【味覚創造】は万能です~神様から貰ったチートスキルで異世界一の料理人を目指します~

秋ぶどう

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2巻

2-2

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「悪いな、俺の用事に付き合わせて」
「いいよいいよ。砂糖の売上は店の資金になるし、ボクも店の一員として無関係じゃないしね」

 ギルドを出た俺達は、魔道具屋の方向に歩いていく。
 現状ツキネ任せになっている食器洗い、その魔道具を確認するためだ。

「……そういえば、砂糖ってこの世界では珍しいんだよな? どんな時に使うんだっけ?」

 魔道具屋までの道中、会話のネタとしてビアに尋ねてみる。
 恩人のグラノールさんやローストさん達との会話から、この世界で砂糖が稀少きしょうだというのは知っているが、それ以外のことはあまり知らない。

「うーん、デザートの原料として使われることもなくはないけど、かなりの高級品ってイメージだね。甘い味付けをしたい時は花のみつとか、サロの実を使うのが一般的だよ。メルの実もよく使うかな」

 ビアいわく、サロの実というのはくせのないシンプルな果実。そのまま食すには味気ないが、煮詰めることで砂糖代わりのシロップになるという。
 メルの実からも同様にシロップを作れるが、サロの実のものより風味が強く、扱いに少し工夫がいるらしい。

「へえ、なるほどな」

 これまでにも何度か感じたことだが、この世界には『○○の実』というものが多い。
 大きめの木の実から草むらにる小さな実まで、多種多様な実が料理の味付けに使われている。
 地球で言うところの、調味料ポジションといったところだろうか。
 普通の調味料らしきものを置く店も見たことはあるが、それらの店でも圧倒的に『○○の実』が充実していた。

「やっぱり実で味付けするのが主流なんだな。実の加工品というか、調味料とかはそんなに置いてないだろ?」
「そうだね」

 ビアはそう言って頷いたが、「でも」と言葉を続ける。

「王都なら調味料もそこそこ売ってるよ。たしか、一区のどこかだったっけな……調味料をたくさん置いてる巨大専門店があったはず」
「そんなのがあるのか。どんな店なんだ?」

〝巨大専門店〟というワードに興味をかれ、詳しく尋ねてみる。

「えーと、たしかね――」

 ビアは「あくまでボクの記憶だけど」と前置きしつつ、説明してくれた。
 料理人ギルドが運営している大店おおだなで、王国各地や他国から仕入れた各種調味料を取り揃えているらしい。調味料だけでなく実のたぐいも扱っているそうだが、一般的な店に比べると調味料の割合が多いとのこと。

「気になるなら、魔道具屋の前に寄ってみる? 同じ一区だし、そんなに離れてないはずだよ」

 ビアはそう言って立ち止まった。
 魔道具屋とは違う方向にあるらしい。

「そうだな、できれば寄ってみたい」

 単純に大店を見たい気持ちもあるが、この世界の調味料について学ぶいい機会にもなる。
 そんなわけで進路を変更し、調味料屋を見に行くことに。
 ビアも正確な場所は把握していないようで、多少の遠回りもあったが、十五分ほどで無事に到着した。

「かなりデカいな……」

 王都でも最大規模だという専門店は、ちょっとしたスーパーくらいの大きさがある。
 看板の横には料理人ギルドのシンボルマーク――コックぼうが描かれており、言われた通りギルドが運営しているようだった。

「おお、においが……」
「独特だよね」

 店内に入ると、様々なスパイスの香りがする。そこら中に並べられたカラフルなびんが、まるで異世界に迷いこんだような不思議な雰囲気をかもし出している。

「まあ、ここ異世界なんだけど……」

 くだらない冗談じょうだんをぼそりと呟く俺。

「キュウ?」

 カラフルな瓶が気になるのか、ツキネも肩の上で興味津々きょうみしんしんな様子だ。

「たしかに調味料の割合が多いな……」

 店内を進みながらぱっと見た感じ、実と調味料の扱いは半々といったところ。
 実の使用率が高いこの世界の事情を考えると、相当に多い割合だ。
 それぞれの実を加工した調味料はもちろんのこと、オリジナル配合のミックススパイス等も置かれている。
 商品数がとにかく多く、俺の知らない調味料ばかりのため、棚の様子を見ているだけでも楽しい。

「これはペッパー系の調味料かな?」

 黒っぽいつぶ状の物が詰められた瓶を手に取り、ビアに尋ねる。

「たぶんそうだと思うけど、詳しくないから断言はできないかな……あ、でもブルの実を加工したものってあるから、辛い系なのは間違いないよ」
「なるほど、ブルの実? は辛いのか」
「うん。森でれる一般的な実なんだけど、そのままじゃとても食べられないくらい辛いんだ。刻んだものを少量料理に使ったり、こうして加工したりすることがほとんどだね」
「へぇ、面白いな」

 そうしてビアに尋ねながら、様々な調味料をチェックしていく。
 途中で見つけた店員にも質問し、店内の物色を楽しんでいると、予定していた以上に長居してしまう。
 なんだかんだで外に出たのは、入店から数十分後のことだった。


「調味料って高いんだね……ちゃんと見たことなかったよ」
「そうだな……想像以上でびっくりした」

 疲れたように言うビアに、俺は同意する。
 俺達が次に目指すのは、元々行く予定だった魔道具屋。一区の中でもエリア的には近いため、徒歩で十分弱とのことだ。
 俺達はのんびりと歩きながら、先ほどの店の話をしていた。
 味付けに実を使うのが主流のこの世界において、調味料というのは全体的に値段が高い。
 もちろん、中には塩等の安価な調味料もあるのだが、高級品はたった一瓶で数万パストを超えてくる。
 一パストはだいたい一円くらいの価格なので、それを思えばかなりの金額だ。
 また、かねてより稀少と聞いていた砂糖もその例にれず、普段使いは到底できないような高値の札がられていた。
 高値が付けられる調味料の多くは、一部の地域でしか採れない実が原料だったり、加工の難度が非常に高かったりするものなのだという。
 加工も単に粉末状にすれば良いわけではなく、魔力的な操作や絶妙な火入れが必要らしい。
 それ専門のスキルを持つ職人もいて、名のある職人が加工したものは風味に優れ値段も上がると店員が言っていた。
 俺がギルドに売っている砂糖も、それに近い捉え方をされているのだろう。

「調味料専門の職人がいるっていうのは興味深かったな。いろいろなスキルがあるんだなって」
「料理関連のスキルだけでも、数え切れないほどあるからね。特に一流と呼ばれてる人達は、大体が何かしらの調理スキルを持ってるって言うし」
「へえ、そうなのか?」
「スキルを公開する人なんてほぼいないから、本当のところはわからないけど、そうだって言われてるよ。有名なトップシェフ達が作る料理は、通常の調理だけでは説明がつかない美味しさだからって」
「なるほど、面白いな」

 いわゆるファンタジー系の物語では、冒険者のほとんどが何かしらのスキルを有し、それを戦闘や生産に生かしている。
 この王国の料理においても、それと似た状況があるのだろう。
 そんな風に考えながら歩くうちに、目的の魔道具屋に到着した。

「調味料屋もデカかったけど、こっちはさらにデカいな……」
「こっちも有名な大店だからね」

 調理器具関係を扱う店としては王都随一ずいいちの魔道具屋とのことで、その規模は驚くほどに大きい。
 広い店内には大小様々な調理魔道具が陳列されており、異世界風のホームセンターといったおもむきがある。
 見に来たのは洗浄の魔道具だが、他の魔道具にも俄然がぜん興味がいた。

「ゆっくり見て回ってもいい?」
「もちろん! ボクもちょっと興味あるしね」

 そう言って笑うビアと共に、さっそく店内を見て回る。
 どれも異世界の魔道具というだけあり、俺の知るキッチン用具とは形状の違うものが多い。

「ん? これは何の器具だろう?」

 俺は入り口から少し進んだところに並ぶ、金属製の魔道具を手に取る。
 球状の本体部分から短いつつが伸びた器具で、取り外し可能な土台には複数のボタンが付いている。
 ぱっと見はメタリックでいびつなフラスコだが、球体部分は開閉可能で中に何かを入れられるみたいだ。
 ギルドの厨房かキッチンスタジオで似たような器具を見た気がするが……使い方の想像がつかない。


「たぶん、実をしぼる魔道具なんじゃないかな?」
「ああ、そういうことか」

 球状の本体は実を入れる部分で、筒状のパーツは液体を出す部分。
 魔石を動力にした搾り器――つまりジューサーのようなものだと思えば、たしかにそのように見えてくる。
 店員が来たので一応尋ねてみると、その用途で合っているとのことだった。

「この辺りに置いてある商品は、全て搾り器となっております」
「へぇ、そうなんですか?」

 球状の器具以外にも、角ばった形のもの、特大サイズのボックス等があるが、全て搾り器なのだという。
 俺が手に取った商品は最もベーシックなタイプらしく、値段も五千パストと一番安い。
 使用の度に内部洗浄される便利な搾り器もあるそうで、それらは安いものでも三万パストはする。
 最新鋭の商品に至っては数十万パストするものもあり、搾り器といってもピンキリだ。
 地球の家電等も性能によって大きく値段が異なるが、魔道具も全く同じである。

「では、他の商品もご案内しますね」

 それから俺達は、親切な店員の案内でいろいろな商品を見ていく。
 ちなみにツキネはきたのか眠そうにしていたので、リュックの中で休憩させている。

「――これは冷蔵庫か何かですか?」
「いえ、それは実を保存するための魔道具です」

 店内の中ほどにあったミニ冷蔵庫のような魔道具。
 店員はその扉を開けながら、奥に取り付けられた装置を指す。

「魔石の魔力をこの装置で変換するんです。そのままだとしぶくて食べられないガエンの実等、一部の実を美味しく変化させる効果があります」

 以前、魔力を流すと味が変わる実があると聞いたが、そうした実のための魔道具のようだ。まさにこの世界ならではといった商品で面白い。

「へぇ、便利な機能ですね」
「もちろん、自分で実に魔力を流せる人ならいいんですが、魔力を上手く使えない人もいますからね。そういう人達がよく購入していきますね」
「なるほど」

 俺は頷きながら、特大サイズの魔道具を観察する。

「いろんな用途の魔道具があるんだな……」

 半数ほどの魔道具を見て感じたことだが、魔力が絡む分、地球よりも種類が多い。
 魔力で味が変わる実もそうだが、魔物の肉等も魔力にさらして味を良くしたり保存期間を延ばしたりするのだという。
 冷蔵庫にも魔力を流す部屋が付いているものがあり、本当に魔力が身近なのだと感じた。

「ふーん、こんな器具もあるんだね」

 また、ビアも知らない魔道具が多かったようで、驚いている場面も多かった。酒や食材については詳しい彼女も、調理器具は専門外らしい。
 二人で「ふむふむ」と頷きながら案内してもらうこと二、三十分、ようやく目的のコーナーに到着する。

「この辺りが洗浄の魔道具になります」
「これまたいっぱいありますね……」

 目の前に並ぶたくさんの魔道具を見ながら俺は言う。
 形状もサイズも値段もバラバラのそれらは、ぱっと見でも数十種類はありそうだった。

「何かおすすめはありますか?」
「そうですね……洗浄能力の高さなら、この辺りのものがおすすめかと」

 店員が指先で示したのは、地球の食洗機と近い見た目の洗浄機。横長のボックス型で、最大辺は一メートルを超えている。

「大きいのでまとめて洗えますし、多くのレストランが実際に使用している定番タイプです」
「そうなんですね」

 そう言って値段を見てみると、大体二十五から四十万パスト。
 地球の家庭用タイプと比べるとかなり高額に感じてしまうが、魔法洗浄の性能を考えると、妥当だとうな値段なのかもしれない。

「うーん……」

 低くうなりながら、定番タイプの洗浄機をチェックしていく俺。
 どれも悪い商品ではないのだが、いかんせんサイズが大きすぎた。
 比較的小さめのものでも、一メートルは横幅があり、両腕を広げても足りない商品がゴロゴロある。
『グルメの家』のキッチンサイズを考えた時、入らないということはなさそうだが、かなり圧迫されそうだ。

「小さめの洗浄機でおすすめのものはありますか?」
「小さめのものですか? そうなりますと……」

 あごに手をやった店員が頷き、ひと回り小さな魔道具を手に取る。

「値段は一気に上がりますが、一級魔道具職人が作った商品です。性能は抜群に良いですよ」
「一級魔道具職人?」

 聞き慣れない言葉が出たので尋ねると、「魔道具作りの最上級ライセンスのことです」と店員は言う。
 数多あまたいる魔道具職人の中で、上位一パーセント未満に入るすごい人達だとのこと。
 そんな一流の職人が作っているため洗浄力と頑丈がんじょうさに優れ、純粋なスペックだけなら最初の商品の三、四倍はあるらしい。

「ふむふむ……だけどその分値は張ると」

 一級品の魔道具なだけあり、値段は九十八万パスト。
 相当に高額な商品だが、自動メンテナンス機能付きのため、多少の傷なら勝手に修復されるという。

「結構するね……どうする?」
「そうだな……」

 悩むところではあるが、クオリティの高さと長持ちする点は魅力的だ。
『グルメの家』の資金的にも、手が届かない額というわけではない。
 しばらくビアと話し合った結果、思い切って買うことにした。

「購入の前に他の商品も見ていいですか?」
「ええ、ええ。もちろんですとも。引き続きご案内しましょう」

 高額商品が売れてホクホク顔の店員に案内され、他の魔道具も見せてもらう。
 こうして俺達の休日は緩やかに過ぎていった。




 第三話 新作デザート


 カランカラン――

「いらっしゃいませ!」

 食洗機を購入した翌日、営業時間もなかばに差し掛かった頃、快活なビアの声が聞こえてくる。

「いらっしゃいませー」

 食器類の洗浄も終わっていたので、俺も厨房から顔を出して挨拶あいさつする。

「あの人はたしか……」

 これまでに三、四回来店してくれている若い女性のお客さんだ。
 着実なリピーター増加を喜びながら待っていると、ビアが厨房にやってくる。

「はい、注文入ったよ!」
「了解」

 そう言って、注文のメモを受け取る俺。
 先週までは口頭で注文を聞いていたが、今日からメモを取る形式に変えた。
 昨日魔道具屋で洗浄の魔道具を買った後、メモ用の魔道具も購入したのだ。
 特殊なインクと紙を使った魔道具で、文字を消して何度でも再利用できる。

「ええと……」

 シーザーサラダ、コーンスープ、食後のデザートにフォンダンショコラとドリンクの紅茶。
 注文内容を確認した俺は【味覚創造】を発動し、手早くサラダとスープを作る。

「ビア、頼んだ」
「はーい!」

 それらをビアに運んでもらい、使用済みの皿を魔法洗浄機に入れていく。

「デザート類が頼まれるようになってきたなぁ……」

 先週の中頃あたりからだろうか、デザートの注文が徐々に増えつつある。
 開店初週はメインのついでに頼む人しかいなかったが、デザートのみを食べるお客さんも出はじめて、人気が高まっていることが窺える。
 特に女性客からの人気が高く、さっきの女性客も毎回頼んでいたはずだ。
 単純に甘いものが好きという人もいるだろうが、デザートといえばフルーツが基本の世界において、創作スイーツの物珍しさも人気に火を付けている様子。
 デザートについて説明した際、「珍しいね」と驚くお客さんが多数いるとビアが言っていた。
 中でもプリンとフォンダンショコラは衝撃的な味のようで、食べた直後に追加注文する人もしばしばいる。
 もう一つのデザート、バタークッキーも好評ではあるのだが、他の二品より珍しくはないからか、比較的注文数は少なめだ。
 とはいえ、バタークッキーもクオリティは遜色そんしょくなく、注文した人はリピートすることも多いので、少しずつ追いついていくだろう。

「――お客さん、サラダとスープ食べ終わったよ」
「おっ、了解。デザートは俺が運ぶよ」

 厨房に顔を出したビアにそう答え、もう一度スキルウィンドウを開く。皿とカップ、ミルクと砂糖の用意も含め、わずか数十秒で残りの二品が完成した。
 それらを配膳はいぜん用のプレートにせ、厨房の外に出る。

「お待たせしました。フォンダンショコラと紅茶です」
「ありがとう。サラダとスープも美味しかったわ」
「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです」

 軽く頭を下げた俺は、厨房に戻りがてら店内の様子をチェックする。
 先ほどの女性以外に二人のお客さんがいるが、どちらも笑顔で食事中だ。俺の料理に満足してくれているようで安心する。
 今はまだ開店から日が浅く様子見の段階であるため、時折こうしてお客さんの反応を確認するようにしていた。
 初来店客のコーンさん等、おしゃべり好きのリピーター客には直接感想を聞くこともある。

「――メグル、さっきの女性のお客さんなんだけど」

 それから十五分ほどが経過し、新たなお客さんの注文を用意していた時、空の皿を運んできたビアが声をかけてきた。

「他にデザートの種類はないの? だってさ」
「またかぁ……結構な頻度ひんどかれるよな」

 作り立てのサラダとパスタをビアに渡し、俺は「うーん」と腕組みする。
 オープンから数日間は特に何も言われなかったのだが、ここ数日で何件か同じ質問を受けているのだ。

「もう一品くらいなら作ってもいいとは思うけど……」

 デザートをメインに頼むお客さんからすれば、もう少し種類が欲しいという気持ちになるのもわかる。
 またデザート類は消費魔力がメイン料理より少なめなので、一品増やすだけなら支障にもなりにくい。
 しかし一品追加したとしても、三品が四品に変わるだけなのもたしか。
 一時的な効果はあるだろうが、結局すぐに別のデザートを求める人達が増えてしまう。

「うーん……」

 その後もいくつかの注文をこなしつつ、良いアイディアはないだろうかと考えること数十分。

「……っ! そうだ!」

 日替わりのデザートを出すのはどうだろう? ふとそんな考えが浮上する。
 固定の一品を増やすのではなく、日によって違うものを出すことで、常連の方にも飽きずに楽しんでもらえるのではないか、と。
 毎日違う種類のデザートを作るのはさすがに手間だが、同じ種類で日替わりのフレーバー――味だけを毎日変える形にするのであれば、悪いアイディアではないだろう。
 曜日ごとのフレーバーや季節限定のフレーバーというのは、日本の店でも人気だった。
 同じデザートの味を変えるだけなので魔力的負担も少ないし、今の俺でも十分対応できる。
 そう考えた俺は店じまいの後、ビアにも意見を聞いてみる。

「――日替わりのフレーバー? 何それ、すごく面白そう!!」
「あまり一般的じゃないのか?」
「そうだね。やってる店もあるかもだけど、ほとんどないんじゃないかな? 少なくともボクは聞いたことないよ」
「ふむふむ、なるほど」

 どうやらこの世界において、日替わりフレーバーは珍しいようだ。
 お客さんにも興味を持ってもらえそうだし、一度試してみる価値はある。

「ちょっと休憩してから試作してみるか」
「何を作るかは決まってるの?」
「いや、さっき思いついたばかりだからな。適当に試作してみるつもり。ビアとツキネには味見役として協力してほしいんだけど、付き合ってもらえる?」
「もちろん! 喜んで協力するよ!!」
「キュウ! キュキュウッ!!」

 ビアが笑顔でこぶしを握り、すみで丸まっていたツキネも〝味見〟の一言に反応した。
 完全新作のデザートということで、両者ともひとみが輝いている。

「休憩してからな」

 その様子に苦笑しながら、俺は二階の自室に向かう。
 ベッドで仰向けに寝転んだ後、どんな種類のデザートにするかさっそく思案を巡らせた。


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