ダブルヒーロー

Tsumitake

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異世界転生!?

主人公パス

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「それは持っている生物に主人公属性を与えるパスです。」
「え、待って、属性とかって何…。」

オタクじゃないから私わかんない。な雛乃が挙手するのを見て、金髪少年は「うーん」と少し首を捻った。

「物語の主人公って大概、
 問題が起きて、それに巻き込まれて壁にぶち当たるじゃないですか。」
「うーん…うん?」

あまりピンと来ていない様子でとりあえず相槌を打つ雛乃に、少年は説明を続ける。

主人公ヒーローパスを持っていると、そういう物語の主人公に必要不可欠な
 成長を促すイベ…いや、出来事に遭遇するようになるわけです。」
「…つまり、災難に遭いやすくなるって事…?」

雛乃の表情がさっきまで明るくなっていたのに、死んだ事実を突きつけられた時と同じくらい曇ってきた。

「その分早くレベルアップ出来ますから。
 目標達成が近づきます。」

にこやかに言い切る金髪少年。
天使か何かだからか、無理強いしている割にその瞳には一点の曇りもない。

「異なった世界で新しい人生を謳歌できるのに、
 ノルマ達成に時間をかけていては勿体ないでしょう?
 それとも、一生をノルマ達成に費やしますか?」

可愛い顔しているくせに悪魔だなコイツ。と脳内で毒づく程度にはタチの悪い質問だ。

「選択肢が無いじゃんそれ。」

ずっと黙っていた譲が主人公ヒーローパスを雛乃の手から取り上げた。

「そのノルマ、こなすのは俺だけでいい。」
「ゆず…っ!」

カッコいい!とちょっと感動している雛乃だったが、金髪少年は「まだ説明があるんですよ」と笑って聞き流した。

「これからあなた達が転生する世界は崩壊寸前です。」
「え!?」

新たな衝撃発言に譲を見つめていた姿勢から金髪少年に振り返る雛乃だったが、少年はシカトだ。

「数多の主人公がその儚い命を散らしてきました。
 もしくはノルマ達成を諦めて平民になってしまった。」
「…メチャクチャ難易度高いんじゃないんですか、ソレ。」

これもシカト。
数多の人々にこの無茶振りをしてきたなら相当神経図太いし、こんなリアクションも見慣れているんだろう。
少年は何を言っても全く動じない。

「そこで女神様は、一人じゃダメなんじゃないかと思い至ったわけです。」

ああ、なるほど。と納得して、先程からのド無視の事はツッコまず、とりあえず説明を聞く事にした雛乃。

「けれど、赤の他人を組ませてみても協調性がなかったり、
 どちらかが逃げ出してしまう事も多く、上手くいかなかったんです。
 そこに偶然あなた達が来た。」
「おい、温情じゃなかったのか。」

珍しく譲がツッコミを入れたが、金髪少年はにっこりと微笑んで見せるだけで流した。
でもほんと、言っている内容を除けば天使のような、絵になる美少年である。

「更にはお二人は真逆の適性を持っていた。
 青木 雛乃は火の適性、
 東条 譲は水の適性。
 二人が協力すれば欠点を補い合える。」

相性がいいって話かな?だとしたら嬉しいな。と能天気な考えで頬を染める雛乃。
胡散臭そうに金髪少年を見つめる譲。
間違いなく二人は対極にあった。

「あなた達には突然ではありますが、
 16歳から新しい人生をスタートして頂きます。」
「え!いきなり!?」

実年齢より2歳上で生まれ変わるなんて思っても見なくて雛乃は無駄と知っていても声をあげてしまった。

「はい。もうそれくらい、
 世界が滅亡しかかっていて時間が無いのです。」

ニコニコ言うけど、それもう手遅れなんじゃない?ノルマ達成不可能じゃない?
雛乃の考えが顔に出ていたのか、少年が言う。

「一緒の世界に行くか、離れ離れの異なる世界へ転生するか。
 一応、選択肢はありますよ?」
「だからそれ、無いだろっての…。」

譲が低く呟いて、雛乃の手を握った。

「行くよ。
 俺がその世界を最速で救って、雛乃と送りたかった人生を送る。」

ちょっと傲慢なセリフだけど、雛乃にとってはこれ以上ない言葉だった。
金髪少年も圧倒されたのかわからないが、少しあれ?と驚いた後、無表情になり押し黙っている。

「私も行く!ゆずとならどこへでも!」

宣言した瞬間、目の前に眩しい光が射して、古い映画やゲームによくあったような典型的なワープホールが出現して、二人は同時に足を踏み入れた。
ワープホールは二人を飲み込むとすぐに消えて、金髪少年だけを残し、また真っ白な世界になった。
2人が消えた位置ももう分からないが、おそらく消えた位置だろう虚空を見つめながら、金髪少年は呟いた。

「転生したら青木 雛乃は男になるって、
 説明した方が良かったのかな…。」
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