残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗

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第一部 第二章

四十八話

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「あんた達のせいで生活がめちゃくちゃだよ!」

「僕のお母さんを返せ!!」

「この悪魔がッ・・・!!」

 早朝にハルトと屋敷を抜け出し外に出ると、待っていたのは不満を募らせた領民達だった。

 ただ場所を聞いただけだが、罵倒と石や卵などが投げつけられる。

「殿下、やはり変装をした方が良かったんじゃ・・・・・・」

「ゴミ如きのために、俺に姿を隠せというのか?」

「俺が間違っていました・・・」

 ハルトがマントを持ち上げて、俺を覆い隠す。

 いちいち気にしていたら、キリが無い。

「騒がしいな。薄汚い虫けら共が・・・」

「「ひぃっ・・・!!」」

 頭についた生卵を叩き落としながら、ハルトを退かして領民達を睨みつける。

「教会の場所を教えるか、この場で俺に殺されるか、好きな方を選べ」

 一人の領民の胸ぐらを掴んで、持ち上げる。

 顔を真っ青にした周囲の人々は逃げ去り、一人残った領民は泣きながら北の方を指さした。

「きょ、教会はあちらにあります!!」

「チッ・・・最初から大人しく話していれば良いものを、手間をかけさせやがって・・・・・・」

「うぐっ・・・!」

「殺されたくなければ、二度と俺の前に現れるな」

 領民を地面に投げ捨て、指した方向へ向かう。

「大丈夫すか?」

「誰の心配をしているんだ?」

 外を歩く時は、この茶番をしなければならない。

 "残虐な皇子"が、何の問題も起こすことなく、外を出歩くことなどあるはずが無いからだ。

 ハルトと北へ進むこと15分。

 魔境へ繋がる森の付近までたどり着いた。

「こんな場所に教会なんかあるんすかねぇ。もしかして騙されたんじゃ・・・」

「あれを見てみろ。廃墟のような見た目をしているが、人の気配がする」

「うわあ、マジでこんな所にあったんすね・・・」

 ほとんど森と距離が無い場所にある、ツタやコケで汚れた薄汚い建物。

 隙間から見える白色に、その建物が元は純白の教会であったことが分かる。

 建物に近ずき、静かに扉を開ける。

 外見に反して、中は比較的綺麗だった。

「も、申し訳ありません・・・。今は礼拝の時間では無いため、お引取りを・・・」

 弱腰なシスターが現れる。

 気配の数はひとつだけか。

 どうやらラフィーナは居ないようだな。

「身の程を弁えろ。この眼を見ても、俺が誰だか分からないのか?」

「ッ!! 赤い瞳・・・まさかあなた様は――!」

「この教会に属する、聖職者の名簿が保管されている場所に案内しろ。これは皇子命令だ」

「は、はい・・・! かしこまりました・・・!」

 礼拝堂の横にある扉に入り、更にそこから地下室へ繋がる階段を下りる。

 こんな場所に保管する必要があるのか?

「こちらです・・・・・・」

 シスターの案内でたどり着いた場所は、大量の本と資料が並ぶ、資料室のような部屋だった。
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