ホムンクルス

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「ちーちゃんと同じ土俵に立てないのはわかっているわ。わかっているけど私は、変われそうにないの」
　か細い両手で自身を抱く遥から目をそらせない。
「自分が恋愛対象だって前に話したでしょう？　それはこの先もきっと変わらない。またそっくりな人が現れない限り、ずっとこのままなの」
　未知の領域に下手に踏み込めず、ただ頷いた。
「だけどそんな奇跡が二度も起きるわけがないわ。一人で生きる寂しさを、叶には理解してほしいの」
　遥の潤むまなざしから逃れられない。まるで、遥の魅力に酔わされたように思考がまとまらない。
「もしも理解してくれるのなら、最後に一つだけお願いがあるの」
「お願い？」
「それっきり、叶のことはすっぱり諦めるわ。ちーちゃんにも関わらない。二人のことも心の底からお祝いできると思うの」
　上目遣いにこちらを見た遥。なぜか心の奥がむず痒い。何なの、この気持ちは。気のせいか体温が上がっているような気がする。
「一生消えない思い出が欲しいの」
　生唾を飲み込む。一生消えない思い出なんて想像がつかない。考えようとしても思考がぶれる。体の奥が熱くなって集中できない。はっきりと答えをもらおうと口を開こうとした矢先、遥が胸に飛び込んでぽつりとこぼした。
「私を抱いて」
　その一言は胸に、耳に、頭に、心にあり続けた。だけどその意味を考えられない。頭を口を動かしても熱に侵されたようにまひしている。