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【34話】呪縛からの解放
しおりを挟むヒノキノボウルグを握る手にグッと力を入れたユウリは、勇者の元へ飛び込んでいく。
ヒノキノボウルグを振るい、嵐のような連撃を繰り出す。
目にも止まらね速さの連撃を、勇者はすべて剣で受け切っていた。
驚異的な守りの堅さだ。隙がまったくない。
「グゥゥ……」
ピタリ。
勇者の動きが止まった。
(攻撃魔法が来るな)
一瞬だけ動きが止まったあと、手のひらをバッと広げた勇者。
先ほどと同じ、巨大な火の球を放ってきた。
横に跳び、それを避けるユウリ。
来ると分かっていれば、こちらのもの。避けるのはそれほど難しくはない。
「思った通りだ」
ユウリの口元がニヤっと上がる。
ユウリの読みは正しかった。
これで狂化の髪飾りを破壊する条件は、すべてクリアだ。
「待ってろ。もうすぐ解放してやるからな」
勇者に向けて、ユウリは再びヒノキノボウルグを振るう。
攻めるユウリ。防御する勇者。
先ほどと同じ攻防が繰り広げられる。
しばらくそれが続いた後、勇者の動きが止まった。
剣術から攻撃魔法に移行する直前、勇者はほんの一瞬だけ動きを止める。
勇者が見せる唯一の隙だ。
ユウリは、この瞬間を待っていた。
そのわずかな隙に、攻撃を叩き込む。
それこそが、ユウリの閃いた勇者の倒し方だった。
しかしユウリの目的は、勇者を倒すことではない。
諸悪の根源である、狂化の髪飾りを破壊することだ。
「くらえええええ!!」
狂化の髪飾りへ、ヒノキノボウルグを叩き込む。
「クソっ、かってえ!」
狂化の髪飾りの耐久力はすさまじかった。
強い力をこめてヒノキノボウルグで叩くも、壊れない。
予想していたよりもずっと頑丈だ。
しかし、ここで諦める訳にはいかない。
狂化の髪飾りとかち合っているヒノキノボウルグに、ありったけの力を込める。
「うおおおお!」
ピシッ、ピシッ。
ヒノキノボウルグにヒビが入る。
それと同時。
狂化の髪飾りが真っ二つに割れた。
割れた狂化の髪飾りは、銀色から黒へと変色。
最後は、砂のようになって崩れた。
「よし!」
ヒノキノボウルグのヒビと引き換えに、狂化の髪飾りを破壊することができた。
ユウリはガッツポーズを決める。
狂化の髪飾りを失った勇者は、糸が切れたようにして地面に倒れてしまった。
気を失っている。
勇者が体に纏っていたどす黒い光は消えていた。
狂化の髪飾りを破壊したことで、体が元に戻ったのだろう。
「俺のやるべきことは終わりだな」
勇者の対処は無事に成功した。
目的達成だ。
気を失った勇者を抱え、ユウリは最前線を離れた。
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