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第一章・第一幕
教室
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担任の先生――東雲先生が、もう一度俺のために学校の説明をしてくれる。
「ほとんどが内部生だから知ってると思うが、この学園は生徒会と風紀委員会を中心に回っている」
親衛隊という組織があり、人気のある生徒に話し掛けると嫉妬され制裁を受ける。
特に生徒会と風紀委員会が要注意のようだ。
「最後に、自分を守る術が無いやつは、一人にならないことだ。何をされるか分からないからな」
チラリ、東雲先生に視線を向けられる。
最近は食欲がなくて筋力も落ちたが、だからといって無抵抗にやられるほど弱くはない。
日本刀を抜いて、先生に刀身を見せる。
「剣術の心得はあるのでご安心ください。この日本刀があれば、何でも切り落とせます」
「「ナニを・・・・・・!?」」
「見かけによらず物騒なヤツだな・・・・・・、まあ、外部生ならそのくらい警戒してた方が良いだろう」
というわけで、自己紹介頼んだ。
東雲先生に振られ、刀を収めて挨拶する。
「俺は卯川魁星と申します。実は最近、親戚の子のお世話をすることになり、授業に出られないことが多いと思います。その子・・・雪人も一緒に寮で暮らす予定なので、優しくしてくださると嬉しいです」
「「・・・・・・・・・・」」
深々と頭を下げる。
なぜ雪人について触れたのかと言うと、この学園には土日休みというものが存在しないからだ。
特待生は授業免除を受けられるが、登校自体はしなければならないというルールがある。
小学校は土日が休みだ。
必然的に、寮に雪人を置いて登校するか、雪人を連れて学校に登校するかの二択になる。
理事長にそのことを相談したら、教室へ行かないなら連れてきていいよ、とのことだった。
高等部に小学生が居たら驚くだろうから、一応同級生達には伝えておくことにしたのだ。
「だそうだ。色々と苦労してるヤツだから、なるべく優しく接してやってくれ」
「「はい!!」」
元気に返事をする同級生達に、ほっと息を着く。
とりあえず、俺の事を受け入れてくれたみたいで良かった。外部生だから、少し不安だったんだ。
東雲先生が教室を出ると、自由時間が出来る。
堰を切ったように、同級生達が集まってきた。
「魁星様! お噂はかねがね伺っております!」
「ご趣味をお聞きしても良いでしょうか!?」
「好きな食べ物はなんですか!? 僕、お菓子作りが趣味で・・・今度一緒に作ってみたいです。お菓子が苦手なら、子供とかでも良いんですけど・・・・・・」
「おい、卯川様の心情を考えろよ! 暫くはそっとしてあげた方が良いだろ!?」
「そういうお前こそっ、卯川様とお近付きになろうとしてるじゃないか!」
「なんだと!? やるかっ!?」
俺を巡って争いが起き始める。
中学生の頃にも、副会長の座を巡って似たようなことが起きたんだよな・・・・・・。
つい一ヶ月前まで、俺は生徒会長をしていた。
高校では生徒会に入るつもりは無いけど、理事長から打診も来ている。
確かこの学園では、生徒の投票によって役員が決まるんだったよな?
喧嘩の仲裁をしながら、生徒会について尋ねる。
「卯川家は世界一の名門一族ですし、特待生なので成績の面でも問題ないと思います!」
「いや、俺は生徒会に入るつもりは――」
「みんな! 魁星様が生徒会選挙に興味を持たれているようだ! 魁星様に投票しようぜ!」
「少し話を――」
「よっしゃっ! 今のうちにポスターも作るぞ!」
「「オーー!!」」
否定しようにも、勝手に話が進んでいく。
俺はため息を着いて、こっそり教室を出た。
「どうしようかな・・・・・・」
生徒会役員になるのが嫌な訳ではない。
小学生の頃は学級委員長、中学校では一年生の頃から役員を務めていた俺からすれば、むしろ仕事が無い方が違和感を感じるほどである。
しかし、それは両親が生きていた頃の話だ。
今の俺には雪人が居る。
生徒会の仕事と雪人、どちらを優先するかと聞かれれば、考えるまでもなく後者だ。
「「ッ・・・!!」」
ドンッ、考えことをしていたせいで、硬いなにかにぶつかってしまった。
硬いそれが、すぐに人であることに気がつく。
「すみません。お怪我はありませんか?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
目の前の男が、艶のある漆黒の髪をふわりと揺らし、暖かな笑みを浮かべる。
うわ・・・身長高いな・・・・・・。
「どこか痛むのか?」
「いえ、少し驚いただけです」
「・・・・・・??」
首を傾げる男から離れて、彼の身体を見る。
人にぶつかったにしては、衝撃が凄かった。
お腹に鉄板でも仕込んでいるのかと思ったが、服の上からでも分かる腹筋の影に納得する。
「それでは失礼します。こちらの不注意で申し訳ありませんでした」
会釈をして、昇降口へ向かう。
あまり人の身体を見るのは良くないよな。
昇降口で靴に履き替えて、――そこで俺は、あることに気がついた。
「あの人が腕に付けてた腕章、風紀って書いてあったような・・・・・・」
この学園で平和に過ごしたいなら、生徒会と風紀委員会には関わらない方が良い。
東雲先生から、そう釘を刺されたばかりだ。
まさかあの人、風紀委員だったのか?
顔がモデルみたいで力も強そうだった。
「少し話しただけだし、問題無いよな・・・・・・」
俺は考えるのをやめて、寮に戻った。
担任の先生――東雲先生が、もう一度俺のために学校の説明をしてくれる。
「ほとんどが内部生だから知ってると思うが、この学園は生徒会と風紀委員会を中心に回っている」
親衛隊という組織があり、人気のある生徒に話し掛けると嫉妬され制裁を受ける。
特に生徒会と風紀委員会が要注意のようだ。
「最後に、自分を守る術が無いやつは、一人にならないことだ。何をされるか分からないからな」
チラリ、東雲先生に視線を向けられる。
最近は食欲がなくて筋力も落ちたが、だからといって無抵抗にやられるほど弱くはない。
日本刀を抜いて、先生に刀身を見せる。
「剣術の心得はあるのでご安心ください。この日本刀があれば、何でも切り落とせます」
「「ナニを・・・・・・!?」」
「見かけによらず物騒なヤツだな・・・・・・、まあ、外部生ならそのくらい警戒してた方が良いだろう」
というわけで、自己紹介頼んだ。
東雲先生に振られ、刀を収めて挨拶する。
「俺は卯川魁星と申します。実は最近、親戚の子のお世話をすることになり、授業に出られないことが多いと思います。その子・・・雪人も一緒に寮で暮らす予定なので、優しくしてくださると嬉しいです」
「「・・・・・・・・・・」」
深々と頭を下げる。
なぜ雪人について触れたのかと言うと、この学園には土日休みというものが存在しないからだ。
特待生は授業免除を受けられるが、登校自体はしなければならないというルールがある。
小学校は土日が休みだ。
必然的に、寮に雪人を置いて登校するか、雪人を連れて学校に登校するかの二択になる。
理事長にそのことを相談したら、教室へ行かないなら連れてきていいよ、とのことだった。
高等部に小学生が居たら驚くだろうから、一応同級生達には伝えておくことにしたのだ。
「だそうだ。色々と苦労してるヤツだから、なるべく優しく接してやってくれ」
「「はい!!」」
元気に返事をする同級生達に、ほっと息を着く。
とりあえず、俺の事を受け入れてくれたみたいで良かった。外部生だから、少し不安だったんだ。
東雲先生が教室を出ると、自由時間が出来る。
堰を切ったように、同級生達が集まってきた。
「魁星様! お噂はかねがね伺っております!」
「ご趣味をお聞きしても良いでしょうか!?」
「好きな食べ物はなんですか!? 僕、お菓子作りが趣味で・・・今度一緒に作ってみたいです。お菓子が苦手なら、子供とかでも良いんですけど・・・・・・」
「おい、卯川様の心情を考えろよ! 暫くはそっとしてあげた方が良いだろ!?」
「そういうお前こそっ、卯川様とお近付きになろうとしてるじゃないか!」
「なんだと!? やるかっ!?」
俺を巡って争いが起き始める。
中学生の頃にも、副会長の座を巡って似たようなことが起きたんだよな・・・・・・。
つい一ヶ月前まで、俺は生徒会長をしていた。
高校では生徒会に入るつもりは無いけど、理事長から打診も来ている。
確かこの学園では、生徒の投票によって役員が決まるんだったよな?
喧嘩の仲裁をしながら、生徒会について尋ねる。
「卯川家は世界一の名門一族ですし、特待生なので成績の面でも問題ないと思います!」
「いや、俺は生徒会に入るつもりは――」
「みんな! 魁星様が生徒会選挙に興味を持たれているようだ! 魁星様に投票しようぜ!」
「少し話を――」
「よっしゃっ! 今のうちにポスターも作るぞ!」
「「オーー!!」」
否定しようにも、勝手に話が進んでいく。
俺はため息を着いて、こっそり教室を出た。
「どうしようかな・・・・・・」
生徒会役員になるのが嫌な訳ではない。
小学生の頃は学級委員長、中学校では一年生の頃から役員を務めていた俺からすれば、むしろ仕事が無い方が違和感を感じるほどである。
しかし、それは両親が生きていた頃の話だ。
今の俺には雪人が居る。
生徒会の仕事と雪人、どちらを優先するかと聞かれれば、考えるまでもなく後者だ。
「「ッ・・・!!」」
ドンッ、考えことをしていたせいで、硬いなにかにぶつかってしまった。
硬いそれが、すぐに人であることに気がつく。
「すみません。お怪我はありませんか?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
目の前の男が、艶のある漆黒の髪をふわりと揺らし、暖かな笑みを浮かべる。
うわ・・・身長高いな・・・・・・。
「どこか痛むのか?」
「いえ、少し驚いただけです」
「・・・・・・??」
首を傾げる男から離れて、彼の身体を見る。
人にぶつかったにしては、衝撃が凄かった。
お腹に鉄板でも仕込んでいるのかと思ったが、服の上からでも分かる腹筋の影に納得する。
「それでは失礼します。こちらの不注意で申し訳ありませんでした」
会釈をして、昇降口へ向かう。
あまり人の身体を見るのは良くないよな。
昇降口で靴に履き替えて、――そこで俺は、あることに気がついた。
「あの人が腕に付けてた腕章、風紀って書いてあったような・・・・・・」
この学園で平和に過ごしたいなら、生徒会と風紀委員会には関わらない方が良い。
東雲先生から、そう釘を刺されたばかりだ。
まさかあの人、風紀委員だったのか?
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俺は考えるのをやめて、寮に戻った。
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