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二章

22話 一方通行

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 瑞希side

「はぁああああ······。相変わらず心臓に悪いな······」

 いつもツンツンしてるくせに急に子供っぽくなる時があるんだよな。動物好きなのは知ってたけどハグ出来るならもっと上げよう。

 仮眠室で眠るバカ共を確認して、俺も座って目を閉じる。

 神々廻心湊。あの神々廻財閥の次男でなんでも出来る超人。

 昔はよく立食パーティーとかで見かけていたけど、ある時期から姿を現さなくなった。

 俺が久しぶりに彼を見たのは入学式の日。あの日は、潤以外の役員が全員寝過ごしたおかげで生徒会挨拶に間に合うかギリギリだった。

 俺の趣味は植物を育てることと、動物を愛でること。特に庭園に住まう猫達がお気に入りだ。

 どれだけ時間が無くとも水やりと餌やりだけは絶対に忘れない。幸い水やりは済ませていたから急いでちゅ○るを持って庭園に向かった。

 ──あれ、誰か居るな。

 いつもは誰も居ない筈なのに、白猫と一緒に眠る白い髪の少年が居た。それはそれは整った容姿で、美形慣れしている俺でも見惚れる程の美男子だった。

 記憶にない辺り新入生だろう。起こそうか迷ったが、あまりにも気持ちよさそうに寝ていたから、こっそり猫に餌だけ上げて俺は帰ろうとした。

 そんな時。最後に少しだけ顔を拝見しようと、彼を覗き込んだその瞬間、バチッと目が合った。

 ──あ、目は銀色なんだな。死んでるけど。

 俺は現実離れしたその瞳から目が離せなかった。それから1分ほど経った時だった。

 眠そうに目を擦った彼が俺を見てこう言った。

「うわぁ·······お前の笑顔胡散臭過ぎてきも」

 と、

 その言葉に思わず呆けた後、俺はニヤリと笑った。

 笑顔を見破った人は、今まで両手で数えられるほどしか居なかった。その上『きも』なんて言われたのはこれが初めてだ。

 俺は昔から家の印象を悪くしない為にと愛想良く生きてきた。嫌な事があっても顔には出さない、言わない、感じさせない、そんな事をして生きてきた。それを否定して嫌悪されて、少し気が楽になったんだ。

 結局それからは「まさか腹黒副会長······?」とか訳の分からないことを呟いてコロコロ転がりながら何処かに行ったんだけど。

 その後、新入生代表挨拶に首席の男が現れず、調べてみるとそれがあの美少年、神々廻心湊だと分かった。

 生徒会親衛隊総隊長になった癖に全く見向きもしないから、用もないのに呼び出しまくっているのは仕方のないことだと思う。
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