残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗

文字の大きさ
上 下
40 / 57
第一部 第二章

三十九話

しおりを挟む
39
「主催の役目があるので失礼します」

 公爵は会釈すると、テーブルへ向かった。

 グラスを手にしたカディエゴ公爵が、会場の大階段を上り、グラスを掲げる。

「本日よりエミリオ・カディエゴは小公爵だ! 正式な後継者として接するように!」

「「ハッ!!」」

 北部の貴族を見ていると、ここ十五年間で目にしてきた常識が覆される。

 貴族というよりも、まるで軍人のようだ。

「首都の貴族とは全然違うでしょう?」

「品性の欠けらも無い。まるで蛮族のようだ」

「私達は生まれた時から、魔物の脅威に晒されて来ました。なので、本質は生粋の武人なんです」

 袖を捲って、大きな傷を見せてくる。

 その傷は抉られたような跡だった。おそらく魔物に喰われたのだろう。

「殿下のお話を聞かせてくれませんか?」

「反逆罪で処刑されたくなければ、皇族の情報を探るのは辞めることだな」
 
 エミリオが社交界に疎いのは知っていたが、世間知らずにも程がある。

 陛下の耳に入れば、即刻連行されていたはずだ。

「私の身を案じているのですか?」

「お前のことなど知ったことか・・・」

 血なまぐさい匂いが濃くなってきたので、エミリオを置いてバルコニーへ向かう。

 俺にはふたつの選択肢がある。

 刺客を始末し北部の貴族に無実を証明するか、皇帝の狙い通り大人しく利用されるか。

 いずれにせよ、まずは刺客の居場所を特定する必要があるな・・・。

「カイル殿下ッ!!」

 エミリオの声に振り返る。

 必死にこちらを指さし、俺の名を呼んでいる。

「陛下より伝言です。『お前が役に立つ時が来た。今までご苦労だった』と、」

「ッ・・・!!」

 グサッ。俺の首に何かが突き刺さった。

 熱い液体が流れ込んでくる。

「なぜ、お前がここにッ・・・・・・!」

 首を抑え振り返ると、そこには皇帝の護衛騎士・アンダーソンが立っていた。

 殺し屋が本業の、陛下の最側近だ。

 ――まさか、騎士団に紛れ混んでいたのか?

「殿下を欺く形になってしまい、大変申し訳ございません。ほかの騎士は何も知らぬがゆえ、ご慈悲をいただけますと幸いです」

「勝手なッ、ことをっ・・・」
 
 アンダーソンの口からガリッと音が聞こえ、口から血を吐いて倒れる。

 首から全身に何かが回り始め、俺も膝を着いた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

処理中です...