42 / 57
第一部 第二章
四十一話
しおりを挟む
41
俺が魔力を血液に込めることが出来るのは、毒に適用するために身体が変質したからだった。
最初は教育に耐えきれずもがき苦しんでいたが、しばらくすると口から血を吐くようになった。
無意識のうちに、血中の毒と正常な血液を分別し、排除していたのだ。
血液を自在に操れる体質は、その副産物だった。
「世話を、かけたな・・・。先に失礼する」
「お待ちくださいっ・・・!」
地面に倒れる騎士の髪を掴んで、バルコニーの手すりに登る。
「カイル殿下ッ!」
先に騎士を投げ捨て、その上に着地する。
命綱である血液を切るなど、完全に盲点だった。
これで、魔術兵器に頼る必要も無くなる。
「この忌々しい黒魔術さえ、どうにかなれば・・・・・・」
本当はこのまま逃げてしまいたいが、皇族である以上、皇帝から逃れることは出来ない。
幼い頃に心臓に刻まれた、服従の誓約がある限り、皇帝の存在は絶対だ。
覚悟を決め、皇城に戻る決意をしたその時、エミリオが手すりから飛び降りた。
「こんな夜更けに、何処へ行くおつもりですか?」
「着いてくるな」
騎士を引きずりながら、森の方へ向かう。
公爵に見つかる前に、アンダーソンを魔物に食わせ、証拠を隠滅しなければ。
皇帝の護衛騎士の存在は、公爵も知っている。
もしも見つかれば――俺が陛下と結託して、北部に危害を加えようとしたと考えるだろう。
「まだ話が終わっていませんよ」
「話し相手が欲しいなら会場に戻れ」
「・・・その者について、父上にお話してもよろしいということですか?」
エミリオの言葉に、足を止める。
「その者は屋敷へ侵入した罪人です。調査はこちらで引き受けます」
「こいつは皇族を害した重罪人だ。皇子である俺が連れていくのが道理だと思うが?」
エミリオはアンダーソンの存在を知らない。
こいつを処分すれば、俺を狙った暗殺者に私刑を下したということで押し通せる。
「その様子だと、何かご存知のようですね」
「ッ・・・・・・」
俺は静かに、剣に手を掛けた。
俺が魔力を血液に込めることが出来るのは、毒に適用するために身体が変質したからだった。
最初は教育に耐えきれずもがき苦しんでいたが、しばらくすると口から血を吐くようになった。
無意識のうちに、血中の毒と正常な血液を分別し、排除していたのだ。
血液を自在に操れる体質は、その副産物だった。
「世話を、かけたな・・・。先に失礼する」
「お待ちくださいっ・・・!」
地面に倒れる騎士の髪を掴んで、バルコニーの手すりに登る。
「カイル殿下ッ!」
先に騎士を投げ捨て、その上に着地する。
命綱である血液を切るなど、完全に盲点だった。
これで、魔術兵器に頼る必要も無くなる。
「この忌々しい黒魔術さえ、どうにかなれば・・・・・・」
本当はこのまま逃げてしまいたいが、皇族である以上、皇帝から逃れることは出来ない。
幼い頃に心臓に刻まれた、服従の誓約がある限り、皇帝の存在は絶対だ。
覚悟を決め、皇城に戻る決意をしたその時、エミリオが手すりから飛び降りた。
「こんな夜更けに、何処へ行くおつもりですか?」
「着いてくるな」
騎士を引きずりながら、森の方へ向かう。
公爵に見つかる前に、アンダーソンを魔物に食わせ、証拠を隠滅しなければ。
皇帝の護衛騎士の存在は、公爵も知っている。
もしも見つかれば――俺が陛下と結託して、北部に危害を加えようとしたと考えるだろう。
「まだ話が終わっていませんよ」
「話し相手が欲しいなら会場に戻れ」
「・・・その者について、父上にお話してもよろしいということですか?」
エミリオの言葉に、足を止める。
「その者は屋敷へ侵入した罪人です。調査はこちらで引き受けます」
「こいつは皇族を害した重罪人だ。皇子である俺が連れていくのが道理だと思うが?」
エミリオはアンダーソンの存在を知らない。
こいつを処分すれば、俺を狙った暗殺者に私刑を下したということで押し通せる。
「その様子だと、何かご存知のようですね」
「ッ・・・・・・」
俺は静かに、剣に手を掛けた。
48
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説



社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

無自覚な
ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。
1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに
イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。
それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて
いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外
何をやっても平凡だった。
そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる
それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない
そんな存在にまで上り積めていた。
こんな僕でも優しくしてくれる義兄と
僕のことを嫌ってる義弟。
でも最近みんなの様子が変で困ってます
無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる