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覚悟

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今日はよく飲んだな。外の風が頬にあたり少し酔いが覚める。満月の僅か前の月か、ほぼ真ん丸に近い。
「アンドレア殿下?」
アーロ殿下?千鳥足となっているが、レスターがついているからいいだろう。
「アーロ殿下、酔い覚ましですか?」
「ええ。俺でも酔ってしまうようです」
「悩みはつきませんからね」
「本当にそう思います。アンドレア殿下は召喚獣の魔法を練習していますね。皇太子では誰も学ばないと思っていました」
「皇太子は最前線にでなくていいと私も思います。でも今回だけは最前線に参加します」



「何故ですか?」
「国の存続をかけた戦いでもありますし、しかし本音は私ができることを全部試して用意することです。ルカには王宮軍の士気を上げるためと説明すればいいでしょうと言われました」
「もしものことがあったらと考えると陛下や宰相に家族からも反対されるでしょう?」
「反対されても負ければ終わりの戦いです。絶対に自分の意見を通しますよ」
「ありがとう。アンドレア殿下。私も父上と母上に許可をもらいます」
「それはありがたい。兵が鼓舞されますよ」



「な~に話しているの?」
「ノア殿下。なんで召喚獣の練習して最前線にでるのってアーロ殿下に聞かれたから」
「僕はヘタレだからさ。最前線にでるよ。いつもは最後尾だからね」
「……でも危険ですよ」
「だからさ。それが兵士への一番の薬じゃない?」
「ノア殿下の最前線が兵士への最大の鼓舞ですね」
「僕は召喚獣防御ガルムと回復カラドリウス担当ね」
「何故ですか?」
「ドラゴン操るの怖いから」
「最前線への覚悟はあるのになんでドラゴン怖いのです?」
「三つのドラゴンの眼がどれも怖かったもん」
「皇太子の覚悟と責任を持ちながらヘタレも持っているのですね」
「そう、僕ってそんな奴」
アーロ殿下と目を合わせて笑ってしまった。



次の日は召喚獣の練習場ノマキの東への移動の準備に追われた。召喚獣担当できる魔法使いは数が限られているが、偽装兵士や防御ガルムへの攻撃の相手など三十人程度は必要だ。



良い報告がアーロ殿下の下に二つ届いた。一つはサイラス三世国王陛下からで暗示にかかっていたオーガストだが暗示が解除され魔法石での契約魔法では紫になったと。セントアイにむかったので明日には到着するそうだ。もう一つはケイトの相手が決まったこと。お見合い四人の中でケイトが気に入った相手が見つかったそうだ。ケイトの条件に合うようでラウラから聞き出してもらおう。



バンスのハンド―ラ国王宮に親書を持参した人物が到着した。ルーシアの人物で国王陛下からの親書を持ち国王サイラス三世へ謁見を申し出る。しばらく待たされた後、謁見の間に通された。



「国王陛下にはご機嫌麗しく存じます。ハンド―ラ国の繁栄を願う我が陛下から手紙をお持ちいたしました。ご確認いただきとう願います」
「うむ。遠路はるばるご苦労であった。返事は急ぐのか?」
「誠に勝手ながら宿をとり返事をいただいてから帰国するように命を受けております」
「ならば王宮に護衛付きの部屋を用意する故、一日待ってもらおう」
「お心遣い感謝いたします」
「部屋の用意と案内を頼む」




執務室に戻り王妃を呼び親書を開封する。陛下は無言で読み進める、隣の王妃は険しい表情に変わっていく。
「もう五年経過しているからな。約束の確認は当然だが、お互いの国に駐在するように条件を出してきた。お前はどう思う?」
「陛下、駐在はルーシアとの約束を果たさない我が国の方針としては困った存在になります。あと五年ありますが、五年後には駐在ができるようにと書いてあるので実質は二年後には駐在の建物は着工となりますね」
「余裕ある時間はあと二年となるな。容認するしかあるまい。宰相とアーロに早馬を頼む」
「承知いたしました。陛下」



ルーシアの揺さぶりは違うところでも用意されていた。ハンド―ラ国の東地区の北の国境の辺りに人が集められていた。人相の悪い荒くれ物の男たちである。その数五百名。誰かの指示を聞いている。


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