王道学園は実に面白い

白鳩 唯斗

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第1章

最高級いちご

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「高級いちご······」

 食堂の扉から聞こえた声に、そちらに顔を向けると、いちごを持った風紀委員長さんがいた。

 あれ、なんで風紀委員長さんが居るんだろう? それに、あのいちごは······僕が日本に来たら食べようと思ってた、一粒数万円の数量限定最高級いちごだ。

 僕の名前呼んでたし、僕にくれるのかな?

 ケーキの件など忘れ、僕はすっかり風紀委員長さんが持つ最高級いちごに夢中になっていた。

 しばらくいちごをジーっと見つめていると、風紀委員長さんが近づいてくる。

「とりあえず落ち着け。これは理事長からだ」

 風紀委員長さんからいちごを渡される。

 楓鵺さんから? あ、そういえば日本に来る前に食べたいなって話してたんだった。ふふっ、後で楓鵺さんにお礼しないとね。

「風紀委員長さん、ありがとうございます。奏叶くん聖哉くん。見てこれ、最高級いちごだよ。凄くない?」

 いちごを持って、笑顔でバッと振り返ると、何故かみんな死にそうな顔をしていた。

「あれ? みんなどうしたの?」

 さっきまで元気に騒いでたのに、何かあったのかな?

 笑顔のまま首を傾げていると、風紀委員長さんに頬をつつかれる。

「お前のその殺気のせいだ」

「あ、······なるほどね」

 どうやら無意識のうちに殺気を出していたらしい。風紀委員長さんの指摘に殺気を抑えてみると、奏叶くんと聖哉くんがふらふらと立ち上がる。

「は、はぁ~、し、死ぬかと思ったよぉ~」

「琉翔······怖、かた···」

「うん、ごめんね?」

 涙目で上目遣いをしてみると、食堂のみんなが顔を赤くした。

「うっ、それは反則だよぉ·······」

「琉翔······ずるい」

 ふふふ、情報屋として色仕掛けは必須だからね。利用出来るものは利用しないと。

 僕はニコリと微笑みながら、赤髪の男に押し潰されたケーキの傍にしゃがみこむ。

「ケーキ、ダメになっちゃったね」

 せっかく楽しみにしてたのになぁ。まぁ、楓鵺さんから貰ったいちごがあるから良いんだけど、勿体ないな······。

 少しイライラしたので、笑顔で赤髪の男をツンツンしてみる。

「おい、そこの生徒会会長は何をしているんだ」

 はて? 生徒会会長ってこの子のことかな?

「えっと、この子なら吹き飛ばされて来ましたよ」

「はぁ?」

 僕の言葉に、風紀委員長さんが訝しげな表情をする。

 うーん、僕もケーキに夢中だったからよく分からないんだよね。人が飛んでくることなんて良くあることだし、爆弾じゃないだけマシだと思うけどなぁ。

 僕は笑顔で、あのもじゃもじゃ君が原因だと思いますよ、っと指をさした。

「では、僕はいちごを食べたいので帰りますね」

「いや、ちょっと待──」

 風紀委員長さんの声を無視して、僕は食堂を後にした。





 ──はぁ、頭痛い。

 食堂の扉を閉めて、僕はそのままもたれかかった。
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