天使様はいつも不機嫌です

一章

三話

　······6日前のSクラス教室。

　──あぁぁぁああああ！！！　深くてエロいキスが見たかった！！！

　そう叫びながら、眠っていた俺の肩にだらんと、幼馴染がもたれかかって来た。

「耳元でうるさい。殺すぞ」

　俺の安眠を邪魔するなカス。

「だって笑顔見破っても『そうですか』て、一言で終わりだよ！？　おかしいだろっつー話！」

「お前の頭がおかしいだけでしょ」

　こんなくだらない用件で起こされるとかたまったもんじゃない。現実と架空の区別はつけろ。

　後は知らんと机に伏す俺に、奴は耳を噛んできた。

「ッ·······僕はミミガーじゃない。汚いからやめて」

「えぇぇ。そこは『ひゃっ』とか声出すところでしょ。ていうか心湊の隣の席空いてるってことはそういうことだけど大丈夫そ？」

「僕が巻き込まれるとでも言いたいの？」

　そこの対策はバッチリだ。足を出して王道通り踏みつけられればモブに溶け込める。

「いやまぁね、うん(笑)。心湊に何かあったら俺が当主様に怒られるんだよねぇ······」

　当主様。神々廻財閥の総帥で俺の父親のことだ。壽美家は神々廻一族の家令だから、歳の近い結翔は俺に仕えていることになっている。

　······それにしても、

「まさか、僕がこの学園に入学するよう仕向けたのは父上の······」

　──ガラガラ

「お前ら席つけー」

「「はーい」」

　チッ。重要なところで担任という邪魔者が入った。