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ポーション監修編
第119話 訪問者
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そのさらに一週間後、夜の自室にて。
新しいパスタメニュー二品の好評を受け、俺は次なるメニューを考えていた。
「そろそろ、インパクトがデカいメニューを追加したいよなぁ」
パスタ二品といった派生系メニューではない、初お披露目の料理。
「候補はいくらでもあるけど……」
ぱっと思いつく料理として、まずは『ラーメン』がある。
前世で俺が食べ歩きを始めるきっかけとなった料理であり、オリジナリティも十分だ。
フルールに初めて作った時も合格点を貰ったし、味についても自信はあるんだけど……
「ラーメンはなぁ」
あくまでも俺の感覚だが、『グルメの家』のメインメニューにラーメンが混ざるのは不思議な感じがする。
前世でのラーメン屋のイメージが強いからだろうか。
既にいろいろなジャンルのものが混ざっているし、店のコンセプト的に問題があるわけでもないが、勢いでメニューに入れるのはなんとなく避けたい。
余裕があればラーメン屋スタイルの店をやってみたいが、あまり現実的じゃないし。
あとは……たとえば、週一限定でラーメンの日にしてみるとかはどうだろう?
いわゆる〝二毛作ビジネス〟というやつだ。
曜日や時間帯によって違う料理を出すスタイル。
よく行っていたラーメン屋でも、曜日限定で普段と違うラーメンを出すところがあった。
「いや、それなら……」
何も、丸々一日を使って行う必要もなさそうだ。
週に一度や二度、通常の営業を終えた後に特別営業をやればいい。
以前の俺なら魔力不足で不可能だったが、今はそれをやれるだけの余裕ができている。
「あるいは……」
そこまで大々的にやらずとも、その日限定の特別メニューとして出す形でも構わない。
ジェラートの日替わりフレーバーならぬ、日替わり料理といったイメージだ。
魔力的に余裕ができた今、新しいメニューを積極的に追加したいが、膨大なリストの中から一部を選定するのも大変なのだ。
店に出せるクオリティに仕上げた料理をどんどん限定で出していき、お客さんの反応からメニューに加えるかを決めればいい。
ラーメンもまずは限定の形で出してみて、その後のことは改めて皆と相談すればいいだろう。
「上手くいけば夜限定のラーメン屋も開けそうだし……」
「……キュ?」
頭の中で夢を広げていると、隣で寝ていたツキネが目を覚ました。
「キュウ?」
「いや、ラーメン屋をやるのも面白そうだと思ってさ。まだ構想の段階だけど」
「キュウ! キュキュ!」
「はは、油揚げ屋か。面白いけど、なかなか上級者向けだな」
「キュウ!!」
そんなことはない! と油揚げの良さを熱弁しはじめるツキネ。
冗談として流したのが悪かったのか、油揚げ魂に火を付けてしまったらしい。
膝の上に飛び乗ってきたツキネを撫でながら、熱のこもったプレゼンに耳を傾ける。
それからおよそ三十分。
『週一の限定油揚げ料理をツキネに作る』という俺の提案で、怒涛のプレゼンは終結した。
◆ ◆ ◆ ◆
翌々日の営業終わり。
俺は寮の簡易キッチンを使い、味覚の調整を行っていた。
数時間前の午後休憩で皆と話し合った結果、日毎の限定メニューの採用が決定。
スキルの【作成済みリスト】を開いて目に付いた料理を調整し、限定メニューとして提供する。
基本的には日毎に異なる料理を出すが、必ずしも日替わりというわけではない。
気軽に新メニューを試すための枠なので、厳格なルールは設けず、出せそうな料理があれば出す形だ。
日替わりメニューというよりは、シェフの気まぐれメニューといった感じか。
とりあえず今週はいくつかの料理を調整しておき、来週かその次の週から導入しようと考えている。
「そうだな……トンカツとかどうだろう? ソースの味がウケそうだし」
よく考えてみたら、店内のメニューにはまだ揚げ物がない。
テイクアウトにはカレーパンがあるが、こちらも揚げ物の一品料理とカウントするかは微妙なところだ。
トンカツソース系統の味はこの世界にないとビア達から聞いているし、前世で海外で人気だと聞いたことがある。
そう思いながら、【作成済みリスト】からトンカツを選択していると、「師匠!」という声が聞こえ、クービスがキッチンにやってきた。
「師匠、お邪魔してすみません。今少し大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど、どうした?」
クービスは店じまいの後一人店に残り、料理研究をしていたはずだ。
時間的にまだ始めたばかりだと思うのだが、何かあったのだろうか?
首を傾げて尋ねる俺に、「人が来てまして」とクービスは言う。
なんでも、扉に付けた鐘の音が聞こえて厨房の外に出てみたら、入り口のところに人が立っていたらしい。
「お客さんかと思ったのですが、どうも師匠に話があるようで。この店のシェフと話がしたいと」
「俺に話?」
「はい。それとその訪問者ですが、以前店に来てくれたお客さんだと思います。テイクアウト窓口で見たような気がするので」
「ふーん、何の用だろうな」
聞いた感じ、常連客でもなさそうだし、俺に話があるというのもよく分からない。
とりあえず、隅で寝ていたツキネを起こし、護衛として来てもらうことに。
「悪いな」
「キュキュ!」
大丈夫! と前脚を上げるツキネを肩に乗せ、クービスと共に店に向かう。
「お客さんにはとりあえず、奥のテーブル席に座ってもらっています」
「わかった、ありがとう。クービスはそのまま厨房に行くか?」
「いえ、まだ料理は始めていなかったので、邪魔にならないよう寮にいます」
「了解。料理をするなら簡易キッチンを使ってくれ」
店の前でクービスと別れ、ツキネと店内に入ると、俺を見たお客さん――高校生くらいの女子が、勢いよく席を立った。
勢いのあまり椅子が倒れ、ガタンと大きな音を鳴らす。
「あ、すみませんッス!」
慌てた様子で椅子を元に戻し、ビシッと背筋を伸ばした彼女は、緊張からか少し震える声で言った。
「――は、初めまして! 自分、薬師のディーニャという者ッス!」
----------------------------------------------
ふぅ……なんとか年越し前に更新できました。
(これを読んでいる時には、すでに年を越しているかもしれませんが……)
ここ最近は更新のペースが落ち気味で、ご不便をおかけしております。。
4章は全体的に微速更新となっておりますが、来年も少しずつ更新していければと思う所存です。
読者の皆さまに楽しんでいただけるよう精進してまいりますので、来年も何卒本作をよろしくお願いいたします。
新しいパスタメニュー二品の好評を受け、俺は次なるメニューを考えていた。
「そろそろ、インパクトがデカいメニューを追加したいよなぁ」
パスタ二品といった派生系メニューではない、初お披露目の料理。
「候補はいくらでもあるけど……」
ぱっと思いつく料理として、まずは『ラーメン』がある。
前世で俺が食べ歩きを始めるきっかけとなった料理であり、オリジナリティも十分だ。
フルールに初めて作った時も合格点を貰ったし、味についても自信はあるんだけど……
「ラーメンはなぁ」
あくまでも俺の感覚だが、『グルメの家』のメインメニューにラーメンが混ざるのは不思議な感じがする。
前世でのラーメン屋のイメージが強いからだろうか。
既にいろいろなジャンルのものが混ざっているし、店のコンセプト的に問題があるわけでもないが、勢いでメニューに入れるのはなんとなく避けたい。
余裕があればラーメン屋スタイルの店をやってみたいが、あまり現実的じゃないし。
あとは……たとえば、週一限定でラーメンの日にしてみるとかはどうだろう?
いわゆる〝二毛作ビジネス〟というやつだ。
曜日や時間帯によって違う料理を出すスタイル。
よく行っていたラーメン屋でも、曜日限定で普段と違うラーメンを出すところがあった。
「いや、それなら……」
何も、丸々一日を使って行う必要もなさそうだ。
週に一度や二度、通常の営業を終えた後に特別営業をやればいい。
以前の俺なら魔力不足で不可能だったが、今はそれをやれるだけの余裕ができている。
「あるいは……」
そこまで大々的にやらずとも、その日限定の特別メニューとして出す形でも構わない。
ジェラートの日替わりフレーバーならぬ、日替わり料理といったイメージだ。
魔力的に余裕ができた今、新しいメニューを積極的に追加したいが、膨大なリストの中から一部を選定するのも大変なのだ。
店に出せるクオリティに仕上げた料理をどんどん限定で出していき、お客さんの反応からメニューに加えるかを決めればいい。
ラーメンもまずは限定の形で出してみて、その後のことは改めて皆と相談すればいいだろう。
「上手くいけば夜限定のラーメン屋も開けそうだし……」
「……キュ?」
頭の中で夢を広げていると、隣で寝ていたツキネが目を覚ました。
「キュウ?」
「いや、ラーメン屋をやるのも面白そうだと思ってさ。まだ構想の段階だけど」
「キュウ! キュキュ!」
「はは、油揚げ屋か。面白いけど、なかなか上級者向けだな」
「キュウ!!」
そんなことはない! と油揚げの良さを熱弁しはじめるツキネ。
冗談として流したのが悪かったのか、油揚げ魂に火を付けてしまったらしい。
膝の上に飛び乗ってきたツキネを撫でながら、熱のこもったプレゼンに耳を傾ける。
それからおよそ三十分。
『週一の限定油揚げ料理をツキネに作る』という俺の提案で、怒涛のプレゼンは終結した。
◆ ◆ ◆ ◆
翌々日の営業終わり。
俺は寮の簡易キッチンを使い、味覚の調整を行っていた。
数時間前の午後休憩で皆と話し合った結果、日毎の限定メニューの採用が決定。
スキルの【作成済みリスト】を開いて目に付いた料理を調整し、限定メニューとして提供する。
基本的には日毎に異なる料理を出すが、必ずしも日替わりというわけではない。
気軽に新メニューを試すための枠なので、厳格なルールは設けず、出せそうな料理があれば出す形だ。
日替わりメニューというよりは、シェフの気まぐれメニューといった感じか。
とりあえず今週はいくつかの料理を調整しておき、来週かその次の週から導入しようと考えている。
「そうだな……トンカツとかどうだろう? ソースの味がウケそうだし」
よく考えてみたら、店内のメニューにはまだ揚げ物がない。
テイクアウトにはカレーパンがあるが、こちらも揚げ物の一品料理とカウントするかは微妙なところだ。
トンカツソース系統の味はこの世界にないとビア達から聞いているし、前世で海外で人気だと聞いたことがある。
そう思いながら、【作成済みリスト】からトンカツを選択していると、「師匠!」という声が聞こえ、クービスがキッチンにやってきた。
「師匠、お邪魔してすみません。今少し大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど、どうした?」
クービスは店じまいの後一人店に残り、料理研究をしていたはずだ。
時間的にまだ始めたばかりだと思うのだが、何かあったのだろうか?
首を傾げて尋ねる俺に、「人が来てまして」とクービスは言う。
なんでも、扉に付けた鐘の音が聞こえて厨房の外に出てみたら、入り口のところに人が立っていたらしい。
「お客さんかと思ったのですが、どうも師匠に話があるようで。この店のシェフと話がしたいと」
「俺に話?」
「はい。それとその訪問者ですが、以前店に来てくれたお客さんだと思います。テイクアウト窓口で見たような気がするので」
「ふーん、何の用だろうな」
聞いた感じ、常連客でもなさそうだし、俺に話があるというのもよく分からない。
とりあえず、隅で寝ていたツキネを起こし、護衛として来てもらうことに。
「悪いな」
「キュキュ!」
大丈夫! と前脚を上げるツキネを肩に乗せ、クービスと共に店に向かう。
「お客さんにはとりあえず、奥のテーブル席に座ってもらっています」
「わかった、ありがとう。クービスはそのまま厨房に行くか?」
「いえ、まだ料理は始めていなかったので、邪魔にならないよう寮にいます」
「了解。料理をするなら簡易キッチンを使ってくれ」
店の前でクービスと別れ、ツキネと店内に入ると、俺を見たお客さん――高校生くらいの女子が、勢いよく席を立った。
勢いのあまり椅子が倒れ、ガタンと大きな音を鳴らす。
「あ、すみませんッス!」
慌てた様子で椅子を元に戻し、ビシッと背筋を伸ばした彼女は、緊張からか少し震える声で言った。
「――は、初めまして! 自分、薬師のディーニャという者ッス!」
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ふぅ……なんとか年越し前に更新できました。
(これを読んでいる時には、すでに年を越しているかもしれませんが……)
ここ最近は更新のペースが落ち気味で、ご不便をおかけしております。。
4章は全体的に微速更新となっておりますが、来年も少しずつ更新していければと思う所存です。
読者の皆さまに楽しんでいただけるよう精進してまいりますので、来年も何卒本作をよろしくお願いいたします。
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