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第一部 <リデンプション・ビギニング>
女刑事が来る
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こうして、俺の新たな異世界生活は始まった。
昨夜はゾーリンゲンの服を借り、床に敷かれた布団で眠った。
どんな夢を見たかは覚えていない。
翌日の朝、1番早く起きたのは俺だった。
てっきり、他にも誰か早起きがいると思っていたのだが、そんなことはなかった。
皆、気持ちよさそうな寝息を立てている(ゴアンスに乗っかられたゾーリンゲンだけは苦しそうだった)。
起こすのも悪いし、かといってこのままぼけーっとしているのも面白くないので、俺は立ち上がって外に出た。
明るくなり始めたばかりのようで、人通りも少ない。
俺は小屋の壁の側によると、腕立てをし始めた。
自衛隊式の腕立ては、手を平を内側に向けた八の字の状態で、頭からつま先までが一直線になるよう意識して行う。
その態勢をキープしたまま、顎を地面につけるようにして体を落とすのだ。
それを何度も何度も繰り返す。
そのうち、トゥピラが起きてきた。
割れた窓から顔を出して、俺の腕立てを眺めていた。
「…………何してんの?」
「腕立て」
「へ、へえ……」
どうして引くんだい、友よ。
全員起床した後、トゥピラ達は朝食を取ると言って小屋を出て行った。
俺も着いて行こうとしたが、トゥピラに「危ないから」という理由で断られ、こうしてお留守番である。
暇だったので、狭い小屋の中をうろうろしていたのだが、本当にすることがなかった。
……腹減った。
この3日間、ほとんど何も食っていない。
正直限界だった。
そして時は経ち……。
「ただいま~。トシヤお待たせ~…………」
玄関のドアを開けたトゥピラの声が小さくなっていく。
無理もない。
帰ってきた途端、男がゾンビのように床を這いつくばりながら「飯~……」と唸っているのだ。
「ぶぁあははは! 何やってんだオメー!」
大笑いするゾーリンゲンを他所に、トゥピラは干からびかけた俺に駆け寄ってくる。
「お、落ち着いてトシヤ! トシヤの分も持ってきたから!」
「ほ、本当か……」
「本当よ! だから元に戻って!」
彼女が持ってきたのは、正直食べ物と呼べるのか怪しかった。
何やら気味の悪い物体が大量に盛り付けられた皿を差し出され、思わず顔を顰めそうになった。
指でつまめるほどの小さなものだったが、ドロドロしていて気色悪い。
イメージとしては、水に濡らした粘土でも触っているような感覚だった。
よく見ると、そいつの形は人間の脳みそに似ており、赤黒い汁が皿に広がっている。
「なあに、これぇ?」
「ウサギの脳でごわす。おいの大好物でごわすよ」
「……」
見るからに不味そうだ。
だが、せっかく持ってきてもらったというのにいらないと突っぱねるのも良心が痛む。
俺は覚悟を決めて脳みそを口に入れた。
「……む?」
水っぽくてドロドロしているが、歯で噛むととプチっと潰れて、甘い液体を口の中に撒き散らす。
潰す感覚も心地いいし、何より味もいい。
これはいける。
かなりいける。
「これは止まらねえ!」
「お! わかってんねえ! こいつは芋と一緒に食うともっとうめえんだぜ!」
「ゾーリンゲンどんもツウでごわすなぁ!」
「僕はそのままかなあ……。芋に脳みその味が消されちゃうよ」
「私もマーティンに同意ね」
騒ぎ出す冒険者一行。
ただ、ウィルだけはずっと黙っていた。
「そういやよお、めっちゃ話題になってたぜお前のこと」
ゾーリンゲンの言葉に、俺は脳を口に放り込む手を止めた。
「本当か?」
「おう。なあ、チビ」
「冒険者の間ではかなり噂になってたね。トゥピラをシメてたマックスの子分がやられたって。それより、昨日の話……」
「銃は貸さん」
「アーン」
なるほど。
これは外に出なくて正解だったかもしれない。
ゾーリンゲンが俺の肩を肘で突いた。
「やるじゃねえか、見直したぜ。変な格好のクセによ」
「そいつはどうも。それと格好については深く触れるな」
それから1日中、こんな調子だった。
とにかくバタバタしていて落ち着きがなく、それでいて居心地のいい空気であった。
この後勃発した、ウサギの脳の食べ方を巡ったゾーリンゲンとトゥピラの喧嘩も、うるさくは思ったが特別嫌な感情は湧かなかった。
昼頃から夕方にかけて、トゥピラ達が仕事に行っている間だけ静かだった。
そうこうするうちに1日が終わり、次の日がやってくる。
翌日の朝、俺は表でスクワットをし、またしてもトゥピラに引かれた。
彼女らはまた食事を持ってきてくれて、美味しく頂いた。
この日は相変わらずずっと喋らないウィルをゾーリンゲンと一緒に揶揄ったり、ゴアンスから冒険者稼業の愚痴を聞かされた。
彼の話を要約すると、毎日毎日、魔王の配下や賊を相手に命懸けで働いているのに冒険者ギルドは安月給、おまけに嫌われ者であるせいで周りからの扱いはいいと言えないというもので、同情せずにはいられなかった。
「俺にもできることがあるなら頼ってくれ」
「頼もしいなぁ。でも、おいもイリエスどんも他のみんなも、もうこれに慣れちまってるからなぁ。一種の諦めでごわすよ」
「そういう慣れが1番嫌いだ」
ゴアンスは困ったように笑うだけだった。
翌日は、トゥピラの持っている本を借りて読書にふけった。
しかし、
「よう、緑。エロ本か? 俺にも見せてくれよ」
「どうしても手伝ってくれないの?」
「……」
背後からゾーリンゲンとマーティンに邪魔され、優雅な読書タイムは台無しになった。
次の日はギルドでの仕事が忙しかったようで、トゥピラの話では「今日1日、近くの村に派遣される」のだそうだ。
その間、俺は1人で小屋の掃除をやっていた。
彼女達が帰ってきたのは夜遅くであり、全員ボロボロだった。
労いの意味を込めて、その日の家事は全て俺が担当した。
その翌日はマーティンに追い回されたり、トゥピラとゾーリンゲンの喧嘩がいつもより白熱したりとさらに騒がしかった。
「あんたってばホントに最低ッ! 恥を知りなさいよ本気で!」
「なんだと! 胸ねえくせに!」
喧嘩の原因は、ゾーリンゲンがトゥピラのお菓子を摘み食いしたからで、完全にゾーリンゲンが悪いのであるが、ほぼ逆ギレに近い形でトゥピラに反論したため、喧嘩が激化したのである。
「やれやれでごわすなぁ」
「そろそろ家が壊れちゃうよ……」
ゴアンスとマーティンも呆れ顔だ。
ウィルは相変わらずの無表情。
俺だけが必死に2人を止めようと足掻いていた。
こんな感じでが5日が経過。
冒険者一行との日々は、快適とは言えないが楽しいものだった。
奴らと一緒にいると、なぜか落ち着く。
あんなにもうるさい連中なのに、どうしてだろうか。
少しずつであるが、俺の心の傷も癒えてきた。
まだまだ完治には程遠いが、心に開けられた穴は少しずつ塞がりつつある。
楽しかった。
このまま、こいつらと暮らしてもいいとさえ思っていた。
あの女が来るまでは。
6日目の朝。
俺はいつも通り、早朝のトレーニングをするために外に出た。
今日行うのは初日にもやった腕立てだ。
「うっし。気合い入れよう」
腕立ての態勢を取り、今まさに開始しようとしたその時だった。
誰かが俺の前に立った。
見下ろすような視線を首筋に感じ、俺の体は硬直する。
……誰だ?
俺は腕立てを中止し、素早く立ち上がった。
「何だ、あんたは?」
女だ。
黒の背広を着た女がそこにいた。
艶やかな黒髪は肩まで伸び、明るみを増していく日の光をはね返している。
こちらを見つめている女は、漫画の世界から飛び出してきたかと思うくらいにスタイルが良く、すれ違った男は全員振り向くに違いない。
が、彼女の顔を見ればナンパする気なんて失せてしまうだろう。
彼女の顔は整っているものの、どこか話しかけづらい雰囲気を放つ吊り上がった目と三白眼を持ち、そこから凍てつくような視線が放たれている。
雪女のような雰囲気だった。
美しいことに間違いはないが、若干近寄り難さを感じる。
女は黙って俺を見ていた。
あまりにも異世界に不似合いなその格好(人のことは言えない)は、気味悪ささえ感じる。
「何か用か?」
沈黙。
俺は負けじと話しかける。
「まだ中で人が寝てるんだ。あいつらに用があるならもう少し──」
「……開いた穴を塞ぐために、現地の人間との暮らしを取ったか」
女が突然口を開いた。
「可哀想にな」
可哀想。
こうは言うが、決して同情しているわけではないと俺は悟った。
この女の口調には、深い嘲りが混ざっている。
見下されているような気分になり、俺は顔をしかめた。
「……何の冷やかしだ? そもそもあんた……」
「そんなものじゃ、満足できないんじゃないか?」
俺を遮るようにして女は言った。
「私は知っている。お前の精神状態は極めて不安定だ。こんなもので心は治せない。自分でもわかっているだろうに、現地人に依存しようとする。だから可哀想だと思った」
「……」
「お前の心の傷は、死んだ親友と元の生活が戻らないと癒えない。そうだろう?」
「!」
俺ははっきりと、驚愕を表情に出していた。
この女は今、死んだ親友と口にした。
何で知っている。
少なくとも俺にこの女との面識はない。
それなのに、何で見ず知らずの女が俺の心の痛みを知っている。
「…………もう一度聞く。何の用だ」
「話がある」
女は口角を上げて、不気味な笑みを作る。
俺はこの瞬間、本気でこの女を幽霊の類だと思った。
「お前に、傷を癒す方法を伝授したい」
昨夜はゾーリンゲンの服を借り、床に敷かれた布団で眠った。
どんな夢を見たかは覚えていない。
翌日の朝、1番早く起きたのは俺だった。
てっきり、他にも誰か早起きがいると思っていたのだが、そんなことはなかった。
皆、気持ちよさそうな寝息を立てている(ゴアンスに乗っかられたゾーリンゲンだけは苦しそうだった)。
起こすのも悪いし、かといってこのままぼけーっとしているのも面白くないので、俺は立ち上がって外に出た。
明るくなり始めたばかりのようで、人通りも少ない。
俺は小屋の壁の側によると、腕立てをし始めた。
自衛隊式の腕立ては、手を平を内側に向けた八の字の状態で、頭からつま先までが一直線になるよう意識して行う。
その態勢をキープしたまま、顎を地面につけるようにして体を落とすのだ。
それを何度も何度も繰り返す。
そのうち、トゥピラが起きてきた。
割れた窓から顔を出して、俺の腕立てを眺めていた。
「…………何してんの?」
「腕立て」
「へ、へえ……」
どうして引くんだい、友よ。
全員起床した後、トゥピラ達は朝食を取ると言って小屋を出て行った。
俺も着いて行こうとしたが、トゥピラに「危ないから」という理由で断られ、こうしてお留守番である。
暇だったので、狭い小屋の中をうろうろしていたのだが、本当にすることがなかった。
……腹減った。
この3日間、ほとんど何も食っていない。
正直限界だった。
そして時は経ち……。
「ただいま~。トシヤお待たせ~…………」
玄関のドアを開けたトゥピラの声が小さくなっていく。
無理もない。
帰ってきた途端、男がゾンビのように床を這いつくばりながら「飯~……」と唸っているのだ。
「ぶぁあははは! 何やってんだオメー!」
大笑いするゾーリンゲンを他所に、トゥピラは干からびかけた俺に駆け寄ってくる。
「お、落ち着いてトシヤ! トシヤの分も持ってきたから!」
「ほ、本当か……」
「本当よ! だから元に戻って!」
彼女が持ってきたのは、正直食べ物と呼べるのか怪しかった。
何やら気味の悪い物体が大量に盛り付けられた皿を差し出され、思わず顔を顰めそうになった。
指でつまめるほどの小さなものだったが、ドロドロしていて気色悪い。
イメージとしては、水に濡らした粘土でも触っているような感覚だった。
よく見ると、そいつの形は人間の脳みそに似ており、赤黒い汁が皿に広がっている。
「なあに、これぇ?」
「ウサギの脳でごわす。おいの大好物でごわすよ」
「……」
見るからに不味そうだ。
だが、せっかく持ってきてもらったというのにいらないと突っぱねるのも良心が痛む。
俺は覚悟を決めて脳みそを口に入れた。
「……む?」
水っぽくてドロドロしているが、歯で噛むととプチっと潰れて、甘い液体を口の中に撒き散らす。
潰す感覚も心地いいし、何より味もいい。
これはいける。
かなりいける。
「これは止まらねえ!」
「お! わかってんねえ! こいつは芋と一緒に食うともっとうめえんだぜ!」
「ゾーリンゲンどんもツウでごわすなぁ!」
「僕はそのままかなあ……。芋に脳みその味が消されちゃうよ」
「私もマーティンに同意ね」
騒ぎ出す冒険者一行。
ただ、ウィルだけはずっと黙っていた。
「そういやよお、めっちゃ話題になってたぜお前のこと」
ゾーリンゲンの言葉に、俺は脳を口に放り込む手を止めた。
「本当か?」
「おう。なあ、チビ」
「冒険者の間ではかなり噂になってたね。トゥピラをシメてたマックスの子分がやられたって。それより、昨日の話……」
「銃は貸さん」
「アーン」
なるほど。
これは外に出なくて正解だったかもしれない。
ゾーリンゲンが俺の肩を肘で突いた。
「やるじゃねえか、見直したぜ。変な格好のクセによ」
「そいつはどうも。それと格好については深く触れるな」
それから1日中、こんな調子だった。
とにかくバタバタしていて落ち着きがなく、それでいて居心地のいい空気であった。
この後勃発した、ウサギの脳の食べ方を巡ったゾーリンゲンとトゥピラの喧嘩も、うるさくは思ったが特別嫌な感情は湧かなかった。
昼頃から夕方にかけて、トゥピラ達が仕事に行っている間だけ静かだった。
そうこうするうちに1日が終わり、次の日がやってくる。
翌日の朝、俺は表でスクワットをし、またしてもトゥピラに引かれた。
彼女らはまた食事を持ってきてくれて、美味しく頂いた。
この日は相変わらずずっと喋らないウィルをゾーリンゲンと一緒に揶揄ったり、ゴアンスから冒険者稼業の愚痴を聞かされた。
彼の話を要約すると、毎日毎日、魔王の配下や賊を相手に命懸けで働いているのに冒険者ギルドは安月給、おまけに嫌われ者であるせいで周りからの扱いはいいと言えないというもので、同情せずにはいられなかった。
「俺にもできることがあるなら頼ってくれ」
「頼もしいなぁ。でも、おいもイリエスどんも他のみんなも、もうこれに慣れちまってるからなぁ。一種の諦めでごわすよ」
「そういう慣れが1番嫌いだ」
ゴアンスは困ったように笑うだけだった。
翌日は、トゥピラの持っている本を借りて読書にふけった。
しかし、
「よう、緑。エロ本か? 俺にも見せてくれよ」
「どうしても手伝ってくれないの?」
「……」
背後からゾーリンゲンとマーティンに邪魔され、優雅な読書タイムは台無しになった。
次の日はギルドでの仕事が忙しかったようで、トゥピラの話では「今日1日、近くの村に派遣される」のだそうだ。
その間、俺は1人で小屋の掃除をやっていた。
彼女達が帰ってきたのは夜遅くであり、全員ボロボロだった。
労いの意味を込めて、その日の家事は全て俺が担当した。
その翌日はマーティンに追い回されたり、トゥピラとゾーリンゲンの喧嘩がいつもより白熱したりとさらに騒がしかった。
「あんたってばホントに最低ッ! 恥を知りなさいよ本気で!」
「なんだと! 胸ねえくせに!」
喧嘩の原因は、ゾーリンゲンがトゥピラのお菓子を摘み食いしたからで、完全にゾーリンゲンが悪いのであるが、ほぼ逆ギレに近い形でトゥピラに反論したため、喧嘩が激化したのである。
「やれやれでごわすなぁ」
「そろそろ家が壊れちゃうよ……」
ゴアンスとマーティンも呆れ顔だ。
ウィルは相変わらずの無表情。
俺だけが必死に2人を止めようと足掻いていた。
こんな感じでが5日が経過。
冒険者一行との日々は、快適とは言えないが楽しいものだった。
奴らと一緒にいると、なぜか落ち着く。
あんなにもうるさい連中なのに、どうしてだろうか。
少しずつであるが、俺の心の傷も癒えてきた。
まだまだ完治には程遠いが、心に開けられた穴は少しずつ塞がりつつある。
楽しかった。
このまま、こいつらと暮らしてもいいとさえ思っていた。
あの女が来るまでは。
6日目の朝。
俺はいつも通り、早朝のトレーニングをするために外に出た。
今日行うのは初日にもやった腕立てだ。
「うっし。気合い入れよう」
腕立ての態勢を取り、今まさに開始しようとしたその時だった。
誰かが俺の前に立った。
見下ろすような視線を首筋に感じ、俺の体は硬直する。
……誰だ?
俺は腕立てを中止し、素早く立ち上がった。
「何だ、あんたは?」
女だ。
黒の背広を着た女がそこにいた。
艶やかな黒髪は肩まで伸び、明るみを増していく日の光をはね返している。
こちらを見つめている女は、漫画の世界から飛び出してきたかと思うくらいにスタイルが良く、すれ違った男は全員振り向くに違いない。
が、彼女の顔を見ればナンパする気なんて失せてしまうだろう。
彼女の顔は整っているものの、どこか話しかけづらい雰囲気を放つ吊り上がった目と三白眼を持ち、そこから凍てつくような視線が放たれている。
雪女のような雰囲気だった。
美しいことに間違いはないが、若干近寄り難さを感じる。
女は黙って俺を見ていた。
あまりにも異世界に不似合いなその格好(人のことは言えない)は、気味悪ささえ感じる。
「何か用か?」
沈黙。
俺は負けじと話しかける。
「まだ中で人が寝てるんだ。あいつらに用があるならもう少し──」
「……開いた穴を塞ぐために、現地の人間との暮らしを取ったか」
女が突然口を開いた。
「可哀想にな」
可哀想。
こうは言うが、決して同情しているわけではないと俺は悟った。
この女の口調には、深い嘲りが混ざっている。
見下されているような気分になり、俺は顔をしかめた。
「……何の冷やかしだ? そもそもあんた……」
「そんなものじゃ、満足できないんじゃないか?」
俺を遮るようにして女は言った。
「私は知っている。お前の精神状態は極めて不安定だ。こんなもので心は治せない。自分でもわかっているだろうに、現地人に依存しようとする。だから可哀想だと思った」
「……」
「お前の心の傷は、死んだ親友と元の生活が戻らないと癒えない。そうだろう?」
「!」
俺ははっきりと、驚愕を表情に出していた。
この女は今、死んだ親友と口にした。
何で知っている。
少なくとも俺にこの女との面識はない。
それなのに、何で見ず知らずの女が俺の心の痛みを知っている。
「…………もう一度聞く。何の用だ」
「話がある」
女は口角を上げて、不気味な笑みを作る。
俺はこの瞬間、本気でこの女を幽霊の類だと思った。
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