残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗

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第一部

十七話

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 挨拶の省略は、君主への不満や不服、不信を意味する。

 対面早々、敵意とも取れる行動を示したカディエゴ公爵に、皇帝の気が触れたのが分かった。

「して、カディエゴ公爵は我に何を申す?」

 部屋の温度が一気に下がる。

 皇帝から放たれる凄まじいプレッシャーは、ただの威圧では無い。

 魔力を含んだ、人体に害を及ぼす魔気だ。

 部屋の外で警備を担っていた騎士が、鎧の金属音を響かせて、気絶するのが分かる。

「ッ・・・流石、父上・・・・・」

 真横で魔気を受け、一番耐性が低い第五皇子が冷や汗を流す。

 膝を着いたりしたら、その場で首を切られるので、俺は無表情で耐えた。

「相変わらず・・・・・・陛下――国民は苦しんでおります。どうか、減税を考えてはいただけないでしょうか?」

「またそれか。カディエゴ公爵の管轄は北部の守護のはずだ。内政は宰相であるカーネリアン公爵に一任している。貴殿が携わる事では無い」

 あぁ、そうか。今日が始まりだったのか。

 目の前で広がる会話には、"見覚え"があった。

 公爵が謁見をしても意味が無いと分かっていた理由は、既に散々試した後だったからだ。

 そして、これが公爵が皇帝に見切りをつける決定打となる、最後の進言になる。

 この後、公爵は皇帝に反対する貴族を集め、勢力を拡大する。

 そして、戦争が起きて飢餓に見舞われ、小説通りに悪政に終止符を打つべく動き出すのだ。

「これでは民が死んでしまいます! どうか、ご再考願えませんでしょうか!」

「くどい。私に二度も同じことを言わせる気か? 貴殿が最初の英雄の子孫でなければ切り捨てていた所だが――私の気が変わる前に下がれ」

「ッ・・・分かりました。陛下のご意向は・・・・・・」

 カディエゴ公爵は悔しそうに顔を歪めると、この場を去った。
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