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屋台に居たのは?

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 大行列が出来る程、評判の屋台にオリバーと並ぶ。そして暫く待つとようやく俺達の番になる。

「兄さん達、何にするんだい?」

 屋台に立つのは見目麗しい女性だと聞いていたが実際には頑固そうな老人か。別に期待していた訳では無いが、噂とは当てにならない物だな。
 
「揚げたジャガイモと蒸したジャガイモか。評判の様だな?」

 これは見た事の無い料理だがこれが本当に行列が出来る程旨いのか?

「評判は知らねぇが味は間違いないぜ、まぁどうせ行列の男共の目的はナンシーなんだろうけどな」

 直感的と言うべきか、そのナンシーという者が何故か気になる。

「ナンシーとは噂になっている美女の事か?」

「噂になっているのかい? 俺はそんな噂は知らねぇが多分そうだな。お兄さんもナンシー狙いかい? 止めとくんだな、若女将にべったりで男に興味を示さねぇ。ほれ、それより何にするんだい?」

「そうだな、両方を1人前だけもらおうか」

 実際に旨いかどうかも判らない物をいきなり2人前も頼む事に気が引ける。

「まいど。お兄さん達はこの村の者じゃないね?」

 やはりヒュンダルンから来た俺達は違和感有るか。

「判るのか?」

「雰囲気って奴かな。お兄さんはこの村の者にしちゃ品が有るんだよな。まるで貴族の若様がお忍びで来ているみたいだな!」

 凄いな、ほぼ当たっている!

「実は俺達は妹を探してヒュンダルンから旅をして来たんだ。俺は妹のスカーレットを、こっちのオリバーもやはり妹のローザを探していたんたが一旦戻る事にしたんだ。念の為に聞いてみるが、2年前にヒュンダルンから来た18歳と23歳の女性を知らないか?」

「悪いが知らねぇな」

 予想通りだな。ヒュンダルンを出てからの足取りが全く掴めない。


「23歳って確かナンシーは当てはまるけど若女将は30歳だしな」

 前にもそんな話を聞いたな。確かこの近くの温泉宿だった。

「ところで若女将って、温泉宿の事か?」

「おう。村外れに在る『一角竜』だ。今日は収穫祭だから大量に有るジャガイモを使って出店だ」

「へぇ、宿屋の出店でジャガイモか。変わっているな」

 ここでオリバーが口を挟んで来た。確かに変わっているから、つい言ってしまったのだろう。

「まあな。農家の坊主が毒蛇に噛まれたけど毒消しが無くてな、毒を消すために若女将が温泉を使ったんだよ。そのお礼に大量のジャガイモをもらったって訳だ」

「なに?」

 蛇の毒を温泉で消しただと?

「おい、そんな事が有る筈ないだろ。冗談言うならもっと気の利いたのにしてくれ」

 オリバーの言う通りだ。いくら温泉のお湯でもそんな効能は無いだろうし、有ったとしてもそんな直ぐには効かないだろう。湯治はじっくりと治す物だ。

「いやいや、それが出来るから『一角竜ウチ』のお湯は何にでも効くって言えるんだ。この山の様なジャガイモが証拠だぜ、兄さん達」

 ニヤリと余裕有りげなその表情に、彼の言う事が真実だと悟った。

「その宿、空きは有るのか?」

「若女将が留守番してご新規様を待っているぜ」

 土産話になるかも、位の気持ちで今夜はその宿に泊まる事にした。
 

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