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一章
1 禁忌を犯した少年
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気がついたらいつの間にか玉座に座っていた。光が遮断され薄暗く、人の気配も無い空間だった。目の前を見れば自身が高い位置に居ることが分かる。少し視線を落とせば大きく長い階段が続いていた。
「まるでボスが待ち構えてる部屋みたい」
正面にある大きな扉。そこから入って来る人物を見下ろす為に存在しているかのような位置に玉座はあった。頬杖をついて足を組めば完璧にラスボスだ。ゲーム好きな僕としてはやらずには居れなかった。
「うん、ここ何処?」
冷静に考えたらラスボス気取ってる場合じゃなかった。ほんとにここ何処?
僕は普通に高校に通って、帰ったら最近ハマっていたゲームをして、クリアしたから外に向かおうとした時に階段を踏み外して。あれ、そこからの記憶が無いや。もしかして僕は死んだ? そこまで階段は長くなかったはずなんだけど、打ち所が悪かったか。ここが夢の世界という可能性も考えてみたけど、痛みは感じるしその可能性は低いようだ。とりあえず悩んでも仕方が無いので散策しようと立ち上がってみると、大きな違和感を覚えた。
「なんか目線低くない?」
身長は170以上あったはずなのに今では中学生くらいの目線の高さだ。心做しか声も幼いような気がする。まさかと思って手を見てみると予想通り小さかった。これはもしや異世界転生なのでは。自分の姿が気になると鏡を探し回れば、そこに映った姿に目を見開いた。
「み、ミカエラ?!」
そこに映ったのは銀髪の少年。僕が前世でプレイしていたMMORPGのラスボスキャラ。ミカエラ・ディ・エンドだった。間違いない。右目が金色で左目が赤色。ゲームで見た時より少し幼いが、この特徴的な容姿を忘れるわけが無い。
「うわぁ·······これゲーム転生ってやつ? 死んだら戻れる系のやつかな?」
死んだ記憶は無いし、あの高さの階段から落ちて死ぬ確率低いと思うけどなぁ。やっぱり死ねば戻れるか? 試しに鏡台の上にあったガラス片で手首を切ってみる。うん、普通に痛いし血がいっぱい。ポタポタと赤い液体が落ちるのを眺めていると、徐々に傷が塞がっていった。
「あぁ、やっぱりダメか」
ゲームでミカエラは不死身設定だった。主人公は世界でも珍しい光魔法の使い手で、魂に直接干渉できるから唯一不死身のミカエラを倒せるって話。
主人公は貴族の生まれだけど私生児で、周囲から酷い扱いを受けていた。屋敷に居ても心休まる時が無くて、唯一全てを忘れられる場所が宿星の泉という所だった。宿星の泉の底には聖剣が眠っており、たまたま足を滑らせた主人公がそれを抜いてしまう所からはじまる。聖剣を抜いた主人公の頭には声が聞こえて、世界の危機が迫っているから魔王倒しちゃって~的な事を言う。同時に聖剣が大きく光を放ち主人公が光魔法を覚醒する。主人公は虐げられて来たこんな自分でもみんなの為に役に立てるんだ·······。と、魔王討伐の旅に出た。
まぁ、そっからは色々あって魔王を倒すんだけど、実は魔王はただのお飾りで裏で手を引いていたラスボスが居た。それがミカエラ。ミカエラの目的は分からないけど、ストーリーから察するに存在しているだけで魔物を生み出してしまう存在って所かな。伏線とかが多すぎて色々な考察が出ていたけど、ミカエラは邪神って話もあったな。結局ミカエラと戦う寸前で『ストーリー追加を待ってください』ってなって、どうなったかは分からないけど。
「はぁ·······自殺できないなら主人公に殺して貰うしか無いか」
僕はあっちの世界に残してきた物が多すぎる。僕は株で儲けていたからお金持ちで、身寄りのない子供達や金銭的に苦しい人達を支援していた。早く帰らないと困る人が多い。偽善なのは分かっているけれど、辛い思いをする人が減るのはとても素晴らしいことだと思う。僕が存在している限りこの世界は平和にはならない。だからお互いのため主人公に殺されたいんだけど·······。魔王戦であれだけ手こずったのに、ラスボスであるミカエラに勝てるとは思えないんだよね。噂ではあのゲーム、バッドエンドだって話もあったし。
「ん~。ま、主人公に会ってみるか」
確か主人公はいつも宿星の泉に居るはず。あそこは設定上、恐ろしい悪魔が住んでいるとか噂されているから誰も近づかないらしい。だから両親や使用人達からの虐めを受けない、主人公の唯一の逃げ道だとか。外に出てないからここが何処なのかは分からないけれど、検討はついている。この玉座、ストーリー追加予定って書かれた背景画像になっていたから。マップは頭の中に入っているし、宿星の泉には簡単に行けそうだ。
どうやって移動しようか考えていたら、六つの白と黒の翼が生えた。まるで堕天使と天使が混ざったような翼が。翼に少し意識を集中させれば、空を飛ぶことが出来た。どうやら僕が今まで居たのは魔王城から少し離れた位置にある、【邪雲の聖天】と呼ばれるラスボスの居る神殿だったらしい。神殿の付近は黒い雲が覆っており、まるで外部からの侵入を拒絶するかのように竜巻が発生していた。まさにラスボス戦に相応しい舞台だ。上位プレイヤーだった僕は大興奮。ネタバレを食らった点は少し残念だけれど、いつ追加されるか分からないストーリーを待つよりかは全然嬉しい。僕は記憶を頼りに、宿星の泉へ向かった。
「まるでボスが待ち構えてる部屋みたい」
正面にある大きな扉。そこから入って来る人物を見下ろす為に存在しているかのような位置に玉座はあった。頬杖をついて足を組めば完璧にラスボスだ。ゲーム好きな僕としてはやらずには居れなかった。
「うん、ここ何処?」
冷静に考えたらラスボス気取ってる場合じゃなかった。ほんとにここ何処?
僕は普通に高校に通って、帰ったら最近ハマっていたゲームをして、クリアしたから外に向かおうとした時に階段を踏み外して。あれ、そこからの記憶が無いや。もしかして僕は死んだ? そこまで階段は長くなかったはずなんだけど、打ち所が悪かったか。ここが夢の世界という可能性も考えてみたけど、痛みは感じるしその可能性は低いようだ。とりあえず悩んでも仕方が無いので散策しようと立ち上がってみると、大きな違和感を覚えた。
「なんか目線低くない?」
身長は170以上あったはずなのに今では中学生くらいの目線の高さだ。心做しか声も幼いような気がする。まさかと思って手を見てみると予想通り小さかった。これはもしや異世界転生なのでは。自分の姿が気になると鏡を探し回れば、そこに映った姿に目を見開いた。
「み、ミカエラ?!」
そこに映ったのは銀髪の少年。僕が前世でプレイしていたMMORPGのラスボスキャラ。ミカエラ・ディ・エンドだった。間違いない。右目が金色で左目が赤色。ゲームで見た時より少し幼いが、この特徴的な容姿を忘れるわけが無い。
「うわぁ·······これゲーム転生ってやつ? 死んだら戻れる系のやつかな?」
死んだ記憶は無いし、あの高さの階段から落ちて死ぬ確率低いと思うけどなぁ。やっぱり死ねば戻れるか? 試しに鏡台の上にあったガラス片で手首を切ってみる。うん、普通に痛いし血がいっぱい。ポタポタと赤い液体が落ちるのを眺めていると、徐々に傷が塞がっていった。
「あぁ、やっぱりダメか」
ゲームでミカエラは不死身設定だった。主人公は世界でも珍しい光魔法の使い手で、魂に直接干渉できるから唯一不死身のミカエラを倒せるって話。
主人公は貴族の生まれだけど私生児で、周囲から酷い扱いを受けていた。屋敷に居ても心休まる時が無くて、唯一全てを忘れられる場所が宿星の泉という所だった。宿星の泉の底には聖剣が眠っており、たまたま足を滑らせた主人公がそれを抜いてしまう所からはじまる。聖剣を抜いた主人公の頭には声が聞こえて、世界の危機が迫っているから魔王倒しちゃって~的な事を言う。同時に聖剣が大きく光を放ち主人公が光魔法を覚醒する。主人公は虐げられて来たこんな自分でもみんなの為に役に立てるんだ·······。と、魔王討伐の旅に出た。
まぁ、そっからは色々あって魔王を倒すんだけど、実は魔王はただのお飾りで裏で手を引いていたラスボスが居た。それがミカエラ。ミカエラの目的は分からないけど、ストーリーから察するに存在しているだけで魔物を生み出してしまう存在って所かな。伏線とかが多すぎて色々な考察が出ていたけど、ミカエラは邪神って話もあったな。結局ミカエラと戦う寸前で『ストーリー追加を待ってください』ってなって、どうなったかは分からないけど。
「はぁ·······自殺できないなら主人公に殺して貰うしか無いか」
僕はあっちの世界に残してきた物が多すぎる。僕は株で儲けていたからお金持ちで、身寄りのない子供達や金銭的に苦しい人達を支援していた。早く帰らないと困る人が多い。偽善なのは分かっているけれど、辛い思いをする人が減るのはとても素晴らしいことだと思う。僕が存在している限りこの世界は平和にはならない。だからお互いのため主人公に殺されたいんだけど·······。魔王戦であれだけ手こずったのに、ラスボスであるミカエラに勝てるとは思えないんだよね。噂ではあのゲーム、バッドエンドだって話もあったし。
「ん~。ま、主人公に会ってみるか」
確か主人公はいつも宿星の泉に居るはず。あそこは設定上、恐ろしい悪魔が住んでいるとか噂されているから誰も近づかないらしい。だから両親や使用人達からの虐めを受けない、主人公の唯一の逃げ道だとか。外に出てないからここが何処なのかは分からないけれど、検討はついている。この玉座、ストーリー追加予定って書かれた背景画像になっていたから。マップは頭の中に入っているし、宿星の泉には簡単に行けそうだ。
どうやって移動しようか考えていたら、六つの白と黒の翼が生えた。まるで堕天使と天使が混ざったような翼が。翼に少し意識を集中させれば、空を飛ぶことが出来た。どうやら僕が今まで居たのは魔王城から少し離れた位置にある、【邪雲の聖天】と呼ばれるラスボスの居る神殿だったらしい。神殿の付近は黒い雲が覆っており、まるで外部からの侵入を拒絶するかのように竜巻が発生していた。まさにラスボス戦に相応しい舞台だ。上位プレイヤーだった僕は大興奮。ネタバレを食らった点は少し残念だけれど、いつ追加されるか分からないストーリーを待つよりかは全然嬉しい。僕は記憶を頼りに、宿星の泉へ向かった。
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