【声劇台本】お化け屋敷ガイド

茶屋

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【声劇台本】お化け屋敷ガイド

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■登場人物
 
 千堂 進 [せんどう すすむ ](♂):大学生。平凡。
 三波 千穂[みなみ  ちほ  ](♀):大学生。進の彼女で恐がり。
 田中 藤吉[たなか  とうきち](♂):お化け屋敷のガイドさん。

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■配役(2:1:0)
 
 進 (♂)(L40):
 千穂(♀)(L39):
 田中(♂)(L30):

  ※L**:セリフ数
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■台本

 <ある遊園地の敷地内>

 進  :「あぢぃ~…。」

 千穂 :「大丈夫?」

 進  :「だいじょばない。」

 千穂 :「なにそれ~? クスクス。」

 進  :「なんなんだよ、この串刺しにされてるような真夏の光線は!?」

 千穂 :「もう~、やめてよ。はずかしぃ。」

 進  :「お、あそこ涼しそうじゃないか?」

 千穂 :「えー! やだよー!」

 進  :「あれ? 千穂ぉ、こーゆーのダメなんだっけ?」

 千穂 :「え…うん。ちょっと…いい思い出がないから。」

 進  :「ん? なにかあったのか?」

 千穂 :「ううん。なんでもない。」
 千穂M:「恐さのあまり、幽霊を殴って…
      病院送りにしたなんて言えない。」

 <お化け屋敷内:入り口すぐ>

 進 :「うおー。」

 千穂:「な、なに?」

 進 :「いや、全然涼しくないなーって思ってさ~。」

 千穂:「…ふぅ。驚かさないでよ。」

 進 :「なんだよ、そんなに恐がりだったなんて知らなかったな。」

 千穂:「幽霊とかはダメなのぉ。」

 進 :「入ったばかりで、いきなり出てこねーだろ。」

 千穂:「わかんないじゃん!」

 田中:「はい、ど~も~。」

 千穂:「ひやぁ!?」

 進 :「うわっ! ちょ、千穂の声にビビったっての。」

 田中:「あ、驚かせてしまったようで、申し訳ありません。」

 進 :「…はぃ?」

 田中:「私、お化け係では無いので、驚く必要はありませんですよ。」

 千穂:「…はぁ。」

 進 :「え、なんですか? あなた。」

 田中:「あ、ご挨拶が遅れまして。
     私、田中藤吉(たなか とうきち)と申します。
     口を4つ並べた”田”に、口の真ん中に棒を差し込んだ”中”で
     田中でございます。」

 進 :「逆に分かりづらいだろ。」

 千穂:「あの、それで…何か?」

 田中:「いえいえ、”たなか”でございます。」

 千穂:「そうじゃなくて、”何でしょうか”の”何か”です。」

 田中:「あ、そうでした。
     ー本日、お客様のガイドをさせて頂きます田中藤吉です。
     もしなんでしたら、藤(とう)ちゃんとお呼びになられても、
     私は構いませんが~?」

 進 :「…で、田中さん。ガイドってなんですか?」

 田中:「(残念そうに)はぁ。こちらの屋敷内を一緒に回る者です。」

 千穂:「なにするんですか?」

 田中:「ま、とにかく先へ進みましょう! ささ、どうぞ。こちらです。」

 進 :「こんなお化け屋敷あるか?」

 千穂:「私は初耳。」
 進 :「オレだって、初耳だよ。」


 <お化け屋敷:奥>


 田中:「こちら、段差がございますのでお気をつけ下さい。」

 進 :「なんか、恐くないんだけど。」

 千穂:「私も…これなら大丈夫かも。」

 田中:「さぁ~、まもなく左手に墓場が見えてまいります。
     お墓は、このお化け屋敷を建てた時からある、由緒正しいお墓です。
     あ、もちろん本物ではありませんよ。
     発砲スチロール製の安全設計ですから、ぶつかっても大丈夫!」

 進 :「…はぁ。」

 千穂:「あはは…。」

 田中:「さぁ! お待ちかねの幽霊が出るスポットです!」

 進 :「ちょ、それ言っちゃうわけ?」

 田中:「ほら、暗くて見づらいかもしれませんが…あの井戸の中から!」

 千穂:「あの灰色の…ですか?」
 
  (井戸からお化けがドーンと出てくる!)

 田中:「ドーン! うひゃひゃー! 恐いですねー!
     この仕掛けは、スタッフの努力の結晶なんです。
     5,6回の検証を経て、最高のセッティングに仕上がっているとか!」

 進 :「少なっ!しかも、曖昧。」

 千穂:「なんか、すごく…良く出来てますね。」 

 田中:「ステキでしょう?美人でしょう? その名も【美佳さん3号】です。」

 進 :「3号って。」

 千穂:「田中さん。前のは、どうしちゃったんですか?」

 田中:「田中って、やっぱり言いづらいですよね? なんなら藤チャンで」

 千穂:「言いやすいですよ。とても。」

 田中:「(残念そうに)……。
     2号と1号についてはちょっと…。」

 進 :「言えないのかよ。
     それよりも、もっと言わなくていい事あっただろうよ。」
 
 田中:「さ、気を取り直して行きましょう!
     次は、そこの襖(ふすま)が突然開きますんで、驚いてくださいよ!」

 千穂:「…あ、はい。」

 進 :「返事するなよ。」

 千穂:「だってぇ。」

  (どんどんと奥へ進んでいく)

 田中:「次は、あの壁が回転して幽霊が出てきますよ! ほら!」

 進 :「おー。」

 千穂:「なんか、さっきの幽霊と似てる。」

 田中:「流石ですね。彼女は【美佳さん2号】です。
     実はこちらへ配属替えがあったんですねー。
     お化け屋敷の幽霊も大変です。」

 進 :「…なんの話だよ。」

 千穂:「あ、光が見える。もしかして出口?」

 田中:「はい。お疲れ様でした。これで、お化け屋敷は終わりでーす。
     ガイドは私、田中藤吉でした。楽しみいただけましたでしょうか?」

 千穂:「ええ、まぁ。なんとなく。」

 進 :「ある意味、新鮮な体験だったとも言えるか。」

 千穂:「結局、【美佳さん1号】は居なかったんだね。」

 田中:「え? 何言ってるんですか?」

 進 :「居た?」

 田中:「ええ、居ますよ。」

 千穂:「…居ま…す?」

 田中:「最初から、あなた方の後ろに。」

 進 :「ええええ!?」

  (慌てて振り返る二人)


 田中:「イッツ ア ゴースト・ジョークですよ。」

  (田中、ニヤニヤ)

 千穂:「はぁはぁ…止めてくださいよ。」

 進 :「何だよ、今のが一番驚いたぜ。」

 田中:「ほほほほほ。それは良かった。
     では、出口で記念の写真を受け取れますので、どうぞ。」

 進 :「写真?」

 千穂:「あ、そういえば入る前に書いてあったかも。」

 田中:「ええ、あの井戸の所で驚いてる姿を【盗撮】していたんですよ。」

 千穂:「言い方がちょっと…。」

 進 :「てか、驚いてなかったけどな俺たち。」

 田中:「では、ありがとうございました。また、おいで下さい。」

 進 :「んじゃ、どもー。藤(とう)ちゃん。」

 千穂:「ふふふ。」

 田中:「お客様……。
     私に、息子なんて居ましたっけ?」

 進 :「その”父ちゃん”じゃねーよ!」

 <お化け屋敷出口>

 進 :「ったく、最後までフザケタおっさんだったな。」

 千穂:「変わってて、案外面白かったかも。」
 
 進 :「写真だって、全然驚いてないし。
     寒くなるどころか、ただ疲れただけだろ。」

  (千穂は写真を眺め)

 千穂:「見てぇ。私、目が恐ぁーい!」

  (写真を覗く、進)

 進 :「千穂さぁ。田中さんに、なんか訊いてたよな。」

 千穂:「ん? そうだっけ?」

 進 :「写真の千穂の目線。何、見てんの? 指は井戸を指してるのに。」

 千穂:「…え。何って。前に居た田中さんだと思ったけど。」

 進 :「だよな、前…歩いてたんだよな。あの人。」

 千穂:「なんで? 私たち二人しか写ってないの?!」

  (二人は目を合わせ、身を震わせた)

 進 :「寒っ…。」(出来れば進&千穂)
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