ダブルヒーロー

Tsumitake

文字の大きさ
上 下
3 / 32
異世界転生!?

主人公パス

しおりを挟む
「それは持っている生物に主人公属性を与えるパスです。」
「え、待って、属性とかって何…。」

オタクじゃないから私わかんない。な雛乃が挙手するのを見て、金髪少年は「うーん」と少し首を捻った。

「物語の主人公って大概、
 問題が起きて、それに巻き込まれて壁にぶち当たるじゃないですか。」
「うーん…うん?」

あまりピンと来ていない様子でとりあえず相槌を打つ雛乃に、少年は説明を続ける。

主人公ヒーローパスを持っていると、そういう物語の主人公に必要不可欠な
 成長を促すイベ…いや、出来事に遭遇するようになるわけです。」
「…つまり、災難に遭いやすくなるって事…?」

雛乃の表情がさっきまで明るくなっていたのに、死んだ事実を突きつけられた時と同じくらい曇ってきた。

「その分早くレベルアップ出来ますから。
 目標達成が近づきます。」

にこやかに言い切る金髪少年。
天使か何かだからか、無理強いしている割にその瞳には一点の曇りもない。

「異なった世界で新しい人生を謳歌できるのに、
 ノルマ達成に時間をかけていては勿体ないでしょう?
 それとも、一生をノルマ達成に費やしますか?」

可愛い顔しているくせに悪魔だなコイツ。と脳内で毒づく程度にはタチの悪い質問だ。

「選択肢が無いじゃんそれ。」

ずっと黙っていた譲が主人公ヒーローパスを雛乃の手から取り上げた。

「そのノルマ、こなすのは俺だけでいい。」
「ゆず…っ!」

カッコいい!とちょっと感動している雛乃だったが、金髪少年は「まだ説明があるんですよ」と笑って聞き流した。

「これからあなた達が転生する世界は崩壊寸前です。」
「え!?」

新たな衝撃発言に譲を見つめていた姿勢から金髪少年に振り返る雛乃だったが、少年はシカトだ。

「数多の主人公がその儚い命を散らしてきました。
 もしくはノルマ達成を諦めて平民になってしまった。」
「…メチャクチャ難易度高いんじゃないんですか、ソレ。」

これもシカト。
数多の人々にこの無茶振りをしてきたなら相当神経図太いし、こんなリアクションも見慣れているんだろう。
少年は何を言っても全く動じない。

「そこで女神様は、一人じゃダメなんじゃないかと思い至ったわけです。」

ああ、なるほど。と納得して、先程からのド無視の事はツッコまず、とりあえず説明を聞く事にした雛乃。

「けれど、赤の他人を組ませてみても協調性がなかったり、
 どちらかが逃げ出してしまう事も多く、上手くいかなかったんです。
 そこに偶然あなた達が来た。」
「おい、温情じゃなかったのか。」

珍しく譲がツッコミを入れたが、金髪少年はにっこりと微笑んで見せるだけで流した。
でもほんと、言っている内容を除けば天使のような、絵になる美少年である。

「更にはお二人は真逆の適性を持っていた。
 青木 雛乃は火の適性、
 東条 譲は水の適性。
 二人が協力すれば欠点を補い合える。」

相性がいいって話かな?だとしたら嬉しいな。と能天気な考えで頬を染める雛乃。
胡散臭そうに金髪少年を見つめる譲。
間違いなく二人は対極にあった。

「あなた達には突然ではありますが、
 16歳から新しい人生をスタートして頂きます。」
「え!いきなり!?」

実年齢より2歳上で生まれ変わるなんて思っても見なくて雛乃は無駄と知っていても声をあげてしまった。

「はい。もうそれくらい、
 世界が滅亡しかかっていて時間が無いのです。」

ニコニコ言うけど、それもう手遅れなんじゃない?ノルマ達成不可能じゃない?
雛乃の考えが顔に出ていたのか、少年が言う。

「一緒の世界に行くか、離れ離れの異なる世界へ転生するか。
 一応、選択肢はありますよ?」
「だからそれ、無いだろっての…。」

譲が低く呟いて、雛乃の手を握った。

「行くよ。
 俺がその世界を最速で救って、雛乃と送りたかった人生を送る。」

ちょっと傲慢なセリフだけど、雛乃にとってはこれ以上ない言葉だった。
金髪少年も圧倒されたのかわからないが、少しあれ?と驚いた後、無表情になり押し黙っている。

「私も行く!ゆずとならどこへでも!」

宣言した瞬間、目の前に眩しい光が射して、古い映画やゲームによくあったような典型的なワープホールが出現して、二人は同時に足を踏み入れた。
ワープホールは二人を飲み込むとすぐに消えて、金髪少年だけを残し、また真っ白な世界になった。
2人が消えた位置ももう分からないが、おそらく消えた位置だろう虚空を見つめながら、金髪少年は呟いた。

「転生したら青木 雛乃は男になるって、
 説明した方が良かったのかな…。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

男女貞操逆転世界で、自己肯定感低めのお人好し男が、自分も周りも幸せにするお話

カムラ
ファンタジー
※下の方に感想を送る際の注意事項などがございます! お気に入り登録は積極的にしていただけると嬉しいです! ーーーーーーーーーーーーーーーーーー あらすじ    学生時代、冤罪によってセクハラの罪を着せられ、肩身の狭い人生を送ってきた30歳の男、大野真人(おおのまさと)。  ある日仕事を終え、1人暮らしのアパートに戻り眠りについた。  そこで不思議な夢を見たと思ったら、目を覚ますと全く知らない場所だった。  混乱していると部屋の扉が開き、そこには目を見張るほどの美女がいて…!?  これは自己肯定感が低いお人好し男が、転生した男女貞操逆転世界で幸せになるお話。 ※本番はまぁまぁ先ですが、#6くらいから結構Hな描写が増えます。 割とガッツリ性描写は書いてますので、苦手な方は気をつけて! ♡つきの話は性描写ありです! ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 誤字報告、明らかな矛盾点、良かったよ!、続きが気になる! みたいな感想は大歓迎です! どんどん送ってください! 逆に、否定的な感想は書かないようにお願いします。 受け取り手によって変わりそうな箇所などは報告しなくて大丈夫です!(言い回しとか、言葉の意味の違いとか) 作者のモチベを上げてくれるような感想お待ちしております!

処理中です...