ダブルヒーロー

Tsumitake

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異世界転生!?

主人公パスの威力②

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「こういうイベントも起こるんだね…。」

なるべく世間話っぽく、空気を変えようと努める雛乃の声に被せるように、またもピコン!と音がして、さっきの少女かと振り返る。
が、少女は殴られた頬を押さえてシクシク泣いている所だった。
もう雛乃としては可哀想でしか無い。
だってあの奇行は多分主人公ヒーローパスのせいだし、譲の機嫌が今ほど悪くなければ普通に恋愛イベントで、雛乃が嫉妬する程度で片付いた話だ。
と憐れんでいたら肩を掴まれた。

「ゆず?」

いや、譲がいるのは右側で、掴まれたのは左肩だ。
そう思考を巡らせながら振り返ると、顔にかかる影で何となく壁だと思っていた物体が、3メートル近い巨漢によって出来た影だったと気付く。

「おい、お前。俺の彼女に何した。」

え?彼女?と校庭でさめざめと泣いている少女に目を向ける。
この世界で出会ったのは、まだ案内人と名乗って早々に姿を消したコレットとあの少女だけだ。
っていうか、彼氏いたの!?

「何かしたのは俺だよ。」

と、譲が雛乃の肩にかかった巨漢の手を掴む。
こうして見ると、転生した譲の背は自分よりも高い事に気付く。
自分の転生した姿も背が低いわけでは無いと思っていたけど、男子で160cm台はもしかしたら低いのかも?と思い至る。
そう思うのは隣に並ぶ譲が175cm以上ありそうで、目の前の巨漢が3メートルという状況だからだが。

「突然キスしてきたから横っ面ぶん殴った。」

ゆず!?
何か自暴自棄になってるの!?

と雛乃が目を剝くが、誰がどう見ても機嫌の悪い譲は動じない。

「んだとぉ!?キスしたのか!」
「そっち!?」

怒るべきは殴られた部分じゃない!?と巨漢を見た雛乃の腹に巨漢の拳が埋まる。

「っ!?」

壁に叩きつけられて初めて自分が殴られた事を理解した。

「げほっ、おぇ…っ、…えっ??…っ、私!?」
「当たり前だ!」

いや、何でだよ!
ああ、主人公ヒーローパスを持ってるからか。
譲のやった事でも、主人公の行いとして周りにインプットされるのか。
2人主人公がいる事にこのゲーム的な世界は対応していない。
そしてまた、ヒロインを殴るなどの予定外な行動にも反応できないのだ。
そこまで理解して、雛乃の意識は途切れた。
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