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ポーション監修編

第124話 思わぬ金額

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短めの話となります。
すみません。
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 ディーニャの薬屋を訪れてから二日後。

「店長! これ、商人ギルドの人が」

 午後休憩の際、カフィから一通の手紙を受け取った。

 列整理で外に出た際、ちょうど訪ねて来たギルド職員に渡されたものらしい。

手紙を開くと、『ライセンス料の件』と冒頭にある。

「ふむふむ……」

 少し前に契約したドリンクバー装置のライセンス収入が発生しているため、暇がある時に取りに来てほしいという内容だ。

 ポーションの件と限定メニューの調整は順調に進んでいるので、その日の営業終わりにギルドを訪ねることにした。

「――すみません、ライセンス料の件で来たのですが」

 夕方。

 ツキネを肩に乗せて商人ギルドを訪ねた俺は、そう言って受付で件の手紙を渡す。

「少々お待ちください」

 手紙を読んだ職員が去り、すぐに担当の職員がやって来た。

「メグル様。お越しいただきありがとうございます」
「いえいえ。ライセンス収入が発生したんですよね?」
「ええ。こちらになります。どうぞご確認ください」

 職員はそう言うと、ジャラジャラと鳴る布袋をカウンターに置く。

「……え? 多くないですか!?」

 俺は袋の口を開けて中身を見るが、それらは全て金貨だった。

 金貨一枚で一万パストなので、少なくとも数十万パストは入っている。

 ライセンス契約の細かい部分は覚えていないが、貰える金額はギルドが得た売上の10パーセントだったはずだ。

 それを俺とディッシュさんで3:7に分けるため、俺の取り分は3パーセント。

 契約を結んでからまだ二週間余りしか経っていないことを考えると、袋内の金額が多すぎる。

 何かの間違いなのではと思ったのだが、職員は「それで合っています」と言う。

「ドリンクバー装置の独自性はかなり注目を集めておりまして、さっそく有名な商会から大口の注文が入ったのです」
「なるほど。どうりで」
「ええ。ウチが提携している複数の工房に依頼して、取り急ぎ二十台納品しました。卸値は一台で180万パストなので、二十台で3600万パスト。その3パーセントにあたる108万パストが袋に入っています」
「108万……」
「本当は、もうしばらく待ってある程度の額になったら手紙を出そうと思っていたのですが……」

 職員はそう言って苦笑する。

 それから詳しく話を聞いたところ、他の商会でもちらほら興味を示しているところがあり、どっと注文が入りそうな状況らしい。

 また、どうやら貴族の方々にもドリンクバー装置の噂が伝わったようで、既に十件以上の問い合わせが来ているそうだ。

 中には影響力の大きい侯爵家の方もいるので、今後貴族界でもドリンクバー装置が流行るかもしれないとのこと。

 現在、貴族の方を対象にした豪華版の装置を考えている最中らしい。

「なんというか、思った以上に人気ですね……」
「奇抜なアイディア商品というだけではなく、実用性もかなりのものですからね。エンタメ性を意識した店やドリンクの種類が多い店から需要もあるかと思います」

 職員は嬉しそうに言うが、俺としては少し面食らっている。

 正直なところ、軽い副収入程度に考えていたのだ。

 もちろん、資金が増えるのはいいことなので、嬉しい誤算としてありがたく頂戴するけれど……

 その後、この先のライセンス収入は口座に振り込んでもらうよう手続きし、一月毎に振り込み額を手紙で通知してもらうことにした。

「帰るか」
「キュ……」

 退屈さから眠りかけていたツキネを腕に抱き、商人ギルドをあとにする。

 こうして向こう一年間、想定を遥かに超える副収入を得ることになるのだった。


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