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【10話】飲食店巡りを終えて
しおりを挟む先日、ステラと飲食店巡りをしてきたリヒト。
厳正なる審査の結果、五つの候補の中から一つを選んだ。
リリーナとクロードの食事会の会場としてリヒトが選んだのは、軽食メニューの充実している、ゆったりとした雰囲気のカフェ。
『初デートのお店ですよね。軽い食べ物の方が、お話が弾んでいいのではないでしょうか』、そんなステラの意見が、選ぶ決め手となった。
目から鱗だった。
もしリヒトだけだったら、その意見は出てこなかっただろう。
ステラに協力を仰いだのは、本当に大正解だった。
「うまくいってくれよ……」
放課後の空き部屋で、リヒトは祈る。
『さっそく明日、クロードを誘ってみるわね!』
リリーナがそう言ったのは、昨日のこと。
その成否は、これからこの部屋に来るリリーナの口から直接聞くことになるだろう。
ドアが開く。
リリーナが部屋に入ってきた。
引き締まっている表情からは、いまいち感情が読み取れない。
(成功……いや、失敗か? どっちだ……?)
「食事会の件、クロードに話してみたわ」
「どうだった? うまくいったか?」
「……それがね」
がっくりと肩を落としたリリーナが、顔を下に向ける。
(ダメだったか……。イケると思ったのに)
気を落とすリヒトだったが、首を横に振る。
(一番辛い思いをしているのはリリーナだ。落ち込んでないで励ませよ!)
甘ったれた自分に喝。
「その……なんだ。あんまり落ち込まずに――」
「成功よ」
「…………え?」
「『行かせてもらう』って、そう言ってくれたのよ! 大成功よ!!」
グイっと顔を上げたリリーナ。
溢れんばかりの喜びが浮かんでいる。
「やったわ! やったわよリヒト!」
リヒトの両手をギュッと握ったリリーナは、ぶんぶんと上下に振った。
(分かりづらい反応しやがって)
などと思うが、口にはしない。
大喜びしているところに水を差すような真似はしたくない。
「おう、よかったな。それで、食事の日はいつだ?」
「明日よ!」
「ずいぶん急だけど、明日は休みだしちょうどいいかもな」
明日は学園の創立記念日。
終日休みとなっている。
「集合時間は午前十一時三十分よ。いい、絶対遅れずに来てね! 一秒でも遅刻したら殴り殺すから!」
「おう――いや、待て。……リリーナよ、それはどういう意味だ?」
「どういう意味もなにも、そのままの意味だけど。あんたも明日来るのよ」
「…………は?」
今回の食事会は、リリーナとクロードが二人きりで行くことになっている。
リリーナもそれは分かっているはずだ。
それなのに、同行しろ、と彼女は言う。
いったいどういうことだ。
「誘う直前、私、思ったの。一人じゃうまくいかないかもしれない、ってね。だからクロードを誘うとき、友達も連れていく、って言ったの」
どうやらリリーナは、誘う直前になって作戦変更したらしい。
いくらなんでも急すぎる。
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「……分かったよ」
しかし恋路を応援すると言った以上、どんなことにも対応するのが筋というものだろう。
それに、この展開は意外とアリかもしれない。
もしリリーナが重大なヘマをやらかしても、近くにいればすぐにフォローできる。
(でも、フォロー要員が俺だけってのも不安だな。……よし、あいつに助太刀を頼むか)
「一人連れていきたいやつがいるんだが、いいか?」
「別に構わないけど、誰よ?」
「そいつは――」
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