キラーズ・リデンプション 〜剣と魔法の世界に、アイアンサイトは似合わない〜

エンタープライズ窪

文字の大きさ
上 下
12 / 19
第一部 <リデンプション・ビギニング>

信じる

しおりを挟む
「ねぇ、今ちょっとだけ時間ある?」
「レオナさん? どうかされたんですか?」

 昨日のお風呂の中でリディアちゃんに話した、冒険者にアクセサリーを貸す話について、早速実行に移してみた。
 最初に声を掛けたのは、一番下のF級からB級まで、たったの二年で駆け上がってきた、私が目を掛けているパーティの一つだ。
 その中で、パーティの要とも言える薬師の少女に声を掛け、ギルドの個室へ招き入れた。

「この個室って、依頼者がギルド職員へ依頼の相談をする部屋ですよね? 私、初めて入りましたよ」
「まぁ、依頼を受ける側の冒険者は、あまり入る機会は無いわよね。でも、依頼者の個人情報や、報酬の話なんかを大っぴらな場所でやる訳にもいかないから、防音魔法が施されたこの部屋で……って、脱線したわね。本題へ入りましょう」
「は、はい。あの、私たちのパーティが、何かやらかしたのでしょうか?」
「逆よ。優秀で、かつ信頼出来るからこそ声を掛けたの。もちろん、悪い話ではないわ。ちょーっと協力して欲しいのよ」

 目の前の少女が小さく頷いたので、今朝リディアちゃんから借りてきた、木の葉をモチーフにしたブローチを取り出す。
 リディアちゃんの説明によると、これは身体や精神の異常に耐性を持つ事が出来る効果があるのだとか。
 薬師は、その名の通り薬を用いてパーティメンバーの怪我を治したり、麻痺や幻覚状態を解いたり、逆に毒草などを用いて相手を撹乱したりと、魔物と戦いながらも冷静な判断力が求められる。

「……という訳で、このブローチをつけているだけで、パーティの危険度が大きく減るのよ」
「例えば、毒アゲハが使ってくる鱗粉攻撃で、パーティ全員が麻痺させられて全滅……なんて話があるけれど、これを身につけていれば麻痺が防げて、仲間を治療することが出来るって事ですか?」
「そういう事よ。毒アゲハの鱗粉は、風に乗って全員一気にやられちゃう事があるからね。とはいえ、絶対防御って訳ではなくて、効きにくいって思ってくれれば良いわ」
「えっと、そのブローチを買わないかっていうお話ですか?」
「いいえ。試行として使って欲しいの。もちろん料金なんてかからないわ。ただ、後で返してくれれば良いだけよ。その時、ちょっと感想とかを聞かせてもらうかもしれないけど」
「はぁ……まぁそれくらいでしたら」

 半信半疑って感じだけど、一先ず一つ目のアクセサリーを渡し、次の冒険者を探す。
 今度は魔力が上がるアクセサリーを渡し、次は敏捷性。あとは、スタミナを増やすとか。
 いずれも信頼出来る子にしか渡していないし、きっといけるはずっ!
 だってリディアちゃんのアクセサリーは、本当に凄いから!
 きっと、ギルドのため、冒険者のため、そして依頼者のためになるはずよっ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

平和国家異世界へ―日本の受難―

あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。 それから数年後の2035年、8月。 日本は異世界に転移した。 帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。 総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる―― 何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。 質問などは感想に書いていただけると、返信します。 毎日投稿します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...