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ポーション監修編
第132話 新メニューの追加とテラス席
しおりを挟む前回の更新からずいぶんと空いてしまってすみません……!
次回の更新はもう少し早めにできればと考えています。
また、あとがきでもお知らせがあります。
それなりに重要な話ですので、ぜひ目を通していただければ幸いです。
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その週末、ポーション味ドリンクの調整を終えた俺は、ディーニャにその旨を記した手紙を送った。
さらに翌日、チョコレートパフェの調整も完了し、週の半ばからメニューに加えることが決定した。
ポーション味のドリンク全10種類と、2種類のパフェが増えることになる。
これまでに行ったメニュー追加の中でも随一の規模だ。
「――ツキネ、頼めるか?」
「キュウ!」
メニュー追加日前日の夕方、俺はツキネと一緒に混雑対策を行う。
対策が甘いと痛い目を見ることは、経験からも明らかだ。
今回は特に反響が大きそうなので、対策もしっかりと考えている。
「キュキュッ!!」
「おおっ!!」
俺は拡張された空間を見て声を上げる。
現在、ツキネと共に立っている場所は店の裏口先にあるスペース。
今までは使っていなかったが、この機会に開放することにした。
元々は10畳ほどの小さな庭という感じだったが、現在は2倍近くに広がっている。
活用するにしても狭めだと思っていたところ、ツキネが任せろと鳴いたのだ。
「さすがツキネだな」
「キュウ♪」
神力による空間拡張の結界を張ったらしい。
得意気なツキネにご褒美の油揚げを与えた後、スペースにテーブルを配置していく。
イメージとしては、店先にあるテラス席といったところだろうか。
店内のテーブルよりも小さめの丸テーブル(ツキネ製)を等間隔に置き、雨避けのパラソル(ツキネ製)を取り付ける。
実際はツキネの結界が雨を防いでくれるとのことなので、パラソルは飾りのようなものであるが。
「よし。こんなもんかな」
「キュキュ!」
10分ほどで作業を終えた俺は、完成したテラス席をぐるりと見回す。
急遽用意したスペースにしては、いい感じの出来映えだ。
また、裏口に繋がっていた扉も、利便性のために外してある。
金具で取り外しが可能なため、元に戻す際も問題ない。
その後、寮のリビングで一息ついた俺は、従業員達をテラス席に案内する。
クービスは簡易キッチンで作業中だったので、ビア、フルール、カフェラテ姉弟の4人だ。
「わあ! これがメグルの言ってたテラス席なんだね!」
「ん。いい感じ」
「結構な席数がありますね!」
「なんか随分広いような……?」
「ああ、それは――」
首を傾げるラテに、ツキネの結界の件を説明する。
「空間を拡張……すごいですね」
「キュウッ♪」
ラテの視線を受けたツキネが胸を反らす。
「それで、店長。この席はしばらくパフェ用にするんでしたっけ?」
「しばらくはな」
俺はカフィに答える。
今回、裏口のスペースを利用することに決めたのは、パフェの追加を考慮してのことだ。
スイーツは女性人気が高いこともあり、パフェ単体を目的として訪れるお客さんも多いだろう。
そのため、パフェ単体やドリンクセットで頼む人達はテラス席へと案内し、回転率の向上を図る。
また、カフィとラテへの負担を減らすため、パフェのみの注文は〝半セルフ方式〟にする予定だ。
厨房の出口近くに簡易的な受け取り台を設け、お客さんにはそこでパフェを受け取ってもらう。
パフェを受け取ったお客さんは自らテラス席に足を運び、食後のパフェグラス等についても、返却用のボックス(ツキネによる空間拡張&ガラス割れ防止機能付き)を用意する。
しばらくすればパフェ人気も落ち着くはずなので、今後どうするかは未定だが、当面はそのような形でテラス席を活用していく。
「ドリンクのほうも問題なさそうだし、これで大丈夫かな」
皆への説明を終えた俺は、表の入り口から店外に出て、テイクアウト窓口に目を向ける。
ポーションドリンクは店内メニューにも加えるつもりだが、テイクアウトにも対応している。
昨日、ドリンクバー装置の開発でお世話になった一級魔道具職人、ディッシュさんの工房を訪ねたところ、ちょうど作り終えたという装置を売ってもらえたのだ。
本来は他のお客さん用に作ったものだったそうだが、「この後また作ればいいですから。それに、メグルさんには稼がせてもらいましたからね」とディッシュさんは言った。
しかも、10種類あるポーションドリンクのラインナップに合わせて、ボタンとジュース容器のスロット数を調整してくれた。
最悪、数週間単位で待つことも考えていたので、ディッシュさんには感謝しかない。
「今度、無料で食事でもサービスしようかな」
俺はそう呟きながら、テイクアウト窓口をあとにする。
ポーションドリンク専用の装置が手に入ったので、テイクアウトでの対応はスムーズにいきそうだ。
ある程度行列がのびることは予想されるが、ドリンクバーはセルフ方式なので、クービスの負担はあまり変わらない。
それから、クービスも交えて皆で夕食をとった俺達は、明日のメニュー追加と営業の流れについて今一度確認する。
「いよいよパフェが加わるんだね!」
「ん。この時を待っていた……!」
「フルールさん、なんだかテンションが高いですね」
カフィの言葉に笑い声が上がる。
そうして迎えた翌朝。
ついにパフェとポーションドリンクをお披露目する時がやってきた。
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【ご報告】
現在発売中の『【味覚創造】は万能です』第3巻ですが、こちらの3巻にて完結となります。
願わくは長らく続く作品になってほしいところではありましたが、力及ばず……という形です。
曲がりなりにも3巻まで刊行できたのは書籍をご購入くださった皆様のおかげなので、心より感謝しています。
また、今後のWeb連載についてですが、書籍版が完結したこともあり、現在更新中の第4章で一度終わりにする予定です。
この場で書くと冗長になってしまいますので、詳しい話は近況ボードにて記しています。
以上、報告失礼いたしました。
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