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身の上の設定
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私達は網元の馬車に乗せてもらって、村からかなり外れた一件の館に辿り着く。
「ここだ」
「ここですか?『一角竜?』」
随分と古いわ。看板も何とか読めるってレベルよ。
古びた建物は何か出そうだけどここまで来たら引き返せないわよね。
「こっちに来てくれ。女将さん、客を連れて来たぞ!」
網元は私達に中に入る様に促すと、入口のドアを開けて中に向かって大声を出した。
「そんな大声出さなくたって聞こえているさ」
文句を言いながら姿を現したのは建物に負けない位の年季に見える御婦人ね。女将さんって呼ばれているみたい。
出て来るなり私達をジロジロ見ると首を傾げながら聞いてきた。
「何だい、若い娘の2人連れかい?」
「ええ。私はナンシーと申します。私達は冒険者として旅をしていまして、先程ようやく魔の大樹海から抜け出して来ました。今晩泊めて頂きたいのですが、お部屋は空いていますでしょうか?」
「「えっ!」」
ナンシーの言葉を聞いて網元も女将さんも驚いて固まってしまったわ!
「あっ、あんた達、女2人で魔の大樹海を抜けて来たって?」
それってやっぱりは普通ではないわよね?
何とか誤魔化さなきゃ。
「魔の大樹海と言ってもごく浅い所でしたから」
慌てて私がフォローするけどこれで誤魔化せたかしら?
本当はかなり深い所を通っててきたけどそれは内緒ね。
「そうかい。それは大変だったね。部屋なら空いているから1人1室でも2人で1室でも好きにしておくれ」
「どうするナンシー?」
「それは勿論、お嬢様に何か有ってはいけません。ですので2名1室でお願いします」
「お嬢様? アンタ何処かのお嬢様なのかい?」
今度は網元が喰らい付いてきたわ。こっちも面倒だから誤魔化さなきゃ。
「こら、ウチのお客さんを詮索するんじゃないよ」
どう誤魔化そうか考えていると女将さんが助けてくれた。
「そいつは済まねえ。悪かったな。それじゃ俺はこれで」
網元は私達に謝ると直ぐに出て行った。悪い人じゃないのね。別にそこまで気にしてた訳じゃないから、こっちも気が引けるわ。
「やっと行ったね」
女将さんは網元を見送ると私達に向き直ってニヤリとした。
「それで、何処かの貴族か商家のお嬢様が護衛の女騎士を連れて家出したって所かい?」
何でそうなるのかしら?
どうもこの女将さんは客の身の上を推測する事がお好きらしいわ。
「お嬢様と言っても私は30歳ですよ!」
さぁどう? どう推測する?
「30歳? 見えないね。20歳前に見えるよ!」
当たってる! 流石はこの年齢まで客商売をやってないわね。
「私はどんな身の上だと思います?」
「そうだね、やっぱり何処かの貴族か商家のお嬢様なんだけど、只のお嬢様じゃないんだ。その歳だ、アンタ出戻りじゃないのかい?」
「私が出戻り?」
王太子に婚約破棄された侯爵令嬢だから、ある意味当たってるかも。
「出戻りで家には居辛いから使用人を1人連出して旅に出た。冒険者っていうのは旅に出る口実だね。使用人に取って主人の娘は自分よりも年上だろうと、お嬢様だからね」
うん、この設定は頂こう!
「ここだ」
「ここですか?『一角竜?』」
随分と古いわ。看板も何とか読めるってレベルよ。
古びた建物は何か出そうだけどここまで来たら引き返せないわよね。
「こっちに来てくれ。女将さん、客を連れて来たぞ!」
網元は私達に中に入る様に促すと、入口のドアを開けて中に向かって大声を出した。
「そんな大声出さなくたって聞こえているさ」
文句を言いながら姿を現したのは建物に負けない位の年季に見える御婦人ね。女将さんって呼ばれているみたい。
出て来るなり私達をジロジロ見ると首を傾げながら聞いてきた。
「何だい、若い娘の2人連れかい?」
「ええ。私はナンシーと申します。私達は冒険者として旅をしていまして、先程ようやく魔の大樹海から抜け出して来ました。今晩泊めて頂きたいのですが、お部屋は空いていますでしょうか?」
「「えっ!」」
ナンシーの言葉を聞いて網元も女将さんも驚いて固まってしまったわ!
「あっ、あんた達、女2人で魔の大樹海を抜けて来たって?」
それってやっぱりは普通ではないわよね?
何とか誤魔化さなきゃ。
「魔の大樹海と言ってもごく浅い所でしたから」
慌てて私がフォローするけどこれで誤魔化せたかしら?
本当はかなり深い所を通っててきたけどそれは内緒ね。
「そうかい。それは大変だったね。部屋なら空いているから1人1室でも2人で1室でも好きにしておくれ」
「どうするナンシー?」
「それは勿論、お嬢様に何か有ってはいけません。ですので2名1室でお願いします」
「お嬢様? アンタ何処かのお嬢様なのかい?」
今度は網元が喰らい付いてきたわ。こっちも面倒だから誤魔化さなきゃ。
「こら、ウチのお客さんを詮索するんじゃないよ」
どう誤魔化そうか考えていると女将さんが助けてくれた。
「そいつは済まねえ。悪かったな。それじゃ俺はこれで」
網元は私達に謝ると直ぐに出て行った。悪い人じゃないのね。別にそこまで気にしてた訳じゃないから、こっちも気が引けるわ。
「やっと行ったね」
女将さんは網元を見送ると私達に向き直ってニヤリとした。
「それで、何処かの貴族か商家のお嬢様が護衛の女騎士を連れて家出したって所かい?」
何でそうなるのかしら?
どうもこの女将さんは客の身の上を推測する事がお好きらしいわ。
「お嬢様と言っても私は30歳ですよ!」
さぁどう? どう推測する?
「30歳? 見えないね。20歳前に見えるよ!」
当たってる! 流石はこの年齢まで客商売をやってないわね。
「私はどんな身の上だと思います?」
「そうだね、やっぱり何処かの貴族か商家のお嬢様なんだけど、只のお嬢様じゃないんだ。その歳だ、アンタ出戻りじゃないのかい?」
「私が出戻り?」
王太子に婚約破棄された侯爵令嬢だから、ある意味当たってるかも。
「出戻りで家には居辛いから使用人を1人連出して旅に出た。冒険者っていうのは旅に出る口実だね。使用人に取って主人の娘は自分よりも年上だろうと、お嬢様だからね」
うん、この設定は頂こう!
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