天使様はいつも不機嫌です

一章

十七話

「冴島、風紀室でじっくり聞かせてもらうからな」

「え、俺何もしてないんだけど。ね？　天使ちゃん」

「あー、そうですね········」

　ぶっちゃけこいつが連行されようがどうでも良いんだけど。一応助けて貰ったのも事実だし庇ってやろう。何より事件扱いされると色々面倒臭い。

「ムッ、ならこの状況は一体どう説明するんだ」

「それは·········」

「やっぱり言えないようなやましい事があったんだな？」

「···········」

　俺が過呼吸起こしたって言えば済む話だろ。寮長は気を使ってるのか目を逸らして気まずそうにしている。

　はぁ······仕方ない。

「僕が過呼吸を起こした所を助けて貰ったんです。冴島先輩は悪くないですよ」

「ッ！？　言っちゃうの！？」

　じゃあどうしろって言うんだよこの状況。他に選択肢ないじゃん。

「過呼吸·······そうか、結翔が言っていた········」

「納得して頂けました？」

「どうやら俺の早とちりだった様だ。すまない」

　俺に謝んな。寮長に言えよ。

「頭を上げてください。あなたは風紀委員として当然の事をしたまでです」

　あいつ俺の肌見て顔真っ赤にしてたしな。鍵まで掛けやがって······。

「冴島も疑って悪かった。お前に関する妙な噂が広まっているからつい、な」

　噂？　まさかレイプ常習犯とか言うんじゃないだろうな。

「気にしないで良いよ？　どうせ俺そういう人間だし」

「冴島········。本当に悪かった、そんなに気に病まないでくれ」

「·········あの、僕もう帰って良いですか？」

　寝不足、悪夢、過呼吸。この状況で長々と話されても困るんだけど。イチャイチャしたいなら他でやれよ。

「あ、あぁ。冴島、この姿だと危険だし寮まで送ってやってくれ」

「は？」

　お前さっきまでの心配どこいったんだよ。こいつが居た方が危ないに決まってるだろ。

「え、OKOK！　一緒に話せて一石二鳥だわ！　行こっか天使ちゃん」

「ﾁｯ······わざわざありがとうございます」

　お前マジで空気読めないな。断れよクソが。後で背負い投げもう一発お見舞いしてやる。