【味覚創造】は万能です~神様から貰ったチートスキルで異世界一の料理人を目指します~

秋ぶどう

文字の大きさ
上 下
51 / 72
ポーション監修編

第114話 タンブラーとパン・オ・ショコラ

しおりを挟む
「――では、よろしくお願いします」

 ドリンクバーの擦り合わせを終え、ディッシュさんの工房を出た俺は、そのままの足で食器店へ向かう。いつも店で使っている食器類の購入先だ。

「相変わらず品揃えが良いなぁ」

 見渡す限り食器が並ぶ店内に感心しつつ、コップ類が置かれたコーナーへ進む。

 俺の目的は、飲み物の販売に欠かせない蓋付きタンブラー。

 近くにいた店員に声をかけ、希望条件を伝えると、ぴったりな商品を提案してくれた。

「おすすめはこちらの商品ですね。軽くて保温性にも優れた魔金属製の蓋付コップです。蓋もしっかり閉まるので持ち運びにも最適ですよ」
「なるほど。いい感じですね……!」

 実際に持ってみたところたしかに軽く、中身が零れる心配もなさそうだ。

 ポップには冷・温両方の保温に優れているようで、その点も非常にありがたい。

 そして何より、性能の割にリーズナブルなのがよかった。

 同シリーズの中でもいくつかの価格帯に分かれていたが、最も安価なタイプでも十な性能がある。

「値段もかなり安いですね」
「ええ、当店としましてもお買い得だと自負しております。伺うにお店で使うとのことですので、まとめてご購入いただければさらに値引きさせていただきますよ」
「おお! 本当ですか!?」

 このまま買ってもいいなと思っていたが、店員の値引き宣言で購入を決める。

「では、こちらのベーシックなタイプでお願いします」
「かしこまりました。ありがとうございます。いくつご購入されますか?」
「んー、そうですね……」

 マイタンブラーの持参も認めるつもりなので、どれくらいのお客さんがタンブラーを買うかはわからないが、日々のテイクアウト利用客数を見るに、百個程度ではすぐになくなる可能性が高い。

 後日の返却で返金するシステムにすれば多少は数を抑えられるが、それでも多めに買っておいたほうがいいいだろう。

「在庫はいくつほどありますか?」
「今だと大体1000個前後でしょうか。定期的に入荷があるので、来月にはまた増えているかと」
「なるほど、では――」

 他のお客さんが買う分として200個を残し、残りを全て買うことにする。

 相当な規模の大人買いだが、数十万パストの出費で済むし、魔法袋があるので在庫がかさむこともない。

「お買い上げ、誠にありがとうございます!!」

 レジで会計を済ませ、裏の倉庫から運ばれてきた箱入りの商品を魔法袋に詰めた俺は、ホクホク顔の店員に見送られながら食器店をあとにした。

 ◆ ◆ ◆ ◆

 その翌日。

 営業を終えて住居用の建物に戻った俺は、簡易キッチンを使ってパン・オ・ショコラの調整に取り掛かった。

 店にあるキッチンはクービスの料理修業場となっているので、最近はほとんどこちらのキッチンで調整等を行っている。

「――キュウ!」

 スキルウィンドウを開いて調整を進めていると、ツキネがキッチンに来て顔を擦りつけてきた。

「お、ツキネ。進捗のほうはどうだ?」

 ウィンドウを触る手を止めて俺は尋ねる。

 進捗というのは、昨日買ったタンブラーへのロゴ入れのことである。

 家に帰って皆にタンブラーを見せたところ、返却時にわかるよう店のロゴを入れようという話になったのだ。

 ロゴはフルールの案で『ツキネのシルエット』に決まり、ロゴ入れ作業は彼女とツキネが行うことに。

 フルールは【デザイン】、ツキネは不思議な神力でどんどん作業をこなすため、今朝の時点で全体の七割はロゴ入れが終わっていた。

「キュウ!! キュキュウ!」
「もう終わったのか! さすがツキネとフルールだな」
「キュウ!」
「はは、ありがとな」

 得意げなツキネに礼を言った俺は、【作成済みリスト】から油揚げを選択して皿に盛る。

「はい、作業のお礼」
「キュウ!!」
「フルールもまだリビングいるよな? パフェも作るから、持っていってもらえるか?」
「キュ!」

 続けてフルーツパフェを生成した俺は、「キュキュ♪」と鳴いて去るツキネに笑いながら、パン・オ・ショコラの調整を再開した。
 
「――よし、こんなもんかな」

 それからおよそ十分後、全体で十五分ほど調整した頃、いい塩梅のパン・オ・ショコラが出来上がった。

 元から大方の調整は済んでいたため、バターの風味やチョコの上品さ等、細かい部分を調整しただけだ。

 あとは夕食で皆に試食してもらい、問題なければ明日からメニューに追加できる。

「テイクアウトメニューも順調に充実していってるな」

 近いうちにドリンク類も追加できそうだし、お客さん達の反応が楽しみだ。

 スキルウィンドウを閉じた俺は、ぐっと体を伸ばして息を吐いた。
しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

神に愛された子

鈴木 カタル
ファンタジー
日本で善行を重ねた老人は、その生を終え、異世界のとある国王の孫・リーンオルゴットとして転生した。 家族に愛情を注がれて育った彼は、ある日、自分に『神に愛された子』という称号が付与されている事に気付く。一時はそれを忘れて過ごしていたものの、次第に自分の能力の異常性が明らかになる。 常人を遥かに凌ぐ魔力に、植物との会話……それらはやはり称号が原因だった! 平穏な日常を望むリーンオルゴットだったが、ある夜、伝説の聖獣に呼び出され人生が一変する――! 感想欄にネタバレ補正はしてません。閲覧は御自身で判断して下さいませ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。