貧乏教会の懺悔室

１話

1

「私、どうしても殴られないと愛を感じられないんです。
　どうにかして神様が、泣き叫ぼうと暴力を振るい続けてくれる男性と
　巡り合わせてくれないものかと…。」

「神は暴力を好みませんから、
　あなたに健康で綺麗な体でいて欲しいと思ってるんだと思いますよ？」

と言っても彼女の腕の包帯からして、自傷行為に走っている可能性が高い。
結局綺麗な状態になどならないんだろうな。
何を言っても解決しそうにないので、

「毎日用事のないときは通りに立っていてください。
　きっと神からのお導きがあることでしょう。」

と述べて納得させる。
とりあえず人目につく場所にいれば自傷行為はできまい。
しないことが習慣になっていけば彼女の病気も治るかもしれない。
懺悔室から出た彼女の背中が見えなくなった頃に、溜まりきっていた溜息をつく。

「わざわざクイーンズ通りからこんな山奥まで来てくださったのは嬉しいんですが、
　そんなDV男見たことも聞いたこともないですよ。」

「彼女にそう言ってやればよかったんじゃないですか？」

面倒そうに吸血鬼のジャパニーズシスター、弥生が言う。
生粋の吸血鬼だけど信心深いし、陽の光に当たっても焼けたり溶けたりしないし、
純銀は直接触ったりできないけど、十字架などは問題なく触れるので日本でスカウトしてシスターとして働いてもらっている。
そのくらいこの街は人手不足。