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3巻

3-3

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「――かしこまりました。お調べいたしますね」

 ギルド嬢はカードを返却し、慣れた手付きで装置を操作する。

「ええと、応募者は……うわあ」
「どうしたんですか?」

 ぴたりと手を止めたギルド嬢に、どうしたのだろうと尋ねる。

「もしかして、全然集まってない感じですか?」
「いえ、むしろ逆と言いますか……かなりの人数が集まったようでして」
「かなりの人数って、もしかして何十人も……?」

 募集をかけていた期間はおよそ一週間。
 それほど目立つ場所には張っていなかったので、おそらくは数人から十人前後、多くても二、三十人ほどの応募になるだろうと思っていたが……

「いえ、そのですね……」

 ギルド嬢は苦笑いを浮かべ、ためらいがちに口を開く。

「ざっと、三百人ほど」
「三百人っ!?」
「はい……厳密には二百九十一人ですが」
「……まじですか」

 応募者はまさかの三百人弱。
 予想をはるかに超えた人数に俺は呆然ぼうぜんと立ち尽くす。

「とりあえず履歴書りれきしょを持ってきますね」

 ギルド嬢はカウンターの奥に行くと、大量の紙束を抱えて戻ってくる。

「これは……すごいですね」

 紙束の厚みはぱっと見で十数センチ。
 一枚一枚が厚めであることを考慮こうりょしても恐ろしい分量だ。

「この人数を相手するのは大変でしょうし、ある程度候補者を絞ったらお声がけください。絞られた候補者達に、ギルドから面接の件を伝えます」
「いいんですか? ありがとうございます」
「ええ。それと、面接場所はどうされますか? 自分の店で行う方もいらっしゃいますが、ギルドの一室を貸し出すことも可能ですよ」
「そうなんですか?」
「ええ、貸し出し料はいただくことになりますが。やってきた応募者の受付はこちらで行うので、候補者が多い場合は楽かと思います」
「そうですね……」

 店や家の一階を使うことも考えていたが、応募者が多いと管理が難しい。
 それに、トラブルが起きた場合も対応が面倒だ。
 ギルドが管理してくれるのであれば任せてしまいたい。

「貸し出しをお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました。料金ですが――」

 ギルド嬢はそう言って、貸し出し料について説明する。
 部屋の大きさにもよるが、平均で一時間あたり五千パストがかかるとのことだ。
 お金の面は問題ないので、それで大丈夫だと頷いておく。

「あとは貸し出し可能な日程ですが……最短で四日後になりますね」
「四日後ですか」
「ええ。その次となると…………しばらく空きまして、十日後の貸し出しとなります」
「なるほど」

 単純に考えれば四日後のほうがいいが、問題となるのは候補者絞りにかかる時間だ。
 一旦いったんギルドを通して面接の件を伝えることを考慮すると、明日か明後日までには候補者を絞る必要があるだろう。

「うーん……ギリギリのスケジュールだけど……」

 俺はしばらくその場で考え込む。
 急ぎ候補者を絞る必要はあるが、オープンを待つお客さん達のためにも、早められる部分は早めたい。

「四日後の貸し出しでお願いします」
「かしこまりました。そうなると、そうですね……明日までに候補者を絞っていただきたいのですが、よろしいですか?」
「はい。なんとか絞ってみます」

 そうして四日後の部屋を押さえた俺は、貸し出し料を前払いして料理人ギルドをあとにした。


 早足で帰路を急ぎ、従業員寮に帰宅すると、リビングにいたビア達に応募者の件を伝える。

「――三百人!?」
「めちゃくちゃ集まったみたいでさ。明日までに面接候補者を絞ることになった。さっそくだけど、俺は自室で選考作業をしてくるよ」

 目を丸くするビア達にそう言って階段を上ろうとしたところ、「待って!」とビアに引き留められる。

「ボクも選考を手伝うよ。メグル一人じゃ大変でしょ?」
「いいのか?」
「もちろん! 三百人もいれば条件から外れる応募者も多そうだし、そういう人を弾くくらいならボクでもできるから」

 ビアが胸を張って言うと、隣のフルールも「ん」と首肯する。

「私もできる範囲なら手伝える」
「ビア、フルール……二人ともありがとう」

 二人の厚意に感謝して、リビングで書類選考の準備をする。
 リュックから出した履歴書の束をテーブルに置くと、ビアが驚きの声を漏らした。

「三百人分……こうして見るとすごいね」
「びっくりだよな。まさかこんなに集まるなんて」

 ギルドの掲示板に募集要項を張ったのは俺だが、場所はあくまでも目立たない一角だった。
 大々的に宣伝したわけでもないし、派手なデザインを使ったわけでもない。
 店名と軽い概要をせ、淡々と募集要項を記しただけだ。

「ん。きっとフェスの影響」
「だよなぁ……」

 新店フェスで二位の票数を獲り、一位のピルツさんから触れられた記事の影響は、いまだに長い尾を引いている。
 もちろん、認知されることは嬉しいのだが、これだけの応募者が集まるとさすがに気圧けおされるレベルだ。
 思わず苦笑いしながら、履歴書の束を目測で三等分する。

「それじゃあまずは、条件に合わない人がいないかチェックしよう」
「オッケー! 料理人希望の人とかがいたら弾いちゃっていいんだよね?」
「ああ、とにかく数が多いからな。条件から外れる場合は機械的に除外していこう。これと照らし合わせてくれ」

 俺はそう言って、テーブルに募集要項の紙を出す。


 ■募集要項■
   仕事内容   :ホールでの給仕・会計
          (※料理人は募集しておりません)
   応募条件   :週一休みで出勤できること
           文字の読み書きに堪能たんのうなこと
           お金の計算ができること
          (※種族・年齢・性別は問いません)
   給与     :面接時に相談
   採用予定人数 :二、三名


 内容は概ねこんな感じで、かなり大雑把に作ったものだ。
 雇いたいのはホール担当なので、料理人は募集していないむねただし書きで強調している。

「うーん、料理人希望の人も結構いるな……」

 手元の束をめくりチェックしていくこと数分。
 四、五人に一人は厨房ちゅうぼう勤務を希望していて、中には長文でアピールしている人もいた。
 熱意はひしひしと伝わってくるのだが、残念ながら面接の対象外だ。
 俺のスキル特性上、調理のサポートは不要である。

「あとは、文字が汚すぎる人もなぁ……」

 神様のサポートのおかげか異世界の文字は読み書きできるが、だからといってどんな字でも読めるわけではない。
 あまりにも崩しすぎた字や、誤字の程度がひどい字等は、日本語のそれと同じように解読するのが難しい。
 注文をとる際は注文票にメニューを書き入れてもらうため、残念ながらそのような人達も選考から外していく。

「ビア達はどうだ?」
「ボクのところも結構弾いてるかな」
「ん。二人に一人は弾く」

 ビアとフルールが担当する履歴書も概ね俺のものと同じらしい。
 厨房で働くことを希望している人、文字の解読が難しい人が多いようで、思ったよりも絞り込めているみたいだ。
 それから約十分、作業開始から十五分ほどで、一巡目のチェックが終了。
 機械的な除外だけでも、元の二百九十一人から半分以下の百五人まで候補者を減らすことができた。
 数だけ見ればまだまだ多いように感じるが、この百五人はあくまで〝最低限の条件を満たした人達〟に過ぎない。
 志望動機が一切ない人や、履歴書がスカスカの人もひとまず通過させたので、そういった人達を弾けば一気に数を減らせそうだ。

「びっしり書いてくれている熱心な人もいたからな。スカスカの人達が悪いってわけじゃないんだけど、今回は外させてもらおう」

 文字量が少なすぎる人。
 応募の動機が希薄きはくな人。
 これらの人達は除外することに決め、俺達は二巡目のチェックを行う。
 結果、さらに十五分ほどで四十二人まで絞り込めた。

「四十二人……だいぶ絞り込めたな」
「まだ少なくはないけど、なんとかなりそうだね!」
「ああ、助かった」

 俺はほっと胸を撫で下ろす。
 ギルドで応募者数を聞いた時はどうなることかと思ったが、応募者の緩さに助けられた。
 もし日本で見るような厳格な履歴書ばかりだったら……そう考えると身震みぶるいがする。
 それに、一気に楽になったとはいえ、これで安心というわけでもない。
 二次チェックを通過した四十二人は、熱意のある長文の応募者がメイン。
 先ほどまでの機械的なやり方は通じず、しっかり読み込む必要がある。
 そのため、これから先は俺が一枚ずつ目を通し、ビアとフルールには迷った時の相談を頼むことにした。

ひまな時間も多いだろうから、何かつまむものを作るよ……何か食べたい物はあるか?」

 そう尋ねたところ、ビアはジャーキー等のつまみ類、フルールはパフェを希望したので、それぞれ『おつまみセット』と『特盛パフェ』を生成する。
 ツキネにもおやつを作ろうかと思ったのだが、いつの間にか眠っていたのでそっとしておく。

「さてと……頑張って今日中に終わらせるぞ」

 四十二枚の書類を前に、気合を入れ直す俺。
 ビアにもらった気付けポーション――いわゆる元の世界で言うエナジードリンクのようなものをあおり、最後の選考作業を開始する。
 最終選考は予想通り難航し、日が暮れた後も長らく続いた。
 どうするべきか迷う応募者達も多く、一人残ったリビングで眠くなるまで作業を続けた。
 結局選考が終わったのは、日付が変わる直前のこと。
 集中力を使い果たした俺は、ベッドに倒れ込んで眠りについたのだった。



 第四話 改装と久々の狩り


「――キュウ!」
「ん……朝か」

 翌朝、俺はツキネに顔をめられて起床する。
 軽い朝食をとった後、リビングにビアとフルールのためのクッキーを置き、料理人ギルドへと向かう。
 絞り込んだ応募者の報告はなるべく早くしたほうがいい。
 ギルドに到着し、店舗運営のカウンターへ行くと、昨日と同じギルド嬢が受付をしていた。
 彼女に絞り込みが終わった旨を伝え、選定済みの履歴書を渡す。
 結局、今回は十一人が選考を通過した。

「かしこまりました。では、こちらの方々に面接の件を伝えておきますね」
「はい、よろしくお願いします」

 ギルドから家に戻った俺は、まだ少し眠いため一、二時間の仮眠を取る。
 仮眠後、気付けポーションで完全に疲れをとり、店のキッチンへ移動した。

「ツキネ、また一仕事頼んでもいいか?」
「キュウッ!」

 仕事というのはキッチンの改装作業。
 書類選考中にふと思ったのだが、ホール担当でも厨房に入る機会はある。
 生成した料理を受け取ったり、注文を伝えに来たりといった場面だ。
 そうなると、スキルの使用場面を見られないような工夫が求められる。
 できることなら、厨房の奥に入らずとも料理を受け取れる構造が望ましい。
 無論、雇用こようと同時に他言無用の契約魔法を結ぶ手もあるが、言動をしばる魔法を強制するのも考えものだ。
 仮に契約を結ぶにしても、新従業員としっかり相談の上、彼らが希望した場合に限りたい。
 それに実は、これまでに一度、厨房をのぞきに人がやってくるというトラブルが発生している。
 その際はツキネが止めて事なきを得たが、そうしたリスクをける意味でも改装の意義は十分にあった。

「どうするのがベストかな……」

 思いつく方法の一つは、厨房の壁に穴を作るというもの。
 厨房とホールを結び、注文票や料理の受け渡しをする穴だ。
 単純な方法ではあるが、穴の位置を工夫すれば調理姿を見られずに済む。

「ただ、なんとなく疎外感そがいかんがな……」

 やむを得ない理由があるとはいえ、穴を通した事務的なやり取りは従業員に疎外感を与えかねない。
 また、一時に注文が殺到した場合、穴で料理の渋滞じゅうたいが起きる恐れもある。

「ツキネは何か思いつかないか?」
「キュウ? キュ……」

 ツキネは考え込む様子を見せた後、何かをひらめいたように顔を上げる。

「キュウ! キュキュウ! キュキュッキュ!!」
「おお! そんなこともできるのか?」

 ツキネが提案してくれたのは、〝認識阻害結界〟の利用。
 俺の周りに結界を張っておくことで、結界の外から中の様子を認識できなくなるらしい。
 原理はいまいちわからないが、聞いた感じだと幻術げんじゅつの一種のようである。

「キュッ! キュキュ!」
「なるほど! それなら完璧だな」

 ツキネのプランは次の通りだ。
 まず、認識阻害結界をキッチンの中心部――普段スキルを使うエリアに張る。
 これだけでも概ね問題はないが、さらにもう一工夫。
 認識阻害結界の少し外側に、立ち入り防止の結界を張っておく。
 こちらの結界は以前の店の居住エリアでも使っていたもので、ツキネが許可した者以外を通さない効果がある。
 この方法を使って料理等の受け渡しを結界外でおこなえば、安全にリスクを回避できる。

「キュキュ!」
「はは、さすがツキネだな」

 ドヤ顔のツキネを撫で回し、さっそく結界を張ってもらう。一度張れば、永続的に効果があるらしいので安心だ。
 さらに、料理等の受け渡しを楽にするため新しい台も作ってもらった。
 注文票用、料理用、下げた食器用の三台に分け、厨房の入り口付近に設置する。
 こうして、厨房の改装は一瞬で完了するのだった。


 その翌日。
 俺はツキネを連れて、久々の狩りに出ることにした。
 面接までは特にやることもないし、ツキネのストレス発散と個人的な息抜きを兼ねている。
 狩りの話をするとビアとフルールもぜひ行きたいと言ったので、約二カ月前の新店フェスの準備で狩りをした時と同じフルメンバーだ。
 どうせならクエストを受注しようと冒険者ギルドに立ち寄り、ビアのギルドカードで依頼を受ける。
 クエスト内容は、ロックベアと呼ばれるDランクの魔物の討伐。
 全身を硬い岩におおわれた熊型の魔物で、その頑丈がんじょうさが厄介とのことだったが――我らがツキネの前では意味がない。

「キュウ!」
「ギャウンッ……!」

 対峙たいじから数秒後には勝負が決し、クエストはあっさり達成された。

「さすがツキネちゃんだね!」
「ん。Sランク冒険者級」
「キュウ♪」

 得意気なツキネのかわいらしさに頬を緩ませた俺達は、ひらけた場所で昼食をとる。
 メニューは前回の狩りで作ったカツサンドと、シンプルな玉子のサンドイッチ。青空の下で食べるサンドイッチは、どうしてこんなにも美味うまいのか。
 室内で食べる時とは一味違った魅力がある。

「そういえばさ。サンドイッチってこの前食べたハンバーガーに似てるよね!」
「ん。言われてみれば似てる」
「ハンバーガーはサンドイッチの一種だからな。パンの間に具材を挟んだり、上に乗せたりした物を総称してサンドイッチと呼ぶんだよ。手に持って食べられるから、こうして外で食べるのにぴったりだよな」

 食べ歩きでつちかった蘊蓄うんちくを披露しながら、俺はサンドイッチを頬張る。
 和やかな昼食を終えた俺達は、来た道をゆっくり戻りはじめた。

「キュウ」
「はは、楽しかったか?」
「キュ……」

 久々にはしゃいで疲れたのだろう。
 満足気に小さく鳴くと、腕の中で寝息を立てはじめるツキネ。
 ビア達も楽しんでくれたようだし、有意義な休養になったと思う。
 そんな息抜きの一日が終わり、のんびりと翌日を過ごした後――ついに面接日がやってきた。



 第五話 面接


 料理人ギルドに到着したのは、面接開始時刻の三十分前だった。
 今回の面接は、ビア、フルールも参加するので、彼女達にも来てもらっている。
 受付で用件を話すと、「用意ができております」と二階に案内された。

「声をかけた人達はどうでしたか? 何人くらい来そうですかね」

 階段を上りながら、ギルド嬢に質問する。
 十一人もいたので辞退者が出てもおかしくはないと思っていたのだが、全員が参加するとのことだ。

「一応こちらが面接順のリストとなります。多少前後する可能性もありますが、参考になさってください」
「わざわざありがとうございます」

 候補者のリストと履歴書を受け取った俺達は、面接用の部屋に入る。
 前世の面接でよく見た堅苦しい雰囲気の部屋ではなく、ティータイム等で使用する優雅な空間という感じだ。
 テーブルを挟んでついに置かれたソファーがあったため、入り口を向く形で座って時間を潰す。

「どんな人達が来るのかなぁ?」
「良い人に来てほしい」
「紙面上だけじゃわからない部分も多いからな」

 持参したコップに生成したお茶を飲みながら、ビアとフルールの言葉に答える。
 履歴書には文字の情報しか載っておらず、当然候補者の顔や雰囲気はわからない。
 書類上では皆良さそうな感じなので、あとは実際に話してみてどう感じるか。
 どんな人に来てほしいか、書類で一番良いのは誰か等、雑談しながら待つこと約三十分、入り口のドアがノックされる。

「おっ、来たな。どうぞ!」
「失礼します」

 俺の呼びかけで入ってきたのは、つのの生えた長身の男性。
 手元の履歴書によると、鬼人きじんという種族のようだ。
 ここはいわゆるファンタジー世界のため、多種多様な種族が存在する。
 今日の面接で来るのもほぼ全員別々の種族だった。
 一人あたりの面接時間は十分程度と短いため、俺を中心に志望動機等を訊いていく。

「――ありがとうございました。結果はギルドを通して後日伝えます」

 鬼人族の男性を見送り、「ふぅ」と息を吐き出す俺。
 人事の仕事は初めての経験なので、なんだか変な気持ちになる。
 あんな感じでよかったのかな?
 前世で覚えていた日本スタイルで面接をしたが、問題はなかっただろうか?
 心配が胸をよぎるのも束の間、間髪容かんはついれずに二人目のノックが聞こえる。

「次は……順番通りなら魚人族の女性か」

 二人目の面接も一人目と同じ形で終え、三人目のドワーフの男性、四人目の竜人の男性……と面接を進めていく。

「えーと、次は……どうぞ!」

 せわしなくメモをとっては次の人を呼び、何度も面接を繰り返す。
 そうして相手を見極め続けること約二時間。
 ようやく最後――十一人目の面接が終わる。

「失礼します」

 十一人目の男性が退室し、ドアがパタリと閉まるのを見て、俺は大きく伸びをする。

「はぁー……終わったぁ。やっぱ慣れないことは疲れるな」
「そう? 少し堅さはあったけど、ちゃんとさまになってたよ?」
「ん。ちゃんとしすぎてるくらいだった」
「……それってめてるのか?」
「キュウ!」

 フルールの言葉に苦笑していると、肩に乗っていたツキネが降りてくる。
 よくやっていたとはげましてくれているようだ。

「やっぱ堅すぎたかな?」
「うーん、どうだろう……あんな感じの面接もあるんじゃない?」
「ん。店によって全然違う」

 フルールが頷きながら言う。
 彼女はスカウトを何度も受けていたので、店側の雰囲気にも詳しいのだろう。


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