17 / 57
第一部
十七話
しおりを挟む
17
挨拶の省略は、君主への不満や不服、不信を意味する。
対面早々、敵意とも取れる行動を示したカディエゴ公爵に、皇帝の気が触れたのが分かった。
「して、カディエゴ公爵は我に何を申す?」
部屋の温度が一気に下がる。
皇帝から放たれる凄まじいプレッシャーは、ただの威圧では無い。
魔力を含んだ、人体に害を及ぼす魔気だ。
部屋の外で警備を担っていた騎士が、鎧の金属音を響かせて、気絶するのが分かる。
「ッ・・・流石、父上・・・・・」
真横で魔気を受け、一番耐性が低い第五皇子が冷や汗を流す。
膝を着いたりしたら、その場で首を切られるので、俺は無表情で耐えた。
「相変わらず・・・・・・陛下――国民は苦しんでおります。どうか、減税を考えてはいただけないでしょうか?」
「またそれか。カディエゴ公爵の管轄は北部の守護のはずだ。内政は宰相であるカーネリアン公爵に一任している。貴殿が携わる事では無い」
あぁ、そうか。今日が始まりだったのか。
目の前で広がる会話には、"見覚え"があった。
公爵が謁見をしても意味が無いと分かっていた理由は、既に散々試した後だったからだ。
そして、これが公爵が皇帝に見切りをつける決定打となる、最後の進言になる。
この後、公爵は皇帝に反対する貴族を集め、勢力を拡大する。
そして、戦争が起きて飢餓に見舞われ、小説通りに悪政に終止符を打つべく動き出すのだ。
「これでは民が死んでしまいます! どうか、ご再考願えませんでしょうか!」
「くどい。私に二度も同じことを言わせる気か? 貴殿が最初の英雄の子孫でなければ切り捨てていた所だが――私の気が変わる前に下がれ」
「ッ・・・分かりました。陛下のご意向は・・・・・・」
カディエゴ公爵は悔しそうに顔を歪めると、この場を去った。
挨拶の省略は、君主への不満や不服、不信を意味する。
対面早々、敵意とも取れる行動を示したカディエゴ公爵に、皇帝の気が触れたのが分かった。
「して、カディエゴ公爵は我に何を申す?」
部屋の温度が一気に下がる。
皇帝から放たれる凄まじいプレッシャーは、ただの威圧では無い。
魔力を含んだ、人体に害を及ぼす魔気だ。
部屋の外で警備を担っていた騎士が、鎧の金属音を響かせて、気絶するのが分かる。
「ッ・・・流石、父上・・・・・」
真横で魔気を受け、一番耐性が低い第五皇子が冷や汗を流す。
膝を着いたりしたら、その場で首を切られるので、俺は無表情で耐えた。
「相変わらず・・・・・・陛下――国民は苦しんでおります。どうか、減税を考えてはいただけないでしょうか?」
「またそれか。カディエゴ公爵の管轄は北部の守護のはずだ。内政は宰相であるカーネリアン公爵に一任している。貴殿が携わる事では無い」
あぁ、そうか。今日が始まりだったのか。
目の前で広がる会話には、"見覚え"があった。
公爵が謁見をしても意味が無いと分かっていた理由は、既に散々試した後だったからだ。
そして、これが公爵が皇帝に見切りをつける決定打となる、最後の進言になる。
この後、公爵は皇帝に反対する貴族を集め、勢力を拡大する。
そして、戦争が起きて飢餓に見舞われ、小説通りに悪政に終止符を打つべく動き出すのだ。
「これでは民が死んでしまいます! どうか、ご再考願えませんでしょうか!」
「くどい。私に二度も同じことを言わせる気か? 貴殿が最初の英雄の子孫でなければ切り捨てていた所だが――私の気が変わる前に下がれ」
「ッ・・・分かりました。陛下のご意向は・・・・・・」
カディエゴ公爵は悔しそうに顔を歪めると、この場を去った。
63
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説



社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

無自覚な
ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。
1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに
イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。
それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて
いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外
何をやっても平凡だった。
そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる
それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない
そんな存在にまで上り積めていた。
こんな僕でも優しくしてくれる義兄と
僕のことを嫌ってる義弟。
でも最近みんなの様子が変で困ってます
無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる