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覚醒は突然に
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「私の問題に巻き込んでしまってすまない。」
「いえ、元はと言えば私が自転車で突っ込んだからで…、」
「そういえば、何故ブレーキが効かなかった…?」
言われて私もハッとする。
今朝まで異音がすることも、効きが悪かったという事もなかった。
「そういえば、何で急に…。」
2人で部屋を出て、自転車の様子を見に行く。
「ワイヤーが切れてるな…。」
「ワイヤー?」
「現世でバイクの修理をやった事があるから、ワイヤーを買ってくれば直せる。」
100均でも売ってるけど自転車屋の方が…と現代的な内容を話す様子を見ていると普通の高校生だよな、と改めて思った。
「国王様、喋り方には気を付けて下さいね、明日から。」
私のせいだけど、と思いつつ忠告する。
「わかっておる。普通の高校生として生活するさ。」
まぁ、話し方や態度以外に問題点は無いし大丈夫か。
「明日の登校もあるから、早速買いに行こう。」
「あ、はい!」
後をついていきながら思い出したことがあって、隼人の腕をひく。
「そういえば、先月駅前に新しい自転車屋さんが出来たんですよ!」
「ん、そうか。では案内してくれ。」
「白峰君のお家はこの辺りじゃないんですね。」
反応で何となく察すると、隼人が頷いた。
「各駅停車で3駅分離れておるな。」
「結構遠いんだ…。」
並んで歩いていると、後方から自転車が向かってくる音がして、何気ない様子で隼人が肩を抱き寄せる。
当たり前に、私の心臓は鼓動を速めた。
が、案の定、隼人の顔は前を向いたままで何ともなさげ。
「こういうの、普通によくやっちゃうんですか…国王様。」
「ああ…高校生らしくなかったか、以後気を付けるようにしよう。」
指摘しても特別動じる様子もなく答える隼人の様子に、前世では実は国王と神官は両片思いで…なんていう期待を持つのはやめておこうと思った。
新しい自転車屋さんは自宅から結構離れていたのか、体感時間がいやに長かった。
隼人の見た目をした国王の所作や発言に一喜一憂したくなくて、なるべく視線を逸らしていたせいかもしれない。
「いらっしゃいませー!」
店内に入ると威勢のいい挨拶が耳に飛び込んできた。
「って、あーーーーっ!」
「フィニアンか!?」
隼人を指差して叫ぶ女性店員と、隼人の前世の名前呼びで、まさかのいきなり妻発見展開か!?と困惑しながら予想する。
女性店員は茶髪ではあるが純和風な顔立ちで、フィニアンなんて名前ではなさそうだ。
「国王様じゃないですか!お久しぶりですー!」
「前世って久しぶりとかいうレベルじゃないんだけど!?」
「フィニアン、そなた前世を覚えておるのか…?」
それぞれにワッと話し出して耳が拾う音に迷うほどだが、フィニアンと呼ばれている胸に「安達」のネームプレートを付けた女性はちゃんと聞き分けて豪快に笑いながら言った。
「もうバッチバチに覚えてますよ!
つって、今日の15時過ぎまでは完全に忘れてたんですけどね!」
「15時…」
事故のあった時間だ。
「急に思い出したのか?」
「はい!いきなり一気に思い出しました!」
国王の問いにフィニアンが即答する。
妻というわけではなさそうな感じの流れに、私はおずおずと質問してみる。
「えっと、国王様…この方は…?」
「あれ?神官様は思い出してない感じ?」
そうだ。と答えながら安達さんにその手を向けて国王が紹介する。
「妻の幼少期からのお付きの者だ。」
「赤ん坊の時からお世話させて頂いておりました!」
なんとなく田舎者感が出ているのは現世のキャラか前世に引っ張られているのか…
けど、一つ分かった事がある。
多分前世の関係者は国王様が思い出した瞬間に一斉に前世の記憶を思い出している。
何故か私を除いて…。
「いえ、元はと言えば私が自転車で突っ込んだからで…、」
「そういえば、何故ブレーキが効かなかった…?」
言われて私もハッとする。
今朝まで異音がすることも、効きが悪かったという事もなかった。
「そういえば、何で急に…。」
2人で部屋を出て、自転車の様子を見に行く。
「ワイヤーが切れてるな…。」
「ワイヤー?」
「現世でバイクの修理をやった事があるから、ワイヤーを買ってくれば直せる。」
100均でも売ってるけど自転車屋の方が…と現代的な内容を話す様子を見ていると普通の高校生だよな、と改めて思った。
「国王様、喋り方には気を付けて下さいね、明日から。」
私のせいだけど、と思いつつ忠告する。
「わかっておる。普通の高校生として生活するさ。」
まぁ、話し方や態度以外に問題点は無いし大丈夫か。
「明日の登校もあるから、早速買いに行こう。」
「あ、はい!」
後をついていきながら思い出したことがあって、隼人の腕をひく。
「そういえば、先月駅前に新しい自転車屋さんが出来たんですよ!」
「ん、そうか。では案内してくれ。」
「白峰君のお家はこの辺りじゃないんですね。」
反応で何となく察すると、隼人が頷いた。
「各駅停車で3駅分離れておるな。」
「結構遠いんだ…。」
並んで歩いていると、後方から自転車が向かってくる音がして、何気ない様子で隼人が肩を抱き寄せる。
当たり前に、私の心臓は鼓動を速めた。
が、案の定、隼人の顔は前を向いたままで何ともなさげ。
「こういうの、普通によくやっちゃうんですか…国王様。」
「ああ…高校生らしくなかったか、以後気を付けるようにしよう。」
指摘しても特別動じる様子もなく答える隼人の様子に、前世では実は国王と神官は両片思いで…なんていう期待を持つのはやめておこうと思った。
新しい自転車屋さんは自宅から結構離れていたのか、体感時間がいやに長かった。
隼人の見た目をした国王の所作や発言に一喜一憂したくなくて、なるべく視線を逸らしていたせいかもしれない。
「いらっしゃいませー!」
店内に入ると威勢のいい挨拶が耳に飛び込んできた。
「って、あーーーーっ!」
「フィニアンか!?」
隼人を指差して叫ぶ女性店員と、隼人の前世の名前呼びで、まさかのいきなり妻発見展開か!?と困惑しながら予想する。
女性店員は茶髪ではあるが純和風な顔立ちで、フィニアンなんて名前ではなさそうだ。
「国王様じゃないですか!お久しぶりですー!」
「前世って久しぶりとかいうレベルじゃないんだけど!?」
「フィニアン、そなた前世を覚えておるのか…?」
それぞれにワッと話し出して耳が拾う音に迷うほどだが、フィニアンと呼ばれている胸に「安達」のネームプレートを付けた女性はちゃんと聞き分けて豪快に笑いながら言った。
「もうバッチバチに覚えてますよ!
つって、今日の15時過ぎまでは完全に忘れてたんですけどね!」
「15時…」
事故のあった時間だ。
「急に思い出したのか?」
「はい!いきなり一気に思い出しました!」
国王の問いにフィニアンが即答する。
妻というわけではなさそうな感じの流れに、私はおずおずと質問してみる。
「えっと、国王様…この方は…?」
「あれ?神官様は思い出してない感じ?」
そうだ。と答えながら安達さんにその手を向けて国王が紹介する。
「妻の幼少期からのお付きの者だ。」
「赤ん坊の時からお世話させて頂いておりました!」
なんとなく田舎者感が出ているのは現世のキャラか前世に引っ張られているのか…
けど、一つ分かった事がある。
多分前世の関係者は国王様が思い出した瞬間に一斉に前世の記憶を思い出している。
何故か私を除いて…。
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