残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗

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第一部 第二章

四十一話

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 俺が魔力を血液に込めることが出来るのは、毒に適用するために身体が変質したからだった。

 最初は教育に耐えきれずもがき苦しんでいたが、しばらくすると口から血を吐くようになった。

 無意識のうちに、血中の毒と正常な血液を分別し、排除していたのだ。

 血液を自在に操れる体質は、その副産物だった。

「世話を、かけたな・・・。先に失礼する」

「お待ちくださいっ・・・!」

 地面に倒れる騎士の髪を掴んで、バルコニーの手すりに登る。

「カイル殿下ッ!」

 先に騎士を投げ捨て、その上に着地する。

 命綱である血液を切るなど、完全に盲点だった。

 これで、魔術兵器に頼る必要も無くなる。

「この忌々しい黒魔術さえ、どうにかなれば・・・・・・」

 本当はこのまま逃げてしまいたいが、皇族である以上、皇帝から逃れることは出来ない。

 幼い頃に心臓に刻まれた、服従の誓約がある限り、皇帝の存在は絶対だ。

 覚悟を決め、皇城に戻る決意をしたその時、エミリオが手すりから飛び降りた。

「こんな夜更けに、何処へ行くおつもりですか?」

「着いてくるな」

 騎士を引きずりながら、森の方へ向かう。

 公爵に見つかる前に、アンダーソンを魔物に食わせ、証拠を隠滅しなければ。

 皇帝の護衛騎士の存在は、公爵も知っている。

 もしも見つかれば――俺が陛下と結託して、北部に危害を加えようとしたと考えるだろう。

「まだ話が終わっていませんよ」

「話し相手が欲しいなら会場に戻れ」

「・・・その者について、父上にお話してもよろしいということですか?」

 エミリオの言葉に、足を止める。

「その者は屋敷へ侵入した罪人です。調査はこちらで引き受けます」

「こいつは皇族を害した重罪人だ。皇子である俺が連れていくのが道理だと思うが?」

 エミリオはアンダーソンの存在を知らない。

 こいつを処分すれば、俺を狙った暗殺者に私刑を下したということで押し通せる。

「その様子だと、何かご存知のようですね」

「ッ・・・・・・」

 俺は静かに、剣に手を掛けた。
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