残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗

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第一部 第二章

三十九話

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「主催の役目があるので失礼します」

 公爵は会釈すると、テーブルへ向かった。

 グラスを手にしたカディエゴ公爵が、会場の大階段を上り、グラスを掲げる。

「本日よりエミリオ・カディエゴは小公爵だ! 正式な後継者として接するように!」

「「ハッ!!」」

 北部の貴族を見ていると、ここ十五年間で目にしてきた常識が覆される。

 貴族というよりも、まるで軍人のようだ。

「首都の貴族とは全然違うでしょう?」

「品性の欠けらも無い。まるで蛮族のようだ」

「私達は生まれた時から、魔物の脅威に晒されて来ました。なので、本質は生粋の武人なんです」

 袖を捲って、大きな傷を見せてくる。

 その傷は抉られたような跡だった。おそらく魔物に喰われたのだろう。

「殿下のお話を聞かせてくれませんか?」

「反逆罪で処刑されたくなければ、皇族の情報を探るのは辞めることだな」
 
 エミリオが社交界に疎いのは知っていたが、世間知らずにも程がある。

 陛下の耳に入れば、即刻連行されていたはずだ。

「私の身を案じているのですか?」

「お前のことなど知ったことか・・・」

 血なまぐさい匂いが濃くなってきたので、エミリオを置いてバルコニーへ向かう。

 俺にはふたつの選択肢がある。

 刺客を始末し北部の貴族に無実を証明するか、皇帝の狙い通り大人しく利用されるか。

 いずれにせよ、まずは刺客の居場所を特定する必要があるな・・・。

「カイル殿下ッ!!」

 エミリオの声に振り返る。

 必死にこちらを指さし、俺の名を呼んでいる。

「陛下より伝言です。『お前が役に立つ時が来た。今までご苦労だった』と、」

「ッ・・・!!」

 グサッ。俺の首に何かが突き刺さった。

 熱い液体が流れ込んでくる。

「なぜ、お前がここにッ・・・・・・!」

 首を抑え振り返ると、そこには皇帝の護衛騎士・アンダーソンが立っていた。

 殺し屋が本業の、陛下の最側近だ。

 ――まさか、騎士団に紛れ混んでいたのか?

「殿下を欺く形になってしまい、大変申し訳ございません。ほかの騎士は何も知らぬがゆえ、ご慈悲をいただけますと幸いです」

「勝手なッ、ことをっ・・・」
 
 アンダーソンの口からガリッと音が聞こえ、口から血を吐いて倒れる。

 首から全身に何かが回り始め、俺も膝を着いた。
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