ダブルヒーロー

Tsumitake

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異世界転生!?

仲間②

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上階の廊下や教室を雛乃が「消えない火Indelible fire」で照らしている間、譲は風呂の用意を頼まれてシャワー室に来ていた。
まだ手付かずで薄暗いシャワー室内には数人の人影が蠢いていた。

「お、勇者様じゃん。」
「何、まだやる気あんの?
 無駄だって、この世界もう終わりでしょ。」

冷やかす声音に、譲は白けた視線を投げて返す。

「君達は脱落者?」
「脱落者って何だよ、
 早い内に状況理解したってだけだろ。」
「俺の相方なんか中ボス辺りで負けてさ。
 足掴んで左右に引き裂かれて、
 真っ二つになって死んだよ?
 メチャクチャ張り切って頑張ってたのに。」

2人目の発言に譲の眉がピクリと動いた。

「…相方?バディ制度になって以降か。
 なら君はまだ最近来た人間って事かな?」

見た所20歳前後の男は「まぁな。」と投げやりに答える。

「俺は早々にドロップアウトして正解だったわ。
 さっさと辞めてたからあんな死に方せずに済んだ。」

「つまり、君の主人公ヒーローパスは
 まだ直ぐに探せる可能性があるよね。」

「…?…ああ。
 俺の後に来たのはお前らだけだからな。
 一番上にある緑のランプのやつが俺のだよ。」

そうか。と譲が静かに男の方へ向き直る。

「早々にドロップアウトって事は、レベルいくつ?」

「あ?
 来たばっかのお前よりは上だと思うぜ?」

「いくつ。」

周りの元主人公連中が意図を理解したのか、そわそわし始める。

「……18か、19かそこらだよ。
 来た時点からほとんどこんな世界だったしな。
 そりゃ、あの時はまだ街がいくつかあったけど…。」

ちょっと恥ずかしくなったのか、モゴモゴ呟く男。

「じゃあ今呪詛くらって全身徐々に腐らせて死ぬか、
 魔物に一思いに惨殺されるかなら、どっち?」

「どっちも嫌に決まってるだろ!
 さっきから何だよその質問!」

モゴモゴした時に自然と頭が下を向いていた男は気付かなかったのだが、譲の手には真っ黒な水が巻き付いていた。
他の連中は気付かない間にシャワー室の壁と一体化して存在感を消している。

「うわ、汚ねぇ色だな!
 お前水適性だろ?何だよソレ。
 ドブみたいな色してんぞ。」

「協力しないなら、
 君が今からコレをくらう事になるんだけどね。」

は!?と目を瞠る男。

「俺は最初のバディ見捨てたような奴だぞ?
 仲間にしたってすぐ逃げる!」
「仲間にする気は無いから大丈夫。」
「魔法使えってだけか、
 なら脅す必要ねーよ、今からでもやってやる。
 パス一回捨てたから使えるか分かんねーけどな。」

と、男が立ち上がるが、譲の手の黒い水は消えない。

「俺のレベルは今23。」

譲が静かに告げる。

「まだお前ら外出てないだろ。
 何でそんなレベル高いんだよ!
 はったりか!?」
「元主人公を通りすがりに倒して回ってるから。
 レベル上げてるやつもいる分経験値が多いんだ。」

言った譲の目は、罪悪感も迷いも感じさせない正気な目だった。
そう、この状態が正気。
男は異常事態に竦みあがる。

「君の選択肢は奴隷として連れていかれるか、
 ここで今から呪われて3ヶ月後に死ぬかだ。」
「3ヶ月も苦しむの!?」
「うん、精霊がちゃんと調整してくれるから
 きっかり3ヶ月。」
「そんな調整はいらん!激しくいらん!」

ツッコミながら、男は譲が黒い水を巻き付けている方と反対の腕側に走り出した。
出入り口に立っている以上、男がすり抜けに来る事は分かっていたが、譲は止めなかった。
これでシャワー室の連中を一掃すれば男は1人になる。
更にはレベル差をもっとひらける。

主人公ヒーローパスの在り処が分かっていて、まだ若く、レベルも今すでに10以上。
呪い殺すのは勿体無い。
弱らせて諦めさせるか、追いながらレベルを上げて拘束魔法でも手に入れればいいか。と算段をつける。
譲は普通に戻した水で、一瞬のうちにシャワー室の壁を演じていた連中を地面に叩きつけ、男を追った。
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