残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗

文字の大きさ
上 下
13 / 57
第一部

十三話

しおりを挟む
13
「チッ・・・面倒だな」

 実の兄弟にする様な事では無いが、ここまでしなければ理解出来ないのが第四皇子だ。

 軽く済ませれば、有り余った体力を人殺しの為に使うのは目に見えている。

 いつも処置を受けた後、『あなたが俺をこうしたんですよ』とでも言わんばかりに、笑顔で会いに来るが、俺が我慢すれば済む話だ。

 人が死ぬよりかはマシだろう。

 第四皇子の俺に対する感情が、家族に向けられるものかは分からない。

 だが、ここ数年、鍛錬に付き合うようになって、変に懐かれていることだけは分かった。

 平静を装いはしたものの、

 ブローチについて言及された時、俺が動揺したことに勘づかれたかもしれない。

 弱点や隙を見せれば、一瞬で呑み込まれるのが皇城だ。

 もっと気を引き締めなければ。



 皇帝から呼び出しを受けると思っていたが、一晩過ぎても俺が呼ばれることは無かった。

 今日はカディエゴ公爵が北部から謁見に来るので、皇族はみな正装を着る。

 謁見の間に足を踏み込むと、玉座に座る父が視界に入る。

 光の灯らない真っ赤な瞳と、金色の髪。

 冷たい目で俺を見下ろす皇帝の前に跪き、頭を垂れる。

「帝国の偉大なる太陽にご挨拶申し上げます。カイル・ハイデルト、皇命に従い参りました」

「表を上げろ。貴様の挨拶に要する時間など無い」

 皇帝の命に従い、玉座の横に着く。

 俺と皇帝の間には、第一皇子にしてこの国の皇太子――アーク・ハイデルトが居た。

 第三皇子である俺が、皇帝に全く関心を持たれていないことを再確認して、人当たりの良い笑みを浮かべる皇太子。

「君は余計なことを考えてはいけないよ。大丈夫、一生俺が面倒を見てあげるから」

「ありがとうございます」

 俺の頬に手を添えて、耳元で囁く皇太子。

 その言葉が意味する所は、

 皇位を狙うなら容赦はしないが、大人しくしていれば殺さずに飼ってやる、だ。

 言われなくても――皇帝の座になんて興味は無い。

 こんな場所で一生を終える位なら、決死の覚悟で脱走でも試みた方がマシだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい

オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。 今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時――― 「ちょっと待ったー!」 乱入者の声が響き渡った。 これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、 白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい そんなお話 ※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り) ※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります ※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください ※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています ※小説家になろうさんでも同時公開中

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

処理中です...