30 / 44
【30話】国王からお礼とお願い
しおりを挟むレドリオ王国からファイロルに戻ってきて、二週間が経った頃。
ユウリの元へ、召集令状が届いた。
今度の差出人はシャルロットではない。
ディアボル王国の国王からだった。
娘であるシャルロットを救ってくれた礼を、どうしても直接言いたいのだそうだ。
別にお礼なんていらないのだが、国王からの召集を無視する訳にはなかない。
無視をすれば例によって、厳しい処罰が下されてしまう。
そんな訳で、ユウリ、リエラ、フィアの三人は、王都へ向かうのだった。
******
馬車を走らせて二日後。
ユウリ一行は、王都にある王宮へ着いた。
「ここが王宮か……でかいな」
金色の宮殿が、どどんとそびえ立っている。
シャルロットが暮らしている離宮も大きかったが、それよりもずっと大きくて立派だ。
馬車を降りると、執事服を着た男性が出迎えに来てくれた。
「謁見の間にて、国王様、シャルロット様がお待ちです」
執事服を着た男性の案内で、ユウリたち三人は謁見の間に通された。
大きなシャンデリアが吊るされた謁見の間は、とてつもなくも大きくて広い部屋だった。
部屋の中央では、二人の人間が横並びになってイスに座っている。
一人は、第五王女のシャルロット。
笑顔が似合う、ユウリたちの大切な友達だ。
ユウリたちの姿を見たシャルロットは、嬉しそうに口元をほころばせた。
そんなシャルロットの隣には、白髪交じりのオッサンが座っていた。
たっぷりの威厳を感じる。このオッサンが国王だろう。
国王とシャルロットの前まで進んだユウリたち三人は、深く頭を下げた。
「よく来てくれたなユウリ、リエラ、フィア。大事な娘であるシャルロットの命を救ってくれたこと、深く感謝する」
国王が深く頭を下げると、横で控えていた臣下が「何をなさるのですか!」と慌てた声を上げた。
「あなた様は、この国の王にあられるお方ですぞ! たかだか冒険者風情に軽々しく頭を下げないでください!」
「貴様、今なんと申した……!」
眉をひそめる国王。
鋭い瞳で、臣下を睨みつける。
「彼女たちはシャルロットを救ってくれた恩人だぞ! 娘を救ってくれた恩人に対して敬意を表すのは、父親として当然のことだ。貴様にとやかく言われる筋合いはない!」
言っていることからして、国王はかなりまともそうな人物だった。
モルデーロ王国の国王とは、えらい違いだ。
ふぅ、と息を吐いた国王が、ユウリを見る。
「ユウリ。ぜひともお主に礼をさせてくれ。何か望みはあるか?」
「いや、俺は別に――あ、待て。一つあった」
シャルロットをチラッと見てから、国王に視線を戻す。
「もっとシャル――シャルロットに会う機会をもっと増やしてほしい。シャルロットにとっては、あんただけが唯一の肉親だからな。仕事が忙しいのかもしれないが、なんとか時間を作ってくれ」
「……それがお主の望みか?」
目を大きく見開いた国王が、パチパチとまばたきした。
「友達の喜ぶ顔を見たい、それが俺の望みだ」
「そうか。……シャルロット、良き友を持てたな」
「はい……!」
微笑む国王に、震え声で返事をしたシャルロット。
今にも泣きそうになっているのを、必死で我慢しているようだった。
「ユウリ、リエラ、フィア。お主たちも、シャルロットと友達になってくれてありがとうな」
「俺たちは、シャルが気に入ったから友達になっただけだ。別に礼なんていらない」
「その通りです」
「二人に同じじゃ!」
「そうか」
優しい顔で国王が頷いた。
まさか、友達になってくれてありがとう、なんて言われるとは思わなかった。
ディアボル王国国王は、とても娘思いのオッサンのようだ。
ほんわかした空気が流れて少し経った頃。
国王が口を開いた。
「ときに、ユウリ。お主がレドリオ王国で討った殺し屋だが、正体を知っているか?」
「あのスキンヘッドのことか? 確か名前はジェイクって言ってたな。けど、知っているのはそれだけだ。もしかして、結構有名なヤツだったのか?」
「ああ。ジェイクは元Sランク冒険者。SSランク冒険者一歩手前まで上り詰めるほどの実力を持っていた男だ」
「そんなにすごいヤツだったのか」
SSランク冒険者は冒険者の最高峰。
限られた一握りの冒険者しか、そこへはたどり着けないという。
火属性の最上級魔法である【ドラゴンブレス】を放ってきたりと、ただ者ではないと薄々感じていた。
でもまさか、そこまでの実力者だと思わなかった。
「レドリオ王国から聞いたが、ジェイクを討ったお主は無傷だったそうだな」
「苦戦するような相手じゃなかったしな」
「あのジェイクを無傷で討ったお主の実力はすさまじい。冒険者の最高ランクであるSSランク冒険者――いや、それよりも上だろう。お主こそがこの国の最高戦力だと、私はそう思っている」
「いくらなんでもそれは言いすぎだろ」
たはは、と笑ってみるが、国王は真剣な顔をしていた。
冗談で言っている訳ではないらしい。
「……そんな大いなる力を持つお主にしかできない頼みがある」
国王がまっすぐに見つめてくる。
「ユウリ、この国を救ってほしい」
42
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。
名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる