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3巻
3-1
しおりを挟む第一話 引っ越し
俺の名前は日之本巡。
食べ歩きが趣味のしがない会社員だった俺は、山奥にある幻の店を目指す道中、滑落して命を落とす。
しかし、幻の店の店主であった食神の爺さんに魂を拾われ、食文化が発達した異世界に転生を果たすこととなった。
転生の際、食神の爺さんから授かったのは、【味覚創造】という名のスキル。
頭に思い浮かべた味を料理として具現化可能で、細かい味の調整や見た目・食感の調整もできるようになっている。
そんな夢のようなスキルを得た俺は、酒蔵の娘でドワーフのビア、白狐のツキネと共に、食の都エッセンでレストラン『グルメの家』を開店した。
順調な営業が続く中、新たな従業員として装飾人のフルールを加えた俺達は、新店のみが参加可能な〝新店フェス〟で二位という好成績を収める。
さらには、そのフェスで一位を獲っていた九つ星料理人のピルツさんからも太鼓判を押された。九つ星というのは、星数で表される料理人ランクの中でも上位に入る、一流のランクだ。
そんなピルツさんが認めたこともあり、『グルメの家』とそのシェフである俺の注目度は急上昇。
料理人ギルド王都本部のギルドマスター、リチェッタさんの呼び出しを受け、よりハイレベルな区内への移転を勧められた。
彼女の提案について思うところもあった俺は、考えた末に移転を決定し、新天地での開店に向けて現在の店を閉めるのだった――
移転のために『グルメの家』を閉店して数日。
俺は店の皆と共に、商人ギルドを訪れていた。
受付でギルドカードを私、訪問の目的を伝えると、職員が驚いた顔をする。
「次の店舗用の物件探しですか……メグル様のお話は耳にしていましたが、もう移転されるのですか?」
「行列が他の店にも伸びてしまいまして。区外というのもあって、このままじゃ迷惑になると思ったんです」
この王都はグルメ特区を中心に一区、二区、三区と円状に広がる構造になっていて、さらにその外側は区外と呼ばれ、駆け出し料理人の店が多い。
長い行列はそうした新店のやっかみを受けてしまう上、集客の妨げにもなってしまう。
「ああ、行列が理由ですか。ずいぶんと話題になりましたからね。たしかに区外では悪目立ちしそうです」
人がよさそうな笑みを浮かべながら、ギルドカードを返却する職員。
「それで、今回はどのような物件をお探しで?」
「そうですね……場所は一区か二区で、広さは今の物件よりも広めがいいです。あとは――」
希望の場所、大体の広さ、その他いくつかの希望条件について、時折挟まれる質問に答えながら伝えていく。
「なるほど、わかりました。条件を基に良さそうな物件を調べてみます」
「お願いします」
「資料を出すまでしばらく時間がかかりますが、その間はどうされますか?」
職員からそう言われたので、カウンターを離れて時間を潰すことにした。
ギルド内にはたくさんの掲示板があるため、時間潰しにはそれほど困らない。
「ふーん、料理コンテストの案内か。やっぱ他の地方でも盛んなんだな」
王都から離れた土地の料理コンテスト情報も張られていたので、それを見ながら待つこと数分。
資料を手にしたギルド職員が思いの外早くやってきた。
「お待たせしました。いくつか候補の資料を持ってきましたよ」
「ありがとうございます。結構多いですね」
職員が持ってきた資料は、見たところ十枚以上ある。
「ええ、条件に合った物件を五つと、少し外れますが大まかな条件を満たす物件が三つ。あとはメグル様の要望を考慮に入れつつ、個人的におすすめしたい物件がいくつかあります」
職員はパラパラと資料をめくりながら答える。
「ただ、それぞれの場所が離れているので、全て見て回るにはかなり時間がかかります。この場で数軒に絞っていただけると助かるのですが、よろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。まずはこちらの物件なのですが……」
職員はさっそく一軒目の資料を提示し、物件の説明を始めた。
資料には簡単な間取りと店のキャパシティ、キッチン設備の概要等が記されている。
異世界のテイストは入っているが、概ね前世の物件情報と似た感じだ。
「次にこちらの物件は――」
一軒目の説明を終えた職員は、そのまま二軒目の説明に移る。
俺達が「ふむふむ」と相槌を打つ中、テンポよく説明は進んでいき、スムーズに五軒目までの説明が終わった。
「うーん、どれもいい感じですね……」
腕を組んで呟いた俺に、ビア達がうんうんと頷く。
五つ目までの物件は全て、希望条件を満たしたものだった。
店内の広さも申し分ないし、現在の店舗と同じく二階に居住スペースがある。
キッチンスペックもほぼ同水準で、建物自体の差はあまりないだろう。
あとは立地の問題だが、俺には王都の土地勘がない。
物件周辺の雰囲気は実際に見ないとわからないので、絞り込むのが難しそうだ。
「とりあえず、他の物件の説明もお願いしていいですか?」
俺はそう言って、ひとまず六軒目以降の説明を聞く。
先ほどと違って条件に合わない部分もあるが、賃料の安さやスペック等に秀でた優良物件とのことらしい。
さすが優良というだけあり、魅力的なラインナップとなっていた。
「でも二階がないのはちょっと気になるね」
「ん。私も思った」
「そうだな……」
俺はビアとフルールの言葉に同意する。
どれも素晴らしい物件ではあるが、一軒を除き二階の居住スペースがない。
居住スペースはなるべく欲しいところなので、その点が惜しいと感じてしまう。
唯一居住スペースがある一軒も、部屋の狭さが気になるため、総合的には最初の五軒のほうが良さそうだ。
「残りは、個人的におすすめしたい物件ですが……」
そして最後に、職員が独自にセレクトした物件をいくつか紹介してもらう。
面白い設備や外装、超好立地の物件等、個性的な物件が揃っている。
「なるほど。でもやっぱり、居住スペースはついてないですよね……うーん」
家用に別の物件を借りられないわけではないが、住宅用物件が集まったエリアは飲食店のエリアから少し離れた場所にある。
階下に行くだけでいい状態に慣れた今、通勤の手間を省けるのであればそちらのほうが良いと感じる。
やはり最初の五軒が候補かな……と考えはじめた時、職員が紹介したある一つの物件が俺の興味を惹いた。
「これって……」
その翌日。
「いやあ、即決しちゃったなあ」
二区にある、次の店舗用物件を見ながら俺は苦笑する。
昨日、俺はとある一つの物件に興味を惹かれ、内見先のリストに加えた。
その後、他の候補物件と合わせて内見を行ったが、最後に訪れたその物件――いま目の前にあるそれが一番魅力的に感じた。
ビアとフルールも同じ物件を気に入り、ツキネも俺達の意見に賛同した。
そんなわけで俺は、その場で契約を即決。
内見からギルドに戻った後、区外の物件――前店舗の解約を申し込んだ。
契約が切れるのは来週末とのことだったが、今日から新しい物件に住んで構わないようなので、さっそく引っ越しにやってきたのだ。
「まさか即日で引っ越すとはな……」
地球の常識で考えれば、段ボール詰めや家具の配送手配で最低数日は必要になる。
俺も元々は数日かけて引っ越すつもりだったのだが、「今日引っ越してもいいんじゃない?」というビア達の一言で移動が決定した。
ちょっとした荷物は魔法袋――見た目以上の容量になる空間魔法がかかった袋に収納した。
そして家具類については、もともとツキネの力で生み出したものなので、その力で一度解体してしまい、移動先で新しく作り直そうという話になった。
一番の面倒事は家具類の処理だと考えていたので、まさにツキネ様様だ。
ちなみに前の店舗同様、今回の物件についても内装のリノベーションが認められている。
まずは各自の部屋を整えることが先決だが、時間が余れば内装決めに取り掛かるつもりだ。
「メグルー! どうしたの?」
新しい内装のことを考えていると、背中からビアの声がかかる。
早く自分の部屋に入りたくてうずうずしている様子だ。
「ああ、ごめんごめん。それじゃとりあえず、住むほうの建物に行こうか」
俺は笑いながら返すと、目の前の店舗用物件を離れ、隣にある二階建ての建物へと向かう。
そう、今回俺が借りた物件は合計で二軒。
店舗用の建物が一軒と、居住用の建物が一軒という、思い切った決断の結果であった。
こちらは俺達の家となるわけだが、その外観はどちらかと言えば寮に近い。
実際、従業員用の寮として作られた建物らしく、商人ギルドの職員も、セットでの契約が基本になると言っていた。
従業員寮という存在は完全に頭から抜けていたので、まさに目から鱗の物件である。
「よし、入るか」
中に入った俺達は、がらんとした廊下を進みながら二階に向かう。
建物内の部屋数は一階に三部屋と二階に四部屋で計七部屋。
一階の部屋が少ないのは皆で集まるためのリビングスペースがあるためだが、それでも十分な部屋数がある。
「改めて見るとかなり広いね」
「ん、贅沢」
「そうだな。だけど、今後のためを思えばいい契約かな」
ビアとフルールの言葉に頷きながら言う。
衝動買い……衝動契約? にしては結構な広さの物件だが、特段後悔はしていない。
これから増えるであろう従業員達が住むことを考えれば、余裕があることはいいことだ。
ちなみに賃料は、店舗用物件と合わせて月あたり八十二万パスト。
一パストはほぼ一円なので、一カ月で約八十万円というところか。
場所が一区からほど近いこともあって、前の店舗よりも賃料がぐっと高くなるが、手元の資金は十分にある。
王都への道中で狩ったイビルタイガーの売却で得た千五百万パスト、前店舗の営業による収益に加え、先日の新店フェスでもそこそこの収益があったのだ。
酒以外の料理は全部俺のスキルで作っていて、食材の仕入れ値がほぼゼロであることから、使わなければお金は貯まる一方である。
そのため、必要な投資であれば積極的に行っていきたい。
「それじゃあ、始めようか」
二階に上がった俺は、ツキネの力を借りて皆の部屋を準備していく。
「まずは……」
最初に向かうのは、俺とツキネの部屋。
表の通り側に位置した二部屋のうちの一つである。
「ツキネ、頼んだ」
「キュウ♪」
一部屋の広さは以前の部屋と同程度なので、似たような配置でベッドを出してもらう。
「他の家具類も頼む」
「キュウッ♪」
家具一式を揃えてもらった後は、魔法袋から小物類を出していくだけ。
ものの十分足らずで、俺達の部屋が完成した。
「よし、次の部屋に行こう」
それから俺達は、ビアとフルールの部屋もサクッと準備する。
俺とツキネの部屋から見て向かいにあるのがビアの部屋、その隣にあるのがフルールの部屋ということになった。
二人は今まで、同室にある二段ベッドを使っていたから、これでようやく自身の部屋ができるわけだ。
準備自体は先ほどと同じやり方なので、二人の部屋もそれぞれ十分程度で完成する。
間に合わせなので大雑把な点はあるが、ひとまず寝床は確保できた。
「二段ベッドも楽しかったけど、やっぱり自分の部屋っていいよね!」
「ん。自由な空間」
「はは、喜んでくれて何よりだよ」
「キュウ♪」
自分専用の部屋に喜ぶ二人を見ながら、俺は腕の中のツキネを撫でる。
ビアはもちろん、フルールも珍しく頬を上気させ、興奮気味に口を開いた。
「これでいろんな物を置ける」
「物って……ああ、芸術品か」
「ん! 散らかしても迷惑はかからない」
これまではビアと同室の生活だったので、散らかさないように我慢していたようだ。
「そういえば、初めて会った時も……」
最初にフルールと会った学校の部屋は、様々な美術品で溢れていた。
芸術家肌の彼女にとっては、物に囲まれた環境のほうが落ち着くのかもしれない。
こうして話している間にも、魔法袋から美術品を取り出しては、部屋のあちこちに飾っていた。
「さて。部屋も住める状態になったし、そうだな……一時間くらい休んだら店のほうにも行ってみるか」
「うん! そうしよう!」
「ん。わかった」
「じゃあまた一時間後、リビングで」
そんなわけで、ツキネと共に自室へ戻る。
設置したてのベッドに座り、抱えていたツキネを床に降ろした。
「キュキュ!」
「気に入ったか? よかった」
俺はそう言いながら、部屋を駆け回るツキネを見る。
家具類は以前とほぼ同じだが、新しい部屋の空気が楽しいのだろう。
ベッドから立ち上がり、窓から表通りを見下ろすと、多くの飲食店がお客さんで賑わっていた。
「さすが区内……窓からの景色もだいぶ違うな」
区外の通りとは一味とは違った、いかにも〝食の街〟という眺めに、なんだかテンションが上がってくる。
本当の意味で王都への挑戦が始まるような、静かな胸の高鳴りだ。
「キュウ!」
「ん? おやつか。用意するよ」
ひとしきり景色を眺めた俺は、ツキネのおやつを作ったり、ちょっとしたスナックのメニューを作ったりして時間を潰す。
「そろそろかな」
「キュキュ!」
集合時間まで残り五分となったので、皿を片付けて部屋を出る。
リビングに着いたのは俺が最初だったが、すぐにビアとフルールが来て全員が揃う。
「じゃあ行こうか」
「オッケー!」
「ん」
寮を出た俺達は、隣の建物に移動する。
店舗用に契約したのは一階建ての物件だが、床面積は前の店舗の一・五倍以上。
天井も高めの造りなので、全体的にかなり広々とした印象だ。
「今度からここで働くんだね!」
「ん。広くていい感じ」
店内を見回したビアとフルールが、ワクワクした様子で言う。
「そうだな。高さがあるから、前より二、三倍広くなった感じがする」
俺は頷いて言うと、腕に抱いたツキネを見る。
「ツキネ。さっそくなんだけど、前の時みたいに手伝ってもらっていいか?」
「キュウ?」
「店舗の内装作りをしたくてさ。テーブルとか小物類とかをツキネに作ってほしいんだ」
前の店舗では、ツキネの家具を生み出す能力を使って、内装を完成させたのだ。
「キュキュウッ!!」
任せて! と鳴いたツキネは、元気よく腕から飛び降りる。
店内を観察するように数周した後、足元に来て「キュウ?」と首を傾げた。
どんな家具類が希望かという質問である。
「そうだなあ……基本的には前回と同じ感じで、ノスタルジック感を出せたらいいなとは思うんだけど……」
前の店舗のコンセプトは、木の素材を生かした懐かしさのあるデザインだった。
外観も素朴な見た目だったので、デザインセンスに欠けた俺でもすぐに方向性を決められた。
かなりいい内装だったと思うし、似たような雰囲気を作れば失敗はなさそうだ。
「前と同じ感じにするの? 外観は結構前と違うけど」
「んー……まあ、それはたしかに」
ビアからの質問に俺は腕を組む。
彼女が言うように、今回の建物は以前と比べてかなりお洒落だ。
壁は一面が白く塗られ、シックな黒扉には綺麗なガラス窓がついている。
ヨーロッパの街並みが似合う外観といえばわかりやすい。
「前と同じコンセプトだと、店内が浮いた感じにならない?」
「それもそうだな……外観と合ったデザインのほうがいいか」
俺はそう言って「うーん」と考え込む。
デザインを変えるのは構わないが、あいにく俺にはデザインセンスがない。
ビア達の意見も聞いてみるかと考えた時、ふとフルールの姿が目に留まる。
「ああ、そういえば。フルールって料理の装飾が得意だけど、内装のデザインとかも得意だったりしないか?」
普段から美術品を集めているため、料理以外に興味がないわけではないだろう。
そういうことであれば、内装に関してのデザインセンスにも期待できる。
「ん。専門は料理だけど、基本的にデザイン全般は好き。学校の授業で料理以外のデザインもやったことがある」
どうやら俺の予想は当たっていたらしい。
フルールはフンスと鼻息を吐き、胸の前で拳を握る。
「なるほど。フルールに考えてもらうのもありだな」
「ん。ぜひ任せてほしい」
「おお、頼もしいな」
フルールも乗り気なようで、珍しく表情がやる気に満ちている。
そんなわけで、内装のデザインは彼女に任せることになった。
俺が希望したコンセプトは、懐かしさとお洒落さの融合。
前店の和やかな雰囲気を残しつつ、外観にふさわしいシックなテイストも取り入れる方向だ。
「ということで、ツキネ。フルールと協力して内装作りを進めてもらえるか?」
「キュウ? キュキュッ!」
「ああ、もちろん。油揚げなら後でたくさん作るよ」
「キュキュウッ♪」
ツキネは尻尾を振りながら高い声で鳴く。
そのままフルールの足元へ走ると、彼女の肩にピョンと飛び乗った。
「キュ!」
「ん。よろしく、ツキネ」
ツキネの頭を撫でながら、頬を緩ませるフルール。
普段は表情がわかりづらい彼女も、ツキネと触れ合える機会を嬉しく感じているようだ。
「フルール、内装のデザインは任せた。デザインのイメージが固まったら、ツキネが読み取ってくれるから」
「ん。わかった」
そうしてさっそく、新店舗の内装作りが始まる。
とはいえ、俺とビアは特にやることはなく、フルールとツキネの作業を傍らで眺めているだけだ。
一応、俺の店なので監修役として意見出しはさせてもらうが。
ビアにも従業員の一人として、気になるところがあればぜひ意見するように言ってある。
「――へえ。【デザイン】のスキルって料理以外にも使えるんだな」
「すごく便利だね」
フルールとツキネの作業を見ながら、俺達はそんな声を漏らす。
フルールのイメージを読み取ったツキネが次々とテーブルを生み出しているのだが、それを見たフルールがスキル【デザイン】を使って追加装飾を施しているのだ。
「てっきり、料理特化のスキルなのかと思ってたよ」
「ん、一般的にはそう。私の場合は少し特殊」
「へえ。どう特殊なんだ?」
俺が尋ねると、フルールは作業をこなしながら器用に答えてくれる。
どうやら、家具類を装飾するには、料理の装飾より多くの魔力が必要らしい。
通常の装飾人だとすぐに魔力が切れてしまい、とても装飾できたものではない。
実際、木材等の加工についてはそれに適した技術系のスキルがあるため、装飾人の仕事というよりは魔道具職人の領分なのだそうだ。
「私の魔力もそんなに多いわけじゃないけど、スキルの操作には自信がある。効率的にスキルを使えばなんとかいける」
「なるほど……すごいな」
無理を通せるその技術力に驚きながら、猛スピードで進む家具類の設置を眺める。
フルールのイメージ固めが的確で速いため、ツキネが家具を生み出すペースも速い。
「ツキネちゃんもフルールもすごいね……いい感じすぎてほとんど意見することがないや」
「はは……たしかに。おかげですぐに終わりそうだけど」
最初はたまに口を出していた俺とビアだったが、途中からはただの見守り役と化している。
序盤に出した意見も汲み取って作業を進めてくれているので、もはや意見の出しどころがない状態だ。
その後も着々と作業は進み、空が赤らむ頃にはほぼ全ての内装が完成していたのだった。
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