――ではご両親だけでなく、お友達も村上さんの趣味を知らなかったんですか?
実は今でもそうなんですけど、地元のリアルな友達で私の趣味を知っているのは、幼馴染の女の子1人だけなんです。私が「ガンダムSEED」にハマったきっかけが、作中でのモビルスーツバトルだったんですけど、とにかくその迫力が圧倒的で、誰かにすごい! と言いたくて。幼馴染で気心が知れていた分、その子自身がオタク趣味の傾向があることもなんとなくわかっていたので言いやすかったんです。
――当時はその方が唯一、リアルでアニメの話ができるお友達だったんですね。
そうなんですけど、趣味は全然違うんですよ。女子で「ガンダムSEED」が好きなら、キャラクター同士の関係性にハマると思うんですけど、私はメカかっこいい〜! とガンプラを作り出す方向に行ってしまい(笑)。その子は先ほど言った王道のアプローチでシードが好きだったので、同じ作品の話をしているはずなのに、会話がドッジボールみたいになってしまうという……。そんな感じでお互いに程よく萌えを発散していたんですが、もの足りなくなると私は絵にぶつけていて。
――萌えのパワーでどんどん絵を描き上げていったんですね。シードから次はもちろん?
はい、ガンダム好きとして順調に成長しまして(笑)。その流れで「ガンダム00(ダブルオー)」(創通・サンライズ・毎日放送)の携帯用イラストサイトを立ち上げました。最初は本当にいろいろと手探りで、SAIで描いた絵をパソコンの画面に出して、携帯で撮影した画像をサイトにアップするような原始的な形でやっていましたね。女子が作るイラストサイトというとボーイズラブ系が多かった印象がありますが、私は特にそういうカテゴリーは作らず、キャラクターをまんべんなく描くような形で、へたしたらアニメ上では何も接点がない男女2人のキャラがカップルになっているような絵を描いてアップしたりしていました。
――携帯サイトを通じて、趣味を共有できるお友達が増えていった形でしょうか。
そうですね、同じ作品が好きでお互いのサイトを見ている方がイベント出展をする際、ブースにご挨拶に伺ったりして仲良くなっていきました。私がサイトでガチガチにカテゴリーを作らなかったのが良かったのか、純粋に話の合う友達ができていったので、いまだに仲の良い子も結構います。だけど今でもイベントで「携帯サイトの頃から見てました!」とお客さんに言われることがあってびっくりしますよ。噂には聞いたことがあったけど、やっぱりネットにアップしたら最後、絶対消されることはないんだなあ……って。
――驚くポイントはそこなんですね(笑)。当時からペンネームは変わらないんですか?
当時は苗字だけで「村上」というペンネームでした。
――本名ではないですよね? その由来を教えてください。
確か……遠い御先祖様が村上という苗字だったと親に聞いて、本名より読みやすいし書きやすいからこっちの方がいいかな、と。でも商業デビューする時に「待てよ、世の中に村上はたくさんいるから、このままではどの村上かわかってもらえない!」と気付いたんです。イラストレーターとしてデビューするからには、ちゃんと仕事として継続できるようにしたかったので、ネット検索でひっかかるような名前にしないとダメだと思って。
――確かに歴史上の人物にも芸能人にも、村上さんはたくさんいますしね。
あと、性別についてフラットな名前にしたかったということもありましたね。それで誰も付けてなさそうで、かつ性別がわからない「ゆいち」という名前を足しました。今はまったく性別を隠していないんですけど、なぜか巨漢で妙齢の男性と思われていることが多いです。
――(笑)。どうしてでしょうね?
Twitterのつぶやきが淡々としているのと、腰回りや胸、絶対領域をすごく丁寧に描いているかららしいです。でも私、女性ならではの肉感が好きなので、そのあたりの線を描くのがすごく楽しいんですよ! 『癒し手』2巻の表紙も、リィーンの絶対領域が描けてすごく嬉しかったんですけど、完成したコミックスを見たらなんと帯で隠れてしまっているという……。
――それは逆に、コミックスを買った方だけのお楽しみになるのでは?
なるほど!(笑)
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