残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗

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第一部 第二章

五十一話

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「うわああああああああ!!!」

「「ッ・・・!」」

 教会の礼拝堂に出たその時、外から子供の悲鳴が聞こえた。

 ハルトが先に駆け出し、その後を追う。

「あれは――」

 一人の少年が地面に倒れていた。

 その上には、口を大きく開け涎を垂らす、小熊のような魔獣が乗っている。

「チッ・・・」

 ここから攻撃に向かっても、間違いなく間に合わない。剣を抜いて、魔獣の頭目掛けて飛ばす。

「大丈夫っすか!?」

「うぅ・・・こわかったよぉ・・・!」

 ハルトが魔獣の死体を退け、少年を抱き上げる。

 なぜ子供が、こんな魔境の付近に居るんだ?

 周囲を警戒しながら、少年の元へ足を進める。

「ハルト、後ろだ!」

「えっ・・・」

 森の中からハルトの背後に現れた、グリズリーのような大きな魔獣。

 動物の姿を模した魔獣は、親子で行動する。

 人里の近くにも関わらず、子供しか居ない時点で、おかしいとは思っていた。

 咄嗟に地面を強く蹴り、ハルトの服を掴み子供ごと横へ投げ飛ばす。

「グオォオオオオオオ!」

 魔獣が大きな手をなぎ払う。

 鋭い爪が俺の横腹をえぐり、そのままハルト達が居る方向へ吹き飛ばした。

「ゴホッゴホッ・・・う"ッ・・・」

「マズい・・・早く司祭の元へお連れしないと・・・・・・」

 腹を抑えて、地面に倒れ伏す。

 剣で切られるのとは違い、身体をえぐられるのは想像以上のダメージが大きい。

 一瞬だが、爪が身体の中にめり込み、内蔵を貫通する感覚がした。

「剣が効かないっす・・・」

 ハルトが魔獣と交戦するが、攻撃を防ぐのがやっとの様子だ。

 熊の魔獣の皮は分厚く、打撃や斬撃に強い。
 
 特殊なオーラを扱う、ソードマスターであれば、話は変わってくるが・・・・。

「《クライオ・オーラ》」

「ッ・・・!」

 突然現れた白髪の男が、冷気を纏った剣で魔獣の腹部に斬りかかった。

 ピキピキと魔獣の身体が凍り、地面に倒れる。

 魔獣の身体はガラスのように、粉々に崩れた。

「外遊は楽しかったですか?」

「どうして、ここが分かった・・・・・」

「話は司祭の治療を受けた後です」

 白髪の男――エミリオが俺を抱き上げ、そのまま歩き始める。

 いつもなら皇子らしく怒っていたところだが、

 不機嫌そうな雰囲気と、魔獣の成れの果てを見て、大人しくすることにした。
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