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激変する日常

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「白花先生、ガキとかはちょっと…、」

小声で制止する担任の言葉も空しく、王妃様の外見をしている女性は教室の真ん中へヒールを鳴らしながら突き進む。
そう、私の目の前に。

「今のところ無事そうで良かったわ!
 あ、もちろんアンタも!」

顔はこちらを向いたままでビシッと指差され、国王も困ったような微妙な表情だ。
当然、意味が伝わらない担任は突然生徒に向かって行った教育実習生に相当戸惑っている。

「えっと、林さんと白峰くんは、白花さんのお知り合い…?」
「…俺の『初恋の人』です。」

国王様は棒読みで答えた。
嘘が嫌いな性格だからか、表情は初恋の女性に再会したというよりは苦手な虫でも見た様な形相だ。

「マジか白峰…けどこれなら納得できるな…、
 性格悪く言ってたけど、面食いだったわけだ…。」
「こんだけ可愛けりゃ…うん。」

ほうぼうから納得の呟きが漏れ聞こえてくる。
田辺さんも敗北感に満ちた様子で王妃様を見つめている。
勝負にならない事がわからない女性はいないだろう。

「私は昔お会いしたことがあったので。」

追従して答えて、絶句している担任を含めたクラス全員を納得させる。
嘘は言ってない。

「あー、だから林さんに…」
「林さんも知ってる人だったんだぁ。」

担任が咳ばらいをして仕切り直す。

「白花さん、生徒に偏った対応をしないように、公私混同は控えて下さい。」

注意した後に、続けて担任が「以前会った時はここまでじゃなかったのに…」と呆れたような声で呟くのが聞こえて、国王は転生しても相変わらずなのだな、と吹き出した。
担任が黒板に「白花 早百合しらはな さゆり」と王妃様の見た目にぴったりな優雅な名前を書く。
が、その手が止まらず、もう一つ名前を書き始めた。

「今日は転入生もいるので、手短にしないといけないので…」

担任の言葉に、え?と入り口を見やって固まる。
瞳は黒いけど、その顔は記憶にあった。
この人生での記憶ではなく、今この瞬間に蘇った前世の記憶にだ。

間違いなく、今教室に入ってきた彼が、ヘリクセンだ。

何で!と立ち上がりたいほどの疑問に担任が説明してくれる。

「ご両親の急な転勤でこちらに転入してきた黒崎 竜生くろさき りゅうきくんです。」

違う名前…親戚では無かった。その点に関しては取り越し苦労だったようだ。
だとしたら宗一郎くんには悪い事をした。
けどそこを悔いる余裕は無かった。
結果的に危険を回避できていないどころか、今目の前にまで天敵が来ているからだ。

「宜しくお願いします。」

教室の外にいた時から、中に入って来てからも、ずっと目がこちらを向いている。
漆黒の髪に黒曜石みたいな瞳、白い肌は陶磁の様にきめ細やか。
アジア圏では珍しくもない黒髪なのに、正統派イケメンって感じで王妃に負けず劣らずの華やかさを纏っている。
その立ち姿に女子達がうっとりと頬を染めているが、その視線の動かなさに恐怖しか感じなかった。
人の姿で見たことが無いから、国王様も王妃様も気付いていない。

「今日の日直は…田辺さんね。案内を頼めるかしら。」
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