残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗

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第一部 第二章

四十話

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「クソ、皇帝・・・コロ、・・・してやる・・・・・・」

 地面に手をつきながら、不規則に呼吸をする。

 全身が焼けるように熱くて、頭がボーっとする。

 熱を逃がすために、身体から何かを放出しなければいけないという、本能的な衝動に駆られる。
 
 この症状は、暴走の前兆だ。

 闘技場で使われる、魔物を興奮状態にすることが出来る薬剤――増魔強剤。

 一時期的に魔力を増幅する効果があり、魔術師には脅威となる代物を打ち込まれた。

 ドボクグモの解毒に力を要したせいで、薬物に対する抵抗力が下がり、効力を抑えきれない。

「殿下! すぐに医者を呼んで――」

「待て、行くなッ!」

 今、エミリオに離れられるのはまずい。

 もしもここで暴走が起きれば、会場に居る者は間違いなく全員死ぬ。

 俺を止められるのは、エミリオと公爵だけだ。

「魔力を、何処かにっ・・・・・・」

 目の前がチカチカする。

 人を殺して、めちゃくちゃにしてやりたい。

「この症状は・・・魔力の暴走か・・・・・・?」

 エミリオに支えられ、肩を借りて起き上がる。

 クソッ・・・皇帝の狙いは暗殺ではなく、俺の暴走を引き起こすことだったのか・・・。

 暴走した俺が北部の貴族を殺して回れば、公爵は俺を止めるために、仕方なく殺す羽目になる。

 正当防衛であろうが、ハイデルト帝国の絶対支配者、皇族を殺めることは許されない。

 皇帝は『互いに大切な者を失った。今回の件は不幸な事故だった』そう公爵に言うはずだ。

 不良品を利用して、目障りな北部貴族を殺し、

 その上、公爵に"皇族殺し"の汚名まで着せることが出来る、合理的な計画・・・。

「カイル殿下、魔術を放ってください・・・!」

「バカな、ことをっ・・・!」

 それが出来たら、暴走なんかしていない。

 完全に理性を失う前に、何か手を打たなければ・・・。いっその事、四肢を切り落とすか?

「非常事態です。お許しください」

「んっ・・・!?」

 突然、頬を両手でがっしり掴まれた。

 視界の大半が、白色と蒼色に支配される。唇に何かが当たる感覚がした。

「お、・・・まえっ・・・!!」

「・・・・・・」

 探るように、口の中で何かが動く。

 俺の舌を捉えたそれは、自身の方へ引き寄せるように動きを変える。

「っ・・・!?」

 ゴリっと音が鳴り、舌に痛みが走った。

 その瞬間、俺はエミリオがしようとしていることを理解した。

「・・・ふ、ぅ・・・んっ・・・・・・」

 舌先に魔力を集中させ、エミリオの口に魔力を圧縮した血液を流し込む。

 流血と共に、魔力が減っていくのを感じた。

「はぁ・・・はぁ・・・・・・・」

 どのくらい経っただろうか。

 熱が治まり始め、地面に座り込む。

「良かった・・・殿下の護衛騎士に感謝しなければな・・・・・・」

 口元を裾で拭って、呼吸を整える。

 小説の内容を意識し過ぎて、ラフィーナにしか解決出来ない問題だと思っていたが・・・、

 まさか、こんな方法があったとは――。

 血液に魔力を込めて、少しずつ血を抜けば――魔力を排出出来る・・・。
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