学園生活は意外と大変

白鳩 唯斗

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第一章・第一幕

お昼ご飯

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「雪人、学校で何があったんだ?」
「えへへ・・・・・・」

 晃さんの車で帰ってきた雪人の姿を見て、俺は思わず目を見開いた。
 
 朝に俺が着せてあげた服は泥だらけで、頭には桜の花を身に付けている。
 いじめられた・・・わけでは無さそうだな・・・・・・。

 寮に帰るために、雪人を抱っこする。

「友達は出来た?」
「うんっ! みさちゃんからおはなもらった! あと、まなくんとおしろつくったよ!」

 それで桜の髪飾りと、服が泥だらけな訳か。
 
「良かったな。俺も最近連絡先・・・じゃなくて、友達が三人も出来たんだ」
「ぼくもごにん、おともだちできたよ」

 昨日と比べて明るい姿に、自然と口角が上がる。
 暗い表情ばかりをしていたせいで気が付かなかったが、見れば見るほど天使のようだ。

 今日のご飯は何が良いか尋ねると、カレーが良いと言われる。
 エントランスの近くにコンビニがあるらしいので、そこに寄ってから帰ることにした。



 寮内は24時間自由に出歩いて良い決まりで、エントランスにもそこそこ人が居た。
 ペコペコと頭を下げながら、店内に入る。

 店内はコンビニというよりもスーパーに近く、生活用品や食料品、ドラッグストアなんかもあった。

 カゴを持って、雪人と手を繋ぐ。

「違いが分からない・・・・・・」
 
 子供にはどの種類が良いのだろうか。
 
 栄養士監修のルウや、キャラクターのシール付きのルウなど、色々な種類がある。

「甘口と中辛を混ぜて作った方が良いぞ」
「うわっ! おにいちゃんだれ?」

 隣から声をかけられて、チラリと視線を向ける。
 一瞬日本刀に手を掛けそうになったが、相手の顔に見覚えがあり、身体から力を抜く。

「あなたはさっきの・・・・・・」
「そういえば自己紹介をしていなかったな。俺は風紀委員長の奉日本 駿也だ。そちらは?」
「俺は卯川魁星、こっちは息子の雪人です」
「よろしく、おねがいします」
「息子・・・・・?」

 首を傾げる委員長に、昨日と同様の説明をする。
 
「なるほど。そのような事情があったのか・・・」
 
 委員長は納得したように頷くと、『困った時は風紀委員会を頼ってくれ』と笑顔で言った。



 それから暫く世間話をした。
 委員長は俺より一歳年上の先輩で、中等部には少し歳の離れた弟が居るらしい。

 俺にアドバイスをしたのも、昔弟が中辛は食べられなかったからだそうだ。
 
「委員長もお昼食べていきますか?」
「いや・・・俺はエントランスで適当に――」
「しゅんやおにいちゃん、こないの・・・・・・?」

 雪人はお菓子を買って貰って、すっかり委員長に懐いたようだ。
 涙目になる雪人の姿を見て、委員長が気まずそうにこちらを見る。
 
「・・・・・・魁星・・・・・・昼食を摂るなら、他の委員も呼びたいのだが、構わないか・・・・・・?」
「もちろん構いませんよ」

 コンビニから出ると、さっきとは比べ物にならないほど無数の視線が集まった。
 
 そういえば、風紀委員会と関わるのは良くないんだったな・・・・・・。
 嫉妬で制裁を受けると聞いていたが、周囲の人達から向けられる視線は好意的なように感じた。

「あそこに居る人たちはご近所さんだよ」
「ごきんじょさん・・・? いっしょのおうち?」
「うん、手を振ってあげたらどうかな?」
「わかった・・・・・・」

 ぎこちない動作で、雪人が手を振る。

「「ぅ・・・っ・・!」」
 
 胸を抑えて俯く人や、蕩けた表情で手を振り返す人など、不思議な人が多かった。



 抱っこした時に、俺の身体まで汚れてしまった。
 委員長をソファーに案内して、シャワーを浴びてくると伝え、雪人と一緒に浴室へ向かう。

「そういえば、朝食も摂ってなかったな」
「おなかすいた・・・・・・」

 軽くシャワーを済ませて、お風呂を出る。
 下着を履いたところで、インターホンが鳴った。
 タオルを頭にかけて、玄関に向かう。

「どちら様ですか?」
「委員長に呼ばれて来たっす!」
「今開けます」

 モニターを確認すると二人映っていた。
 ロックを解除して、扉を開ける。
 
「よーっす! 委員長が新入生ナンパしたって聞いて駆けつけましたっ!」
「押しかけてすみません。俺も新入生なので仲良く・・・・・・ッ・・・!?」

 茶髪の子が、俺の姿を見て固まった。
 男同士だからこの姿でも問題無いと思ったが、流石に失礼だったか?

「すみません。お風呂から上がったばかりだったので・・・見苦しい姿をお見せしました」
「全然大丈夫っスよ! 俺もパンイチでうろちょろして、よく姉ちゃんに怒られてたっス!」
「・・・・・・・俺も別に気にしてません」

 上がってください。
 声を掛けて、ダイニングへ移動してもらう。
 
 ソファーに座る委員長の膝の上には、髪を拭いてもらう雪人の姿があった。

「だれ・・・・・・?」
「「委員長に子供・・・!?」」

 こてんと首を傾ける雪人に、二人が声を上げた。
 まさかッ!? というような視線が、俺と委員長に向けられる。

「おい、何を勘違いしているんだ。俺達は男同士な上に学生だぞ?」
「い、いや~、そうッスよね・・・? 男同士で子供ができるはずないッスよね・・・?」
「妄想し過ぎて遂におかしくなったのかと思った・・・・・・。あっぶなっ・・・・・・」

 自分の部屋に戻って、私服に着替える。
 委員長達は料理が出来るまで、雪人の遊び相手をしてくれることになった。
 
 テレビゲームの音と話し声をBGMに、カレー作りに取り掛かる。
 
 雪人の分は甘口と中辛を混ぜて、牛乳を隠し味にマイルドに仕上げるつもりだ。
 余った牛乳は・・・後で一緒にプリンでも作ろう。

 ちなみにご飯は予約で朝に炊いてある。
 本当は朝食におにぎりを作る予定だったが、急いでいたので朝食は抜いてしまった。

 炊飯器を開けて、ダイニングを見る。
 高校生四人と小学生一人。この量で足りるか?

 朝昼晩白米を使う予定だったので、一応三号くらいは炊いてある。
 どうせなら、カツとコロッケも作ってみるか。
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