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国としての賠償
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「ボールドからの返事は?」
「まだでございます」
「そうか。すまんが催促の親書をだしてくれ。印は押すから至急頼む」
「御意」
なんとしても謝罪したい。子供みたいだが、謝罪したい。反乱軍のサイモンはハンド―ラ国の旗を占領した町に立てたのだ。下手くそな真似した旗だがハンド―ラ国の旗とそっくりなのだ。誰にもハンド―ラ国の旗に見えている。はらわたが煮えくり返るが事実は事実だ。
ボールドでは対応に苦慮していた。ハンド―ラの国王が国境の町セントアイに謝罪を目的にお見えになっているのだ。ボールドとしても相応の対応を取らないといけない。王宮への早馬にはこちらも陛下が動き出していると返事がきている。宰相や大臣も動いているようだ。
”この度のことについては陛下と皇太子殿下にお任せしてはいかがでしょうか?この度の侵攻された件では我が国は一人の怪我人もおりません”
宰相からはこのように提案された。私と父上の二人での対応で終わらせていいのだろうか?ハンド―ラも国として謝罪に来ているならボールドも大勢で迎えていいのではないか?それよりも塩対応で対応して突き放してハンド―ラの次の対応を考えた方がボールドとしては得策だろうか?陛下に相談しよう。
陛下の執務室をノックする。
「入れ」
「失礼いたします。ハンド―ラの国王がセントアイにまで謝罪に来ているとのことですが、宰相からは陛下と私で対応してみてはと提案を受けました」
「うむ。わかった」
「私は二人では人数が少ないのではないかと思います。大勢で迎えて謝罪を受けてはいかがでしょうか?」
「お前の意見も一案ではある。宰相の意見は二人で対応するなら相手も二人でいいのではないかと、そんな意味だな」
「そうなのですね。陛下も同意見でしょうか?」
「そうだ。今回は二人で対応する」
ボールドとハンド―ラの国王二人の対面はボールドの首都ホーストの北部のフランコの館で行われる。わざわざ国王が近くまで来ているのだ。明日の午後にセッティングされた。ボールド側は二人でハンド―ラも二人で階段を行う。護衛騎士は二人ずつで会場の護衛は両国二十人ずつでフランコの館のまわりの警備を行う。
翌日の昼食は陛下と二人での食事となった。陛下が注文したのはパンとスープのみ。私も一緒の注文をした。
「大事な会議などの前は敢えて食事は軽くするのだ。眠くなってもいかんからな」
「なるほど」
「会談が終わればおやつができる。それが楽しみだ」
そんな小さなことを楽しみにするなんて、そんな父上だったかな?
昼食が終わり約束の時間が近づいてきた。
足音がして到着したのだと感じた。
最初に入ってきたのは目つきが鋭い銀髪の中年。このお方が国王陛下。次に入ってきたのは若い男性で私と年がかわらない。皇太子殿下だろう。対面して座り後ろに護衛騎士が立ち会談がはじまる。
「ボールド国王にお目にかかることができて誠に光栄であります。今日はこのような場を設けてくださり感謝いたします」
「こちらこそハンドーラ国王とお会いできることに感謝いたします」
「こちらは皇太子アーロです。どうかお見知りおきを」
「第一王子アーロと申します。本日は同行させてもらいます」
「隣に座るのは皇太子アンドレアです」
「第一王子のアンドレアと申します。お会いできて光栄です」
「本題ですが先日のサイモンを首謀としてボールドに攻め込んだことをハンドーラ国王として謝罪いたします」
ハンドーラ国王は立ち上がり頭を下げた。
「陛下、謝罪をお受けいたします。それでサイモンとやらの集団の動機はなんだったのですか?」
「実はハンド―ラが吸収したメリピ国の国民の子供などです。動機は毎日家族に会えないことなのです」
「公務や仕事などで家を空けることなどあるだろうに」
「陛下、私も同意見です。率直に言えば近代工場などでの集団生活をさせたのですが、メリピの人々は農業の民でして毎日一緒に飯を食べ一緒に寝るのが当然だったのです。それをハンド―ラの集団生活で父親を集めたところ半分以上が反発したのですな」
「そんなことですか?でも上手くなじんだ人もいたのではないでしょうか?」
「器用な人は出世してハンド―ラでも有力な家になった方もいます。でも問題は多くのなじめなかった人々です。サイモンのところに集まり家にも帰らなくなり群衆化したのです」
「その連中が決起したわけですか?」
「そうです。連中は次々と家族から離縁されて泣くばかり。帰るところも無くなって気の毒な連中です」
「そうですか」
「賠償をさせてください。金銭では国民も喜ばないでしょうから、国家機密である王宮軍の秘密のテクニックを伝授します。一緒に戦闘訓練をしてもらえませんか?軍も魔法使いも部隊への申し込みが増えるかも知れませんぞ」
「ハンド―ラの秘密を教えていただけるのですか?確認ですが王宮軍や宰相や大臣などに断っていらっしゃるのですか?」
「そこは議論したうえで用意できる最高のお詫びをすることに決めたのだ。心配はいらない」
ハンド―ラとの国力の差は明らかだ。フルナールとの差もまだまだ開いている。国力をあげるには軍の力をもっと上げる必要があるので断る選択肢はボールドには持ち合わせていなかった。
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仕事の繁忙期につきまして不定期更新になります。
帰ってきますのでお待ちくださいませ。
「まだでございます」
「そうか。すまんが催促の親書をだしてくれ。印は押すから至急頼む」
「御意」
なんとしても謝罪したい。子供みたいだが、謝罪したい。反乱軍のサイモンはハンド―ラ国の旗を占領した町に立てたのだ。下手くそな真似した旗だがハンド―ラ国の旗とそっくりなのだ。誰にもハンド―ラ国の旗に見えている。はらわたが煮えくり返るが事実は事実だ。
ボールドでは対応に苦慮していた。ハンド―ラの国王が国境の町セントアイに謝罪を目的にお見えになっているのだ。ボールドとしても相応の対応を取らないといけない。王宮への早馬にはこちらも陛下が動き出していると返事がきている。宰相や大臣も動いているようだ。
”この度のことについては陛下と皇太子殿下にお任せしてはいかがでしょうか?この度の侵攻された件では我が国は一人の怪我人もおりません”
宰相からはこのように提案された。私と父上の二人での対応で終わらせていいのだろうか?ハンド―ラも国として謝罪に来ているならボールドも大勢で迎えていいのではないか?それよりも塩対応で対応して突き放してハンド―ラの次の対応を考えた方がボールドとしては得策だろうか?陛下に相談しよう。
陛下の執務室をノックする。
「入れ」
「失礼いたします。ハンド―ラの国王がセントアイにまで謝罪に来ているとのことですが、宰相からは陛下と私で対応してみてはと提案を受けました」
「うむ。わかった」
「私は二人では人数が少ないのではないかと思います。大勢で迎えて謝罪を受けてはいかがでしょうか?」
「お前の意見も一案ではある。宰相の意見は二人で対応するなら相手も二人でいいのではないかと、そんな意味だな」
「そうなのですね。陛下も同意見でしょうか?」
「そうだ。今回は二人で対応する」
ボールドとハンド―ラの国王二人の対面はボールドの首都ホーストの北部のフランコの館で行われる。わざわざ国王が近くまで来ているのだ。明日の午後にセッティングされた。ボールド側は二人でハンド―ラも二人で階段を行う。護衛騎士は二人ずつで会場の護衛は両国二十人ずつでフランコの館のまわりの警備を行う。
翌日の昼食は陛下と二人での食事となった。陛下が注文したのはパンとスープのみ。私も一緒の注文をした。
「大事な会議などの前は敢えて食事は軽くするのだ。眠くなってもいかんからな」
「なるほど」
「会談が終わればおやつができる。それが楽しみだ」
そんな小さなことを楽しみにするなんて、そんな父上だったかな?
昼食が終わり約束の時間が近づいてきた。
足音がして到着したのだと感じた。
最初に入ってきたのは目つきが鋭い銀髪の中年。このお方が国王陛下。次に入ってきたのは若い男性で私と年がかわらない。皇太子殿下だろう。対面して座り後ろに護衛騎士が立ち会談がはじまる。
「ボールド国王にお目にかかることができて誠に光栄であります。今日はこのような場を設けてくださり感謝いたします」
「こちらこそハンドーラ国王とお会いできることに感謝いたします」
「こちらは皇太子アーロです。どうかお見知りおきを」
「第一王子アーロと申します。本日は同行させてもらいます」
「隣に座るのは皇太子アンドレアです」
「第一王子のアンドレアと申します。お会いできて光栄です」
「本題ですが先日のサイモンを首謀としてボールドに攻め込んだことをハンドーラ国王として謝罪いたします」
ハンドーラ国王は立ち上がり頭を下げた。
「陛下、謝罪をお受けいたします。それでサイモンとやらの集団の動機はなんだったのですか?」
「実はハンド―ラが吸収したメリピ国の国民の子供などです。動機は毎日家族に会えないことなのです」
「公務や仕事などで家を空けることなどあるだろうに」
「陛下、私も同意見です。率直に言えば近代工場などでの集団生活をさせたのですが、メリピの人々は農業の民でして毎日一緒に飯を食べ一緒に寝るのが当然だったのです。それをハンド―ラの集団生活で父親を集めたところ半分以上が反発したのですな」
「そんなことですか?でも上手くなじんだ人もいたのではないでしょうか?」
「器用な人は出世してハンド―ラでも有力な家になった方もいます。でも問題は多くのなじめなかった人々です。サイモンのところに集まり家にも帰らなくなり群衆化したのです」
「その連中が決起したわけですか?」
「そうです。連中は次々と家族から離縁されて泣くばかり。帰るところも無くなって気の毒な連中です」
「そうですか」
「賠償をさせてください。金銭では国民も喜ばないでしょうから、国家機密である王宮軍の秘密のテクニックを伝授します。一緒に戦闘訓練をしてもらえませんか?軍も魔法使いも部隊への申し込みが増えるかも知れませんぞ」
「ハンド―ラの秘密を教えていただけるのですか?確認ですが王宮軍や宰相や大臣などに断っていらっしゃるのですか?」
「そこは議論したうえで用意できる最高のお詫びをすることに決めたのだ。心配はいらない」
ハンド―ラとの国力の差は明らかだ。フルナールとの差もまだまだ開いている。国力をあげるには軍の力をもっと上げる必要があるので断る選択肢はボールドには持ち合わせていなかった。
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