきか……俺の好みが詰まっている」
「お前の気持ちはリリーナにかなり向いている――そういうことか?」
「ああ。その通りだ。恥ずかしいが認める。……告白する日も、そう遠くないかもしれないな」
(マジかよ! よしよしよし!!)
クロード本人からの言質をゲット。
リリーナの願い、そしてリヒトの願いが叶う日は、もう手の届く距離まで迫っている。
未来に起こる惨劇は、これで防いだも同然だ。
大きな達成感を、全身で感じるリヒト。
その表情には、いっぱいの喜びが溢れている。
「そういう反応をするのか」
喜びを爆発させているリヒトを、クロードは意外そうに眺めていた。
「もっと動揺するかと思った」
「なんでだ?」
「てっきりお前も、俺と同じような気持ちを抱いているかと……。リリーナに対して」
「……俺がリリーナのことを好き――と、そう思っているのか?」
「ああ。そう思ったからこそ、お前には話をしておきたかったんだ」
「…………お前は盛大な勘違いをしているよ」
どこをどうしたら、そういう意味不明な結論にたどり着くのだろうか。
流石は超天才。
凡人であるリヒトには、まったくもって思考が理解できない。
「いいか、ハッキリ言っておくぞ。リリーナは友達だが、それ以上でもそれ以下でもない。恋愛感情は微塵もない。お前とリリーナがくっつくのは大歓迎だ」
「そうか。……分かった」
そう言うも、いまいちクロードは納得していない様子だった。
納得してもらうため、リヒトはさらなる追撃をかける。
「だから告白でもなんでもして、とっとと結ばれてくれ」
「そう焦るな。こういうことは、慎重にいった方がいい。焦りすぎると失敗するものだ」
「その辺はお前に任せるよ」
今すぐにでも告白して欲しいというのが本音だが、急かし過ぎても変に思われてしまうだけだろう。
それにこういうことは、クロードが言うように焦りすぎると失敗する。
はやる気持ちを胸に押し込み、「頑張れよ」とクロードにエールを送った。
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