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鑑定眼は?
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雇うと言ってはみたけれど、この姉妹の実際の鑑定眼とか事務処理能力とかは未知数なのよね。
うーん、冷静に考えたら早まったかな。
「それじゃ2人の鑑定眼がどんな物なのか見せてもらうわね。でも誤解しないでね。雇う事に変わりはないから」
えーい、聖女に二言は無いのよ!
「ええ、もちろん!」
姉妹揃って自信満々ね。得意分野だからかしら?
「ボブソン、あなたの短剣を見させて」
「承知しました。取って参りますので少々お待ちを」
ボブソンは補助魔法の使い手だけど、短剣で直接魔物を仕留める事も有る。
そのボブソンの短剣を鑑定させて、適正価格を言えるかのテストね。
雇うからには、実際にどの程度出来るのかは把握しとかなくちゃ。
「お待たせしました。こちらが私が愛用している短剣てす。どうぞご覧になって下さい」
ボブソンの出した短剣は使い込まれているけど手入れは行き届いている。凝った装飾が特徴的な鞘と、柄に埋め込めれている赤い魔石が目を引く逸品。
はたして幾らになるかしら?
「それでは鑑定させて頂きます」
シンシアはボブソンの短剣を手に取ると、初めて見せる真剣な表情で短剣を鑑定している。尤も付き合いはまだ2日だけど。
シンシアは鞘の装飾、柄の魔石の状態を眉間にしわを寄せて注視する。次に鞘から抜いて刀身を見るとフムフムと小刻みに頷いている。
なんかそれっぽいわ!
なんて思っていると鑑定が終わったみたい。シンシアがこっちに向き直ったわ。鑑定結果が出たのね!
「ボブソンさん、残念ながらこちらの短剣ではお金をお貸し出来ません」
申し訳なさそうに言っているけど、貸すってここは別に質屋じゃないのよ!
「これではお金にならないの?」
「そうですね、どうしてもと仰るのでしたら、400サートゥルでしょうか。この短剣に500を出す質屋は居ないと思います」
400サートゥルって子供のお小遣い並みじゃない!
私が居酒屋の娘だった頃、酔いが回っていい感じにご機嫌になったお客さんから貰ったチップの方が高いわ。
「この短剣は私の愛用品です。この鑑定結果には納得いきませんね!」
穏やかなボブソンも流石に不機嫌になったわね。当たり前か。
「鑑定結果にご満足頂けない様ですので、ご説明致します」
これまでとは別人の様にシンシアの顔には自信が溢れてるわ。
「まず断っておきますけれど、この短剣が理想的な状態てしたら40万サートゥルお出しましょう」
だから質屋じゃないって!
「では何故、二束三文になってしまうのかをご説明致します」
「伺いしましょう」
ボブソンがどうにか自分を抑えている様だわ。よほど憤慨しているのね。
「先ずはこの鞘の装飾ですけれど、金の装飾が目を引きます。素人には!」
「何が違うの?」
素人呼ばわりされた私は聞いてみた。
「こちらは金でも何でもありません。銅に融点の低い他の金属を混ぜて、それっぽい色にしただけです。それに彫物も細部は雑で芸術的価値はゼロです。これで40万から20万になりました」
「芸術的価値はゼロ?」
ボブソンは流石にショックを受けているみたいね。
「次に柄の方ですけど、残念です。ボブソンさん」
「どうしたの? 魔石が有るでしょ。これなら価値が有る筈よね?」
「この魔石、偽物です」
「えっ!」
これって魔石じゃないの?
「普通の赤い石を加工してそれっぽく磨いただけで、魔力はゼロです。柄に入れても飾りか重りにしかなりませんね」
散々な言われようね。
「これで20万から6万になりました。次に刃についてですが」
「まさか、そんなにナマクラなの?」
「ナマクラなんて物じゃありません。ボブソンさん、この短剣で魔物を始末した事なんて、本当は無いんじゃないですか?」
「なっ!」
「どういう事なの?」
「この刃、焼入れしていません。これじゃ強度が出ないし切れませんよ。とても使った事が有るなんて思えませんね。そういう訳で剣としての体を成してないので、評価額はゼロです。400サートゥルと言うのは鑑定への参加料ですね。本来でしたらゴミを引き取る訳ですから、お金を頂きたいくらいです!」
シンシアったら鑑定になったらキャラが変わって、随分と辛辣になったわね!
「お見事です。シンシアさん」
愛用品をボロクソに言われたボブソンが、パチパチと乾いた拍手をしてシンシアを称えているわ。
でもその表情は何か嬉しそう!
「実はそれは敵対する相手にいざという時にくれてやる為のスペアなんですよ。本物はこちらです。鑑定してみますか?」
「ちょっとボブソン、どういう事よ?」
スペアなんて聞いてないわ!
「魔物ではなく人間を相手にした戦いで相手を油断させる為に、「こっちは武器を捨てた」と思わせる為に持ち歩いているスペアなんですよ。油断した所を本物で一刺しですよ、若女将!」
セコい手を使うわね!
ちなみに本物の鑑定結果は20万。
「ボブソンさん、貴方の手入れはこの短剣を作った職人に失礼ですよ!」
手入れが悪いと怒られてボブソンは小さくなっていた。
うーん、冷静に考えたら早まったかな。
「それじゃ2人の鑑定眼がどんな物なのか見せてもらうわね。でも誤解しないでね。雇う事に変わりはないから」
えーい、聖女に二言は無いのよ!
「ええ、もちろん!」
姉妹揃って自信満々ね。得意分野だからかしら?
「ボブソン、あなたの短剣を見させて」
「承知しました。取って参りますので少々お待ちを」
ボブソンは補助魔法の使い手だけど、短剣で直接魔物を仕留める事も有る。
そのボブソンの短剣を鑑定させて、適正価格を言えるかのテストね。
雇うからには、実際にどの程度出来るのかは把握しとかなくちゃ。
「お待たせしました。こちらが私が愛用している短剣てす。どうぞご覧になって下さい」
ボブソンの出した短剣は使い込まれているけど手入れは行き届いている。凝った装飾が特徴的な鞘と、柄に埋め込めれている赤い魔石が目を引く逸品。
はたして幾らになるかしら?
「それでは鑑定させて頂きます」
シンシアはボブソンの短剣を手に取ると、初めて見せる真剣な表情で短剣を鑑定している。尤も付き合いはまだ2日だけど。
シンシアは鞘の装飾、柄の魔石の状態を眉間にしわを寄せて注視する。次に鞘から抜いて刀身を見るとフムフムと小刻みに頷いている。
なんかそれっぽいわ!
なんて思っていると鑑定が終わったみたい。シンシアがこっちに向き直ったわ。鑑定結果が出たのね!
「ボブソンさん、残念ながらこちらの短剣ではお金をお貸し出来ません」
申し訳なさそうに言っているけど、貸すってここは別に質屋じゃないのよ!
「これではお金にならないの?」
「そうですね、どうしてもと仰るのでしたら、400サートゥルでしょうか。この短剣に500を出す質屋は居ないと思います」
400サートゥルって子供のお小遣い並みじゃない!
私が居酒屋の娘だった頃、酔いが回っていい感じにご機嫌になったお客さんから貰ったチップの方が高いわ。
「この短剣は私の愛用品です。この鑑定結果には納得いきませんね!」
穏やかなボブソンも流石に不機嫌になったわね。当たり前か。
「鑑定結果にご満足頂けない様ですので、ご説明致します」
これまでとは別人の様にシンシアの顔には自信が溢れてるわ。
「まず断っておきますけれど、この短剣が理想的な状態てしたら40万サートゥルお出しましょう」
だから質屋じゃないって!
「では何故、二束三文になってしまうのかをご説明致します」
「伺いしましょう」
ボブソンがどうにか自分を抑えている様だわ。よほど憤慨しているのね。
「先ずはこの鞘の装飾ですけれど、金の装飾が目を引きます。素人には!」
「何が違うの?」
素人呼ばわりされた私は聞いてみた。
「こちらは金でも何でもありません。銅に融点の低い他の金属を混ぜて、それっぽい色にしただけです。それに彫物も細部は雑で芸術的価値はゼロです。これで40万から20万になりました」
「芸術的価値はゼロ?」
ボブソンは流石にショックを受けているみたいね。
「次に柄の方ですけど、残念です。ボブソンさん」
「どうしたの? 魔石が有るでしょ。これなら価値が有る筈よね?」
「この魔石、偽物です」
「えっ!」
これって魔石じゃないの?
「普通の赤い石を加工してそれっぽく磨いただけで、魔力はゼロです。柄に入れても飾りか重りにしかなりませんね」
散々な言われようね。
「これで20万から6万になりました。次に刃についてですが」
「まさか、そんなにナマクラなの?」
「ナマクラなんて物じゃありません。ボブソンさん、この短剣で魔物を始末した事なんて、本当は無いんじゃないですか?」
「なっ!」
「どういう事なの?」
「この刃、焼入れしていません。これじゃ強度が出ないし切れませんよ。とても使った事が有るなんて思えませんね。そういう訳で剣としての体を成してないので、評価額はゼロです。400サートゥルと言うのは鑑定への参加料ですね。本来でしたらゴミを引き取る訳ですから、お金を頂きたいくらいです!」
シンシアったら鑑定になったらキャラが変わって、随分と辛辣になったわね!
「お見事です。シンシアさん」
愛用品をボロクソに言われたボブソンが、パチパチと乾いた拍手をしてシンシアを称えているわ。
でもその表情は何か嬉しそう!
「実はそれは敵対する相手にいざという時にくれてやる為のスペアなんですよ。本物はこちらです。鑑定してみますか?」
「ちょっとボブソン、どういう事よ?」
スペアなんて聞いてないわ!
「魔物ではなく人間を相手にした戦いで相手を油断させる為に、「こっちは武器を捨てた」と思わせる為に持ち歩いているスペアなんですよ。油断した所を本物で一刺しですよ、若女将!」
セコい手を使うわね!
ちなみに本物の鑑定結果は20万。
「ボブソンさん、貴方の手入れはこの短剣を作った職人に失礼ですよ!」
手入れが悪いと怒られてボブソンは小さくなっていた。
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