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第一部

二十話

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「はぁ・・・っ、クソッ・・・」

 蹴られたせいで、内蔵が潰れた。

 魔力で損傷した臓器を維持しているが、苦痛で操作に集中出来ない。

 幸い、今日はカディエゴ公爵が来る日だったので、皇子達が殺す可能性のある使用人達は全員、離宮に勤務している。

 カディエゴ公爵と男主人公も、皇帝に愛想を尽かし皇城を出たはずだ。

 薄れかけてきた意識に、ボヤける視界。

 俺は遂に限界が来て、地面に崩れ落ち、壁に寄り掛かった。

「ッ!? 殿下!!!」

「だれ、だ・・・!」

 マズい・・・!

 誰かが俺を呼びながら、駆け寄ってくる。

 誰かは分からないが、この状況を見られた以上、早急に殺さなければッ――!

 咄嗟に剣に手を掛けようとしたが、腕を切り落とされた事を忘れていた。

 反対の手には切り落とされた腕があり、何も出来ない。

「カイル殿下、一体何があったのですか!?」

「はぁ・・・誰だか知らないが、気安く名前を呼ぶな。命が惜しくないのか?」

 俺の名前を呼ぶ者すら滅多に居ないが――皇族である俺に、許可も無く触れてくる。

 残った僅かな体力で、いつも通り皇子を演じる。

「そんなことを言ってる場合ですか? 失礼します」

「・・・!」

 突然、浮遊感に見舞われた。

 膝裏と背中に回った腕。自分が誰かに抱き抱えられている事に気がつく。

「貴様無礼だな。両腕を切り落としてやる」

「無礼をお許しください」

 視界がボヤけて正確には見えないが、顔らしき場所を睨みつける。

 無礼だと分かっているのなら、最初からしなければ良いものを・・・・・・。

 そうすれば、俺は何もしなくて済むんだ。
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