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第一部 第二章
三十二話
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あっという間に月日が過ぎて、カディエゴ公爵家へ向かう日となった。
馬車に揺られながら、腰に携えた剣に手を掛ける。
護衛が着いているとはいえ、所詮は俺よりも弱い連中だ。
皇族には敵が多い上に、今日は男主人公エミリオ・カディエゴに会いに行く。
万が一に備えて、体力は温存した方が良いだろう。
「これから魔境の森を通ります。ご注意ください」
馬車の小窓がノックされて、護衛の騎士に声を掛けられる。
魔境の森は、絶えず魔物が襲ってくる魔窟だ。
カディエゴ公爵領はその魔境と隣接した場所にあり、命知らずでもなければ近づく者はいない。
「本当に気をつけてくださいね。最悪、俺のことを盾にして逃げてください」
「人の心配をしている場合か? 仕事に集中しろ」
「相変わらず冷たいっすねぇ。幼少期からの付き合いなのに」
「・・・舌を抜かれる前に黙れ」
「そんなに睨まれたら怖いっすよ」
殺される可能性があるにも関わらず、こいつは二人きりの時だけ砕けた口調で話す。
前世でよく聞いたハルトという名前だと知って、つい名前を口にしたことがきっかけだったか。
「北部は魔物が多いって言われてるっすけど、実は小動物も生息してるらしいっすよ」
「それがどうした・・・」
皇族は小動物を虫のように殺すが、あいにく俺は狩りになど興味は無い。
「触りたくないっすか? 噂ではちょー可愛いくて、思わず食べたくなっちゃうほどらしいっす」
「そんなに動物が好きなら、料理長でも連れてくるべきだったか?」
「いやぁ・・・あくまで比喩表現っすよ。本当に食べたい訳じゃないっす・・・・・・」
脅しをかければ、ハルトは口を閉ざした。
打って変わって、真面目な表情で周辺を警戒するハルトを横目に眺める。
「ッ・・・・・・」
見られていることに気がついたのか、不意に目が合うと笑顔で手を振ってきた。
こういうところが、昔から気に入らない。
あっという間に月日が過ぎて、カディエゴ公爵家へ向かう日となった。
馬車に揺られながら、腰に携えた剣に手を掛ける。
護衛が着いているとはいえ、所詮は俺よりも弱い連中だ。
皇族には敵が多い上に、今日は男主人公エミリオ・カディエゴに会いに行く。
万が一に備えて、体力は温存した方が良いだろう。
「これから魔境の森を通ります。ご注意ください」
馬車の小窓がノックされて、護衛の騎士に声を掛けられる。
魔境の森は、絶えず魔物が襲ってくる魔窟だ。
カディエゴ公爵領はその魔境と隣接した場所にあり、命知らずでもなければ近づく者はいない。
「本当に気をつけてくださいね。最悪、俺のことを盾にして逃げてください」
「人の心配をしている場合か? 仕事に集中しろ」
「相変わらず冷たいっすねぇ。幼少期からの付き合いなのに」
「・・・舌を抜かれる前に黙れ」
「そんなに睨まれたら怖いっすよ」
殺される可能性があるにも関わらず、こいつは二人きりの時だけ砕けた口調で話す。
前世でよく聞いたハルトという名前だと知って、つい名前を口にしたことがきっかけだったか。
「北部は魔物が多いって言われてるっすけど、実は小動物も生息してるらしいっすよ」
「それがどうした・・・」
皇族は小動物を虫のように殺すが、あいにく俺は狩りになど興味は無い。
「触りたくないっすか? 噂ではちょー可愛いくて、思わず食べたくなっちゃうほどらしいっす」
「そんなに動物が好きなら、料理長でも連れてくるべきだったか?」
「いやぁ・・・あくまで比喩表現っすよ。本当に食べたい訳じゃないっす・・・・・・」
脅しをかければ、ハルトは口を閉ざした。
打って変わって、真面目な表情で周辺を警戒するハルトを横目に眺める。
「ッ・・・・・・」
見られていることに気がついたのか、不意に目が合うと笑顔で手を振ってきた。
こういうところが、昔から気に入らない。
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