14 / 44
【14話】デルドロ大洞窟
しおりを挟むケレル大森林を発ってから二日。
ユウリ、リエラ、フィアの三人は、目的地であるデルドロ大洞窟へ到着した。
松明を持った三人は、洞窟内へと入っていく。
「広いなぁ」
周囲をぐるっと見渡したがユウリが、月並みな感想を漏らす。
大洞窟というだけあってかなり広い。
「感心するのもよいが、この洞窟にはたくさんモンスターが住み着いておる。二人とも、気を引き締めておいた方が良いぞ」
「おう!」
「はい!」
フィアの声に、二人は気合を入れた返事をするのだった。
先頭からフィア、ユウリ、リエラという並びで進んでいく。
このメンバーで戦闘力が一番高いのはユウリだ。
前方と後方、何か起こった時にどちらにでも対処できるよう、ユウリは真ん中にいる。
「出てきおったな」
先頭を歩いていたフィアが立ち止まった。
合わせて、ユウリとリエラも足を止める。
三人の前に立ちはだかったのはイノシシの顔を持つ人型モンスター、オーク。
手には、先端の尖った槍が握られている。
危険度はそれほど高くなく、Dランク冒険者ならば問題なく倒せるレベルだ。
「ちゃちゃっと倒してくるか」
「お待ちくださいユウリ様。ここは私にやらせていただけませんか?」
ずいっと出てきたリエラは、ユウリの隣に並んだ。
ピンと背筋を伸ばし、やる気に満ちあふれている。
(フィアの話を聞いて、気合が入っているんだな。……熱くて優しいヤツだ)
フッと笑ったユウリは、リエラの肩に手を載せる。
「分かった。でも、絶対に無理はするな。無理だと思ったらすぐ逃げろ。いいな?」
「はい!」
「よし、行ってこい!」
リエラに【勇者覚醒】を発動する。
白色の淡い光を纏ったリエラ。
引き抜いた剣を片手に持ち、オーク目掛けて飛び出していく。
「ブモオオオ!」
向かってくるリエラへ、オークは槍を突き出した。
なかなかに早い動きだ。
だが、リエラには当たらない。
横にステップを踏んで、槍の突きを回避。
剣の届く間合いまで踏み込んでいく。
「やあああっ!」
リエラが剣を振り下ろした。
リエラの剣は、オークの体に直撃。
真っ赤な血を噴き出しながら、オークは地面に伏した。
洞穴でゴブリンを殲滅した時よりも、動きが格段に良くなっている気がする。
フィアのことを思って気合が乗っている分、キレがあったのかもしれない。
「ユウリ様、フィアさん! やりましたよ~!」
笑顔のリエラに、ユウリは小さく手を振る。
ユウリの隣まで下がってきたフィア。
恥ずかしそうに、目線を下に向けている。
「フィア、お前も手を振ってやれ。リエラはお前のために頑張ったんだ」
「分かっておるわい! ……お主もリエラも、とんだお人好しじゃ」
「素直に嬉しいって言えばいいのに。フィアも可愛いところあるじゃないか」
「なっ! お主今、わらわをバカにしただろ!」
思ったことを口にしたら、フィアがムスっとしてしまった。
素直になれないのをいじられたので、拗ねてしまったのだろう。
そんなところもまた可愛らしい。
それからも、順調に洞窟を進んでいく三人。
道中で遭遇したゴブリンやオークを討伐しながら足を動かしていき、ついに最深部へとたどり着く。
そこにいたのは、右角に傷のあるミノタウロス。
ターゲットはこいつで間違いないだろう。
両手にはそれぞれ、戦斧が握られていた。
真っ黒な体毛の覆われた筋肉隆々の体躯をしているが、それ程大きくはない。
オーガに比べて、かなり小柄である。
しかし、放っている雰囲気はなかなかのもの。
アッシュオーガよりも強い、とユウリは直感した。
「ミノタウロスッ……!」
喉から押し出すような声を上げたフィア。
そこには、どれほどの怒りや憎しみが込められているのだろうか。
ユウリには、とても想像がつかなかった。
「お前、あのときの娘か……。まさか、殺し損ねていたとはな」
たどたどしくはあるが、ミノタウロスは言葉を喋った。
人間の言葉を話すモンスターなど、これまでに出会ったことがない。
(知能が高いと聞いていたけど、まさか喋るなんてな)
予想を上回る知能の高さに、ユウリは少し驚いていた。
「まぁいい。殺し損なっていたのなら、今殺せばいいだけだ」
ミノタウロスがニヤリと笑う。
それに合わせるかのように、ユウリたちの後方から五体のオークが姿を現した。
「お前ら三人とも、ここで死ぬといい」
前方にミノタウロス、後方に五体のオーク。
二種類のモンスターに、前後を挟まれている格好になる。
リエラとフィアに、ユウリは【勇者覚醒】を発動した。
「リエラとフィアは、後ろにいるオークたちを頼む」
ユウリの指示に、二人は小さく頷いた。
「俺はミノタウロスをやる」
自身にも【勇者覚醒】を発動したユウリ。
地面を蹴り、ミノタウロスの元へ向かっていく。
63
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。
名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる